ビジネス界から日韓関係の本音で誤解を指摘したダイヤモンドの特集

◆日本は全体的に嫌韓

 3年半ぶりに日韓首脳会談が行われたが、冷え込んだ関係を改善に向かわせる契機にはなっていない。首脳会談前に週刊ダイヤモンド(10月31日号)が「嫌韓報道では絶対見えない本音の日韓経済」を特集した。

 「政冷経熱」は日中関係を指すが、日韓も同じような形態になっていると言われてきた。それが本当なのか。同誌は「ビジネスマン6000人に聞いた」結果をまとめている。

 「3つの大誤解」として最初に挙げているのが「ビジネス世界では冷静な日韓関係」が本当かどうかだ。好き嫌いでいえば、日本は韓国「好き」はわずか4・2%。「嫌い」が79・2%に上る。反対に韓国は日本を「好き」が28・2%あるものの「嫌い」も54・2%で1位だ。

 韓国で対日観はアンビバレントな様相を示す。1人の中に好きと嫌いが同居しているのだ。だから、日本が1番嫌いだが、好きの割合も多いという結果が出る。それに対して、日本では好きが少なく嫌いが多い。つまり全体的に韓国嫌いの傾向がはっきりと現れている。

 だから、「ビジネス上必要な国か?」の質問に、韓国では「日本が必要」が7割あるのに対して、日本は8割が「韓国は必要ない」と答えており、双方の思いは擦れ違っている。

 誤解の2は「関係悪化の元凶は相手国の偏向報道にある」だ。お互いに相手国の報道が元凶だと捉えているものの、日本の4割は自国のメディアの悪い影響を認めているのに対して、韓国は8割近くが日本の報道のせいにし、韓国メディアの責任は2割弱にすぎないとしている。韓国では一般的に報道を信用しない傾向があったが、こと対日報道については自国の肩を持つようだ。

◆“完治”不可能は卓見

 「中国傾斜」が問題視されている韓国だが、調査結果は意外にも「米国重視」が現れた。これが誤解の3である。韓国ビジネスマンは安全保障でも半数は米国との関係を重視せよとしている。

 日本で嫌韓が広がった理由について、同誌は「繰り返される謝罪要求や強硬な対日外交」により日本側に「もううんざり」といった本音が出てきたこと、韓国が事あるごとに日本を比較対象にし、日本に対する優位性を誇示することが「傲慢」に映るなど、日本人が不快感を募らせたことなどを挙げた。

 さらに、「日本側にも変化がある」として、「2012年ごろから嫌韓も含めて日韓関係について、本音を言える世論が形成された」と「全国紙外信部記者」のコメントを載せた。以前は日本側にも植民地支配に対する謝罪の気持ちがあったが、あまりにもしつこい謝罪要求と、日本でも昔を知らない世代が増えたことなどから、本音が出てきたわけだ。同誌は「大人の隣国関係に踏み出したといえる」と述べるが、そうありたい。

 さらに、「韓国メディアの東京特派員経験者」は、日韓の問題を「“完治”させるのは不可能」と語るが、卓見である。日韓の諸問題が「不治の病」だとすれば、完治を前提にしていたら、何も前に進められない。

 同じように日韓の問題を「糖尿病」に喩(たと)える人もいる。治らない以上、悪化させずに病気と上手(うま)く付き合っていくしかない。その知恵を出すのが政治だろうが、それが機能していないのが問題なのだ。

◆理解できる二股外交

 日本の嫌韓を加速させている理由の一つが韓国の「二股外交」である。周辺を大国に囲まれているという地政学的宿命から、自国存立のために覇権国に追従してきた。特に朴槿恵(パククネ)政権になって、中国との関係を深める一方で、安保同盟を結ぶ米国のさまざまな要求や忠告に応えられなくなっており、自由主義陣営の懸念を誘っている。

 ただ、結論から言えば、韓国の地政学的位置を考えると、「米中双方に太いパイプを持った強かな“二股外交”こそ韓国の生きる道」という同誌の指摘は妥当だ。中国との経済関係は今や韓国の死活問題であることは理解する。それには日米との信頼関係が強固に結ばれた土台が必要であり、そのための頻繁な首脳外交が行われなければならない。同誌は「今の政権中枢にそれを期待するのは難しいかもしれない」と結んでいる。同感だ。

(岩崎 哲)