毎日が原子力規制委と避難住民の会合報道で呆れた“スクープ記事”

◆反原発のツケが回る

 「原子力規制委巡る記事でおわびします」。毎日17日付1面にこんなお詫び記事が載った。10日付朝刊「規制委員長 住民聴取拒む」の記事で、「避難住民の意見は反映されない見通しになった」とあるのは誤りだったという。社会面には「確認作業 不十分でした」との検証記事もある。

 呆れた話だ。問題の記事は1面トップを飾ったスクープ記事だった。それが誤りとは、毎日の原発報道にミソをつけた。以前から反原発姿勢が先行し、恣意(しい)的な記事が目立ったが、そのツケが回ってきたと思わざるを得ない。

 記事は、原発事故で避難した住民の帰還対策の提言案をまとめるために規制委の有識者会合が実施を決めた住民への聞き取り調査を、田中俊一委員長が「帰還などに責任を持って判断できる首長に話を聞くべきだ」として拒否、「避難住民の意見は反映されない見通しとなった」と記していた。

 おまけに識者に「委員長が会合の場でない“水面下”で口をはさみ、審議の過程で必要とされた調査をしないのは、委員長主導による帰還しか認めない結論ありきの会合で問題だ」と語らせ、痛烈に批判していた。

 それが嘘だった。毎日の検証記事によると、この記事に対して規制委から記事掲載の翌日(11日)に、①市民グループなど2団体に聞き取り調査が掲載前に行われ、原子力規制委の有識者会合で示された報告書案に盛り込まれている②田中委員長は「帰還などに責任を持って判断できる首長に話を聞くべきだ」という発言はしておらず、住民からの聴取を拒否していない――との2点の指摘があったとし、次のように弁明している。

 「私たちとしては関係者への取材時点で『拒否』があったと確信していますが、2団体には聞き取りが行われ、記事掲載時には、事実と異なってしまいました。また、委員長の発言引用にていねいさが足りませんでした」

 その上で「地元住民の声はしっかり反映されなければならないという問題意識にとらわれるあまり、確認作業が十分でなかったと考えています。談話の取材手法を含めて改めて基本を徹底し、今後も住民帰還問題を詳しく報道していきます」とし、末尾に「科学環境部長・吉川学」とある。

◆見苦しい弁解述べる

 それにしても1面に「おわびします」とあるのに、検証記事には「おわび」の「お」の字もないのは解せない。それどころか「取材時点で『拒否』があったと確信」していると、吉川部長は開き直っている。記事は報じた時点が問題で、取材時点を持ち出すのは言い訳にすぎない。

 それに「地元住民の声はしっかり反映されなければならないという問題意識にとらわれるあまり、確認作業が十分でなかった」と言うのも、見苦しい弁解だ。そうした問題意識があるなら、逆に確認作業を十分に行っていたはずだ。そうではなく、「規制委への批判にとらわれるあまり、確認作業を怠った」と素直に言うべきではないか。

 この問題で朝日23日付は、規制委は11日、毎日に対して報道の経緯について説明を求め、訂正記事が掲載されるまで、同紙記者が田中委員長の会見などに出席することを拒否したとしている。これを朝日は「規制委、会見参加拒む 毎日記者を誤報理由に」と報じ、「知る権利 制限も」との武田徹・恵泉女学園大教授のコメントも見出しに立てている。

 これではまるで規制委が悪者で、毎日が被害者のような扱いだ。規制委は嘘を、それも1面トップで流されたのだから、黙っている方がむしろおかしい。規制委が毅然たる態度で臨んだからこそ、17日付の「おわび記事」となったのではないのか。

◆秘密法持ち出す朝日

 朝日は特定秘密保護法案に引っ掛けたいのか、「知る権利」を掲げるが、当の武田教授は「(毎日は)おわびと検証記事を掲載する以上、もっと丁寧な説明が必要だ。規制委が聞き取りしたという2団体がどのようなグループで、どんな聞き取りをしたのかなど、事実の究明と新たな情報の提供がなければ検証の意味はない」と苦言を呈している。

 そのとおりだ。毎日は「事実の究明」よりも、反原発のプロパガンダに重きを置くから、失態を重ねるのだ。

(増 記代司)