内閣改造前に小泉進次郎氏を話題に挙げ自民の“人材難”で結ぶ新潮
◆乏しいマスコミ辞令
「独身イケメン最後の砦」と言われた歌手で俳優の福山雅治(46)が女優・吹石一恵(33)と結婚した。全国各地で女性の悲鳴が上がった、らしいが、衝撃は具体的な形で現れた。福山が所属する大手芸能プロダクションの株価が暴落したのだ。一芸能人の結婚が社会へもたらした反応とすれば、「時価総額40億円」というのはスゴイ話だ。
福山ショックでは主に女性が悲鳴を上げたが、中年男性がため息をついたのは、女優の川島なお美(54)の病死である。バラエティーで活躍していた可愛(かわい)らしい女子大生タレントが、いつの間にか濃厚なラブシーンをこなす女優になり、「私の血はワインでできている」というほどのワイン好きに変身していた。惜しまれつつ、肝内胆管がんで逝った。
このほか、元女子プロレスラーでタレントの北斗晶(48)が乳がんを明らかにし、手術を受けたりと、芸能の話題だけでも豊富なのに、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題、10月からのマイナンバー通知開始、など、社会的話題にも事欠かない週となった。
週刊誌各誌はいずれもこれらの話題を取り上げているが、意外にも今月行われる安倍内閣改造について触れているものが少ない。安保法制成立後、下がった内閣支持率を引き上げるのは閣僚人事と経済政策だ。メディアは安倍晋三首相の意中の人を掴(つか)んで、いち早く「マスコミ辞令」を出すことにしのぎを削っているはずなのだが。
◆話題にならぬ待機組
その中で週刊新潮(10月8日号)が“改造最大の目玉”となる小泉進次郎衆院議員の入閣に焦点を当てた記事を書いている。「それでも『小泉進次郎』官房副長官をためらう事情」だ。
当選3回、34歳。人気は抜群。小泉氏を起用すれば、内閣の「支持率アップは確実」と菅義偉官房長官は目論(もくろ)んでいるようだが、事情はそう単純ではなさそう。
小泉氏の話の前に、改造全体の話をみてみよう。菅官房長官、麻生太郎財務相、岸田文雄外相、甘利明経済再生担当相、遠藤利明五輪担当相の留任は決まっているほか、中谷元防衛相、塩崎恭久厚労相の続投説も出ている。ところが、他12ポストへの名前が出てこない。当選回数などで要件を満たす「入閣待機組」は60人もいるというのにだ。
女性で名前が挙がっているのが稲田朋美党政調会長、丸川珠代参院議員だが、両氏とも首相派閥のため、起用すれば、「お友達人事」の批判を招く恐れがあると「全国紙の政治部デスク」が同誌に解説する。そうあまり「お友達」批判を気にする必要もないと思うのだが。
さて、小泉氏。記事は「ためらう事情」を書いている。若くて人気があるが、待機組60人がおり、起用して嫉妬に囲まれることが分かっていれば、小泉氏は受けまい。さらにこの理由が最も悩ましい点だが、先の選挙でも全国64カ所の応援演説をこなした小泉氏を「官房副長官」に据えれば、官邸を留守にすることができなくなり、来年の参院選で「彼の人気を利用できなくなる」ことだ。
小泉氏は「復興関係の仕事に力を入れたい。10年間一生懸命やって、一つの形を作りたい」と「政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏」に語っているという。「あと5年半は震災復興に携わるつもりだというのだ」と同誌は指摘する。そして、自由な発言や「身の丈に合った」活動をすることを重視する小泉氏は窮屈な閣僚ポストを受けないだろう、というのが同誌の結論である。
最後に、「結局、自民党には人材が不足しているから、“進次郎頼み”になるのだ」と結んでいる。待機組が60人もいながら、小泉氏以外に出てくる名前がいくらもない、という現実は自民党の層の薄さを表しているのだろう。
◆人材発掘にも特集を
人材不足は自民党だけの問題でなく、日本政治の課題でもある。早くから人材として注目を受け、国民に理念や政策を理解してもらい、満を持して大臣ポストに上がり、国家の仕事を遂行する。そういう政治家を政界も社会全体も育てていかなければ、国の将来が危うい。官僚の言いなりになるだけの順送り大臣は必要ないのだ。
だから、週刊誌をはじめメディアは政治家のスキャンダルばかり嗅ぎ回るのでなく、与野党を問わず、隠れた有為な人材を見つけて、読者に知らせることもしなければならない、と思う。
(岩崎 哲)





