弾道ミサイル実験に北朝鮮の「衛星」を擁護する沖縄タイムスコラム

◆中国さえ「ミサイル」

 「号外」が異例のハイペースだという。産経の話だが、同紙の号外(電子版)は今年すでに11枚。ロンドン五輪と衆院選のあった4年前が1年間で63枚だったと言うから、なるほどハイペースだ。長町望・整理部長は「何やら激動の1年になりそうな予感がする」と述べている(電子版7日「編集日誌」)。

 この日、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射し、同紙は号外を出した。それを受けての長町氏の感想だが、12日には「宇宙の『重力波』を初検出」の号外も。ネットで見ると大阪国際女子マラソンで「福士V 五輪代表へ」(1月31日)や「サッカー五輪切符」(同27日)「琴奨菊 優勝」(同24日)もあった。電子版の気安さからか、いささか乱発気味だ。過去との比較はちょっと無理と思うが。

 それはさておき、北朝鮮のミサイル発射は正真正銘の号外モノだろう。沖縄でも地元2紙がそろって「北朝鮮 ミサイル発射 12年以来 沖縄上空通過」(沖縄タイムス7日)との号外を出した。

 このミサイル発射を北朝鮮は地球観測衛星「光明星4号」と称しているが、事実上の長距離弾道ミサイルで、それを衛星だと信じるお人好しはまずいまい。中国は過去のミサイル発射では「衛星打ち上げ」とする北朝鮮の主張に配慮してきたが、さすがに今回は「国際社会の幅広い反対を顧みずに弾道ミサイル技術をもって発射したことは遺憾だ」(外務省談話)としている。

◆自ら号外帳消し論調

 そんな中、沖縄タイムス8日付の1面コラム「大弦小弦」には驚かされた。「こんな時だからこそ立ち止まって考えたい」と切り出し、次のように言うのだ。

 「政府が『ミサイル』と呼ぶ物の正体は何だろう。北朝鮮は『人工衛星用ロケット』と主張している▼2009年の発射直後は政府も『飛翔(ひしょう)体』という、分かりにくいが中立的な言葉を使っていた。その後なぜかミサイルに変わり、前回12年12月、そして今回の発射で人工衛星の地球周回が確認されても呼び方を変えない」

 それはそうだろう。「飛翔体」といった意味不明な表現は間違いで、まがうことなくミサイルだからだ。ところが、このコラムは自ら号外や同日付1面見出しでミサイル発射と報じながら、政府のミサイル表現にいちゃもんをつけているのだ。さらにコラムは続けてこう論じる。

 「先端に載せるのが弾頭か人工衛星かの違いで、技術的に共通点が多い。制止も聞かず、核実験を強行する国が打ち上げ技術を誇示するのは危険極まりない。その通りだが、衛星は衛星だ」

 衛星は衛星だ、とは恐れ入った言い草である。こんな反論は世界の中でも北朝鮮でしか聞かれまい。もしかして、筆者は北朝鮮の人? そんな疑問まで抱かせる。おまけにコラムは続けて、宮古島市と石垣市への迎撃ミサイルPAC3配備に疑問を呈するから、ますます怪しげだ。

 が、末尾に「阿部岳」との署名があったので合点が行った。この御仁は同紙の辺野古反対キャンペーンにしばしば登場する「反基地記者」だからだ。どうやら単なる反基地ではなく、筋金入りの北朝鮮シンパだったようだ。

◆「オール沖縄」で訪朝

 かつて同じようなことを言った人がいた。沖縄大学元学長の佐久川政一氏で、金日成を礼賛するチュチェ思想研究会全国連絡会の会長も務める。2009年のミサイル発射で、「アメリカや日本は(人工衛星を)ミサイルと決めつけ、反朝鮮キャンペーンをあおっています。こういう状況の中でチュチェ思想を広め、日朝友好を進めるものです」と述べている(「キムイルソン主義研究」129号)。

 2000年には大田昌秀元知事(革新系)が率いる125人の大訪朝団がチャーター便で平壌に行き、日朝友好を唱えた。当時、まるで北への朝貢使節団と揶揄された。参加したのは現在の「オール沖縄」を称する革新系団体やメディアで、むろん沖縄タイムスも加わっていた。

 ことほどさように北朝鮮シンパが沖縄には多い。1面コラムと言えば、「天声人語」(朝日)や「編集手帳」(読売)、「産経抄」など各紙の看板だが、「大弦小弦」は堂々たる北朝鮮擁護の看板だ。こんな弦を引いているのだから、沖縄タイムスの正体見えたり、だ。

(増 記代司)