日本のハロウィンに由来を解さない「バカ騒ぎ」と言ってくれた新潮
◆目玉記事はどれか?
この週、いつも同日に発売される週刊誌2誌の売り上げに差がついたようだ。書棚に残っている冊数が明らかに違う。週刊新潮(11月5日号)が残り少ないのだ。
では、どんな目玉記事を揃(そろ)えているのだろうか。目に付くのは「維新の会騒動」がトップ、続いて、「『高木パンツ大臣』の幼い危機管理」「巨人軍投手が吹聴する『山口組弘道会』との密接交際」「あなたのマンション『杭打ち』工事はこんなにデタラメ」と、この週にあった話題を網羅している。
だが、同じような記事は他誌にもある。差をつけたのは何か。これかもしれない。「『学習院初等科』で怪文書騒動」だ。扱いは4番手ぐらいで見開き2㌻にすぎないが、「私立小学校御三家」に数えられる学習院初等科で「怪文書」とは食指が動く。
ようするに教員の人事をめぐって「パワハラだ」という告発文書が保護者に配られたという話で、よくあるように学校も、名指しされた人物もはっきりしたことは言わないし、取材にすら応じない。読者は見出しに釣られて読んではみたものの、スッキリせずに放置される。たとえ、この件に決着がついても、同誌が続報することはおそらくないし、学校も書かれたくないだろう。情報提供者にしてみれば、1度週刊誌に取り上げられれば、所期の目的は果たした、ということだろうか。
「『秋篠宮家』には先見の明がある」という見出しは、悠仁さまが学習院でなく、お茶の水女子大付属小に進まれたことで、「結果的に(騒動に)巻き込まれずに済んだ」(皇室ジャーナリスト)という件(くだり)にしかかからない。「羊頭狗肉」とは言わないが、同誌編集部が力を入れた記事ではないことは確かだ。
◆松井知事を黒幕扱い
それでは、やはりトップに持って来た維新の会のお家騒動が読者を引き付けたのか。「新聞が報じない『橋下』大阪市長を操るわがままな黒幕」という見出し。「黒幕」というからには表に姿を現さない影の人物を想像する。しかし、読んでみれば、松井一郎大阪府知事のこと。橋下市長の発言がくるくる変わる裏には、「橋下というカリスマが引退した後も、大阪で勢力を維持していかなければならない松井さん」(関係者)の「わがまま」がある、という話だ。
維新の会騒動は現在進行形で、11月22日の大阪府知事・市長ダブル選までごたごたは治まりそうもないから、その都度、続報を待ちたい。
で、一番共感を得たのはこの記事、「『ハロウィン』バカ騒ぎをどうしてくれよう」だ。近年、日の本(ひのもと)でも「ハロウィン」という外来の催しが目立ってきたのを苦々しく思っていた。これに一言いっておかなければならないと考えたのは筆者だけではなかったわけだ。新潮が取り上げてくれた。
同誌は「そもそも、ハロウィンとは」を説明している。これを読んで初めて由来と意味を理解した御仁も多いことだろう。それほど“突然”日本に上陸したのである。ハロウィンが「急速に広がり始めたのは2010年以降です」と、「日本記念日協会の加瀬清志代表理事」は語る。
由来はカトリック系の宗教行事で、「諸聖人の日」に地獄の釜の蓋が開き魑魅魍魎(ちみもうりょう)が地上に現れるというものだ。さらに遡れば、古代ケルトの時代、死者を迎え、収穫を祝い、悪霊を払う「収穫祭」だったという。子供たちに菓子を配るのも、収穫を分け合うという意味だった、と「大阪芸術大学教授で美術博士の純丘曜彰氏」は説明する。
◆“罰当たり”な騒ぎに
それが、いまでは「海外の伝統文化を持ってきて、全然本来の意味と違うイベントに仕立て上げ」てしまった、と「ネットニュース編集者、中川淳一郎氏」はいう。「単なるコスプレ大会」「バカ騒ぎする日になってしまっています」と嘆く。同感だ。
同じ類に、クリスマス、バレンタインデーがあり、家に神棚と仏壇のある日本人がキリスト教由来の記念日をオリジナルとはまったく違う“罰当たり”な騒ぎにしてしまった。
そのうち11月の感謝祭=サンクスギビングデーもこれに加わってくるのだろうか。米国ではこの3カ月にデパートなどは1年の売り上げの半分以上を叩(たた)き出す。風物詩と共に経済効果もあるものだ。日本のハロウィンは「傍迷惑な狂乱イベント」にすぎないと同誌は眉をひそめる。しかし、これが改められることはないだろう。
(岩崎 哲)