がんを題材に夫婦の性生活の問題を針小棒大に扱うNHK「あさイチ」
◆視聴者が番組疑問視
NHKのあさイチは11月27日、「おんなざかりのがんと性」と題し、妻が婦人科系のがんを患っているなかで、夫婦の性関係はどうあるべきかという、「そんなテーマで番組が作れるの」と驚くような内容で報道していた。
医療の向上によって日本人は長生きとなった結果、3人に1人はがんで亡くなっているといわれる。
だからと言って、こうしたテーマが、夫婦間でそれほど大きな問題として横たわり、その解決法をNHKが提示してやらなければいけない状況にあるとは思えない。
NHKは、奔放な性の問題を扱うドラマや番組が増えてきている。それと連動するかのように、朝イチも、女の子の生理の問題など、性に関するいろいろな問題を取り上げることが多くなった。その分、視聴者から顰蹙(ひんしゅく)も買っている。
この日の番組に対しても、「がんで治療費のことを心配している人が多いのに、夫婦は皆セックスしていなければいけないかのようなあさイチの取り上げ方はおかしい」というファックスが寄せられていた。
それを有働由美子アナがガス抜きのように読み上げる一方、「今日のテーマを見て、メールせざるを得なかった」という30歳の女性のメールを紹介。「結婚1年目でがんになり女性器摘出手術をした」ということだ。
「もう性交することができません。誰にも相談することもできず、毎日泣いてばかりの生活です」というファックスを紹介し、番組を正当化していた。
筆者も、NHKが朝から取り上げるべきテーマだろうかという気がしたが、その中で、ゲストコメンテーターが、適切な回答や問題提起をしていたのが印象的だった。
番組ではまず、妻が病気の場合、夫は妻に夫婦関係を持ちたいという気持ちを言い出しにくく、その思いを口にしても、妻の方はなかなか応じる気になれない状況があることを、夜の寝室での2人の会話のシーンを挿入しながら紹介。
それがきっかけで、妻は夫を満足させてあげられないという自責の念に駆られ、「夫が自分と結婚していなかったら、こういう境遇には遭わなかっただろうに」と悩む一方、「誰にも相談できない」という思いが、よけい本人を苦しめていると紹介していた。
片や、夫の方は、夫婦間で性の満足を得られなくなったことから、不倫をするケースがあるということだった。妻が病気なのに、欲求不満のはけ口として浮気をするなど言語道断の話だ。NHKがそういう報道をすると、皆やっているかのように勘違いしかねない。それよりは、その状況を乗り越えたケースを紹介すべきではないか。
◆樹木希林が問題解決
これに対してスタジオゲストの女優、樹木希林さんは、妻が悩んでいることに対して、夫婦は「皆、縁があって出逢っているのである」と指摘。妻がそのことを気にして悩んだりする必要はないと述べていた。
また、これをきっかけに不倫をする夫は、妻が病気にならなくても不倫をする人ではなかったのか、とキッパリ。男性週刊誌のヌードグラビアも氾濫しすぎだと疑問視していた。まったく同感である。
希林さんは、60代半ばでがんを患った経験があり、ゲストとして呼ばれたようだが、このコメントで、この朝イチのテーマに対する回答が出ていたといえる。
番組で紹介された女性の病気は、結構、子宮頸(けい)がんが多かった。これは性行為によって感染するウイルスが原因で発症するがんだ。
今、その予防ワクチンの副反応被害で問題になっているがんでもある。番組は、子宮頸がんが、夫婦の性生活に深刻な悩みをもたらす病気だ、という印象を与えるのに成功していた。
このがんは、不特定多数との性交渉が原因という医師もおり、子宮頸がんになる原因を断つ方法を番組で論じた方が建設的である。
◆ワクチン接種支援?
子宮頸がんワクチン接種について、厚生労働省は積極的勧奨を中止しているが、12月にも積極的勧奨を再開するとの見方も流れている。
それを側面援助する番組ではないかと思うほど、問題を針小棒大に扱った番組になっていた。
(山本 彰)