婚外子問題を平等論で主導した新報道2001常連コメンテーター
最高裁判断は不適切
報道2001(フジテレビ)が3日、婚外子の財産相続問題を取り上げていたが、常連コメンテーターである野村修也・中央大学法科大学院教授やフジテレビの平井文夫解説副委員長は、これを単なる平等論や支持率への影響からだけ議論、ゲストコメンテーターの発言を制するような結果となっており興ざめした。
最高裁は9月、憲法14条の「国民は法の下に平等」の条項に鑑みて、婚外子と嫡出子(婚内子)の財産相続を平等にすべきだとの判断を下した。これまで婚外子は婚内子の2分の1と規定した民法(900条)に則り、財産相続が行われてきていた。
これに関して、同番組の常連コメンテーターの野村氏は、「民法と最高裁の判断が異なるのは現場に混乱をもたらす」とし、速やかに立法府が結論を出すよう求めた。
これに対してゲスト出演した西田昌司参院議員(自民党副幹事長)は、最高裁がケースによっては、平等な財産分与が妥当との判決を下すのはあってよいが、一般論として現民法の規定が違憲であり、婚内子と婚外子が父親の財産を均等に相続すべしとの判断を下すのは不適切、と訴えた。
身分差別解消に発展
わが国は、フランスが55%、イギリスが47%、米国でも41%と、欧米では婚外子の割合が半数近い国が多いなかで、婚外子の割合は2・2%だけだ。西田氏は、これは日本の特性で、家族制度を守っていく上でも重要で、こうした国々が「婚外子差別」を撤廃しているからと言って、それに合わせ、結婚制度の崩壊につながるようなことをする必要はない、という立場だ。
もう一人の最高裁判断に反対のゲストスピーカー、竹田恒泰慶応大学講師は、この決定は単に財産相続を均等にするという決定であり、不倫の容認や結婚制度の崩壊などということとは関係ないとキッパリ。
これに対して野村教授は、「婚外子差別」については、問題の所在が明確であり、ケース・バイ・ケースで判断できる類のものではない、と反論。加えて、財産相続が嫡出子の半分ということで婚外子に対する身分の差別をもたらしている、との見解を表明した。
今回の最高裁の判断は、財産の均等相続という金銭面の平等を促しただけだが、野村教授が図らずも述べたように、これを契機に婚外子という身分から生じる差別的扱いまで何とかすべきだと発言し、行動する人たちが出てくる。
そうなってくると、今回の最高裁判断が結婚制度を弱体化させ、同棲(事実婚)や不倫の容認を主張する人たちを利することになる。
今回の最高裁判断を支持する女性知識人も2人、ゲストとして発言。「婚外子差別」をなくす流れの中で、同棲と結婚の取り扱いの違いをなくすことで少子化が食い止められるとか、選択的夫婦別姓をも導入すべきだという議論を展開した。
このような結婚・家族制度の崩壊を助長する議論をサポートすることになる判断を最高裁が下したのは、返す返すも理解に苦しむところだ。
田中英敬三重県知事は、出生率が上がっている国は、政府が子育てに多くの予算を投入している結果であり、婚外子率の高低には関係ないとの事実を指摘していた。
常連コメンテーターの平井氏も、今回の最高裁の判断は「おかしい判断だった」と批判する一方で、安倍晋三首
相の高い支持率の下には無党派層が多く、アベノミクスは支持するが、首相が道徳観、家族観をあまり表に出すことは嫌がる人たちだなどとコメント。
婚外子が貰い過ぎも
竹田氏は、婚外子が非嫡出子なのに均等に財産を相続すれば、二つの家系から財産を相続することになり、逆にもらい過ぎになるというユニークな観点を指摘。これに対して、野村氏は「婚外子は認知が必要」などと述べて話題をそらし、この議論は深まらなかった。
ゲストの意見はそれぞれ特色があってよかったが、議論を引き出すべき常連コメンテーターが、逆に水を差していたのはいただけなかった。
こうした人騒がせな判断を下した最高裁判事たちには、次の国民審査でノーを突きつけよう。
(山本 彰)





