GDP成長力の弱さに政府・企業に一段の努力を求めた保守系各紙
◆成長に無関心な毎日
23日から一般公開の始まった東京モーターショーが、盛況のようである。世界初公開が大幅に増え、特に日本メーカーは企業収益の回復もあって、各企業トップからは強気の発言も相次ぐ。裾野の広い自動車産業が元気なのは、日本経済にとっても悪くない話である。あとは実際に、販売が増え、収益が上がって、一段と設備投資が増加し、また雇用拡大・賃金アップにつながってほしいと切に願うばかりである。
それというのも、日本経済の成長力がこのところ徐々に弱くなっているからである。今月半ばに明らかになった7~9月期の国内総生産(GDP)は、実質で前期比0・5%増と、前々期(1~3月期)同1・1%増、前期(4~6月期)同0・9%増からさらに落ちて、成長率は低下傾向を辿っているのである。
この先、何もなければそれほど心配することもないのだが、周知の通り、来年4月には消費税が、現行の5%から8%へ増税される。それで、景気が腰折れしないかという懸念である。
7~9月期GDPについて論評を掲載したのは、読売、産経、日経、本紙の4紙で保守系の新聞だけだった。リベラル系の朝日、毎日、東京はGDPより、特定秘密保護法案の方に専ら関心が向いているようで、毎日などは今月だけで5、6、7、8、10、12、13、14、15、18、19、20、22、25、26、27日付で同法案の反対論を掲載する異常ぶりである。
◆歯切れ悪くなる日経
さて、GDPに話を戻すと、成長力の弱さに最も懸念を示したのは本紙(16日付)。
10月初めの安倍晋三首相による消費増税実施決断では遺憾の意を表明したが、今回は「これで増税に耐えられるのか」(見出し)と懸念の現実味を憂慮。輸出の低迷が減速の主因だが、個人消費は伸び悩み、設備投資も冴えないとして、「このままでは自律的成長の基盤が整わないうちに消費増税が行われることとなり、景気が腰折れしかねない」と懸念を深めた。
一方、これまで消費増税の実施を積極的に求め、消費増税がもたらす経済への悪影響にほとんど懸念を示さなかった日経(15日付)の見出しは、「民需主導の景気回復につなげる努力を」である。
それは、そう言わざるを得ないであろう。4四半期連続のプラス成長とはいえ、今回発表の7~9月期は、自律的成長に欠かせない民需が、個人消費はわずかに前期比0・1%増、設備投資も同0・2%増である。
同紙も「公共投資の寄与度が高く、政策の効果に多くを頼っているのは否めない」と認めざるを得ず、現状はとても消費増税を実施できるような状況ではない。「民需の回復力になお不安が残るのも確かだろう」と歯切れが悪いのも道理である。
同紙は、民需主導の景気回復を持続させ、成長の恩恵を企業から家計に波及させる必要があると強調。そのために、成長戦略の確実な実行や、そうした政策に呼応する企業の努力を訴えるが、果たして、増税実施までにそれらが奏功して、「個人消費や設備投資などの民間需要がけん引する景気回復の基盤を固め」(同紙)られるのか、そして、それが消費増税の反動減に耐えられるのかである。
◆産経も見通しに甘さ
今回の日経社説でも、同紙は無条件に「財政再建の一歩を踏み出す」と消費増税を形容した。逆のケース、すなわち、消費増税が意図した狙いとは反対に、現在の長期デフレを招き、財政をむしろ大幅に悪化させる契機となった1997年度の事例があるにもかかわらず、である。そして10月の安倍首相の消費増税実施決断でも大いに評価した。そうした同紙の見通しや姿勢に、甘さはなかったか。産経(15日付)も日経と同様である。
消費増税推進論を8月半ばから慎重論に変え、首相の増税決断1カ月前には「1年延期」を打ち出した読売(同付)の見出しは「経済成長の持続力を高めたい」である。
消費の失速や設備投資の回復の鈍さ、輸入品の値上がりと原発停止による電気料金の上昇など懸念も表明しているが、増税実施を決めた以上は、ともかくも「アベノミクス」を着実に前進させる他はない、という落胆を突き抜けた素直な応援メッセージという感じである。
(床井明男)