宜野湾市民らの翁長知事提訴は扱い乏しい琉球新報、沖縄タイムス
◆本土紙より目立たず
沖縄の地元紙、沖縄タイムスと琉球新報は「本土紙は沖縄の米軍基地問題を小さく扱い、県民の気持ちに寄り添わない。だから我々は県民に寄り添い、基地問題を大きく報じている」と主張している。
今年7月、作家の百田尚樹氏の偏向報道批判に対して潮平芳和・琉球新報編集局長は「偏向、左翼呼ばわりはいわれなき中傷だ」と反論した(日本外国特派員協会での記者会見)。だが、本当にいわれなき中傷だろうか。
米軍基地問題の最たるものは宜野湾市の普天間飛行場だ。民家が隣接し「世界1危険な基地」と地元紙も騒いできた。それで名護市辺野古のキャンプシュワブ沖に移転し危険を除去する。それが辺野古移設問題の核心と言ってよい。
ところが、翁長雄志知事は辺野古の埋め立て承認を取り消し、移設阻止を狙う。これに対して宜野湾市民12人が20日、承認取り消しで飛行場が固定化され市民の生存権が脅かされるとして県と翁長知事を提訴した。本紙社説(22日付)が言うように普天間基地移設の原点の声だ。
これを本紙は21日付1面トップで報じた。産経は政治面に2段見出し、毎日、読売、日経は社会面で取り上げ、共同と時事通信も配信したので地方紙にも載った(なぜか朝日21日付にはない)。
これだけの全国ニュースなのだから、タイムスと新報はさぞや紙面を割いて報じていると思いきや、両紙21日付の1面にも2、3面の総合面にもない。紙面を繰っていくと、タイムスは社会面に写真付きとはいえ2段見出し、琉球新報に至ってはまるでゴミ扱いの1段ベタ記事の短報で、本土紙より目立たない。
◆際立つ偏向報道ぶり
これまで両紙は辺野古移設を「新基地建設」と報じ、「基地拡大で人権侵害」と書き立ててきたが、宜野湾市民の危険除去つまり人権擁護の訴えは軽視するらしい。これで「県民に寄り添っている」とはよくも言えたものである。
偏向ぶりも際立っている。琉球新報は「未来を築く 自己決定権 戦後70年 差別を断つ」と題するシリーズを19日付から始め、初回に「軍隊、犯罪の温床/戦後70年間、生活脅かす」との記事を掲載した。
その中で「復帰後、2013年までに米軍人・軍属・家族の刑法犯は5833件に上る。殺人・強盗・放火・暴行の凶悪犯は570件にも上り、人権侵害は続く」と書いた。確かに件数はそうだが、犯罪は復帰後10年間に集中しており、復帰後20年間(1991年)までに7割、凶悪犯罪では82%を占め、それ以降は大幅に減っている。
犯罪率は現在、県民の半分程度にまで下がった。それでも「犯罪の温床」というなら、県民のほうは温床どころか、熱床ということになる。「戦後70年間、生活脅かす」とか「人権侵害は続く」と書くのは反米プロパガンダだ。
また2012年に普天間飛行場に配備された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて「事故率が高く、米メディアから『未亡人製造機』『空飛ぶ恥』と言われてきた。配備は、政府の言う『普天間の危険除去』と逆行しているとの見方もできる」とも書くが、これも事実に反する。
「未亡人製造機」などと揶揄されたのは開発当初のことで、完成機であるMV22の事故率は「1・28」(10万飛行時間当たり)で、海兵隊平均の「2・46」よりはるかに低い(配備当時)。従来の輸送機CH46C型は1960年に初飛行した老朽ヘリで、これを飛ばし続けるほうがよほど危ない。オスプレイ配備が危険除去に逆行するとの見方はまったくの間違いだ。
◆すり替えより真実を
また記事は「普天間から直線距離にしてわずか36㌔の辺野古の代替の新基地が建設されても、墜落の危険性が本島全域に及ぶ状態は変わらない」と、話をすり替える。辺野古を「わずか36㌔」とするのは驚きだ。
今、問題にされている普天間飛行場と隣接住宅の距離は数百㍍の話だ。それを36㌔(3万6000㍍)の距離を「わずか」と書く記者(編集委員・新垣毅とある)の神経が知れない。
このように沖縄の地元紙には偏向呼ばわりされる「いわれ」がある。自己決定権とか差別とか、絵空事を言う前に真実の報道をするべきだ。
(増 記代司)





