シリーズ化する朝日、毎日、東京など秘密保護法反対社説に疑問あり

◆反対一辺倒で何度も

 特定秘密保護法案の審議が大詰めを迎え、与党と維新の会、みんなの党との間で修正協議が進められている。両党は修正・賛成論だから、秘密保護の趣旨は是としている。

 これに対して左右両派を抱える民主党は例によって腰が定まらない。共産党と社民党は何が何でも反対だ。こと安全保障となると冷戦構造の残滓(ざんし)が浮き彫りになる。

 新聞も同じ構図で、社説では読売「将来の『原則公開』軸に修正を」(17日付)、産経「報道の自由踏まえ成立を」(10月22日付)、本紙「国家安保に不可欠な秘密保護法案」(10月30日)と、3紙は修正・賛成論だ。

 日経16日付社説は「安全保障にかかわる機密の漏洩を防ぐ枠組みが必要なことは理解できる」としながらも、疑念が消えないから賛成できないとするが、大局から言えば、修正論だろう。

 これに対して朝日は反対一辺倒だ。社説は11月に入ってすでに5本掲載した。それに輪をかけて反対するのは毎日で、5日付から「秘密保護法案を問う」と題する社説を連日掲載し、すでに10本にのぼる(18日現在)。これに刺激されたのか、東京も同法案を論じる18日付社説を<1>としており、シリーズにするようだ。

◆おかしな共謀罪批判

 こうした反対論には理解不能なものが少なからずある。そのひとつが朝日の「共謀罪」反対論だ。6日付社説「社会を萎縮させる気か」は、「秘密をつかんでいなくても、だれかと秘密を得ようと話し合った。それだけで処罰される」と、不安を煽(あお)っている。「居酒屋の会話で逮捕?」(10月26日付)と同じ論法だ。

 同社説は、政府は2003年以降、国際組織犯罪防止条約の批准に向け、600以上の犯罪に共謀罪をつくる法案を3回、国会に提出したが、反対論や乱用の懸念があって廃案になったとし、「共謀罪」を悪玉のように書く。

 だが、なぜ同条約の批准のために共謀罪が必要となったのか、その肝心のところを朝日は書かない。それは国連が同条約を採択した際、実効性のある取り締まりのため、国内法で重大犯罪に対する共謀罪もしくは参加罪の創設を各国に義務付けたからだ。

 暴力団やマフィアなどの麻薬密輸組織が国際ネットワーク化し、国境を越えた凶悪事件が多発し、各国は連携して未然に防ぐことを迫られた。重大犯罪は起こってからでは手遅れで、9・11テロ事件後、より喫緊の課題とされた。

 それで、政府は2000年12月に条約に署名し、03年5月の通常国会では民主党や共産党も賛成して承認された。だが、国内法が成立せず、批准・締結できないでいる。すでに171カ国・地域が批准しており(12年8月現在)、放置すれば国際犯罪を容認する無法国家のレッテルを貼られかねない。

 朝日は「600以上の犯罪に共謀罪」と不安を煽るように書くが、条約は4年以上の懲役刑などを科す犯罪を「重大犯罪」として共謀罪を設けるとしたので、結果的に600以上となっただけの話だ。

 当時、朝日は「内心の自由が脅かされる」「乱用の恐れがある」と書きたてたが、政府案は共謀罪の適用対象を、重大犯罪を実行するための団体に限定し、また共謀した者の誰かが実行の下見など外部的な行動をした場合(犯罪の実行に資する行為)のみを処罰するとした。それでも朝日や左翼団体は反対した。

◆テロリストを擁護?

 これに対して特定秘密保護法案は「(特定秘密の漏洩)行為の遂行を共謀し、教唆し、又は扇動した者は、5年以下の懲役に処する」(24条)としている。朝日は「秘密をつかんでいなくても、だれかと秘密を得ようと話し合った。それだけで処罰される」と書くが、いったい誰を想定しているのか。

 報道人で「知る権利」のために正当な取材方法によって得ようとするなら、共謀や教唆、扇動に当たらない。だが、無差別テロを狙うテロリストや外国スパイなら、単に「話し合っただけ」の話では済まされなくなる。例えば、テロ防止の警備情報が漏洩すれば、深刻な事態を招く。まさか朝日は彼らを擁護したいのか。

 秘密保護法反対論者は誰の味方なのか。国家・国民全体の公益を考えない、安易な扇動記事はごめん被りたい。

(増 記代司)