「安保法案」審議中に組んでほしかった反対派のデマを正す新潮特集

◆現代戦に無知な反対

 17日、「安保法案」が怒号の中、参院特別委員会で可決され、本会議でも19日未明、賛成多数で可決された。「徴兵制復活」「子供を戦場にやるのか」「戦争に巻き込まれる」といったデマに踊らされた国会前の人々は、的外れな政治活動の虚しさを噛(か)みしめているかもしれない。

 週刊新潮(9月24日号)が「『安保法案』7つの疑問」の特集記事を載せている。その中の「子を持つ親の心配は『本当に徴兵制になるのか?』」で、反対派のウソを論破している。

 まず、「徴兵制になるのか」について、同誌は「ハッキリ言っておこう。安保法案成立により、徴兵制が復活することはない」と断言する。

 その根拠の一つが現代の先端兵器である。日露戦争から太平洋戦争までは兵隊の数は勝敗の帰趨(きすう)を決する要素だった。だが今は高度で精密な兵器による戦争だ。高い専門知識と訓練が必要で、召集された一般人では役に立たないのである。

 「防衛大学校名誉教授の佐瀬昌盛氏」は同誌に、「最新テクノロジーを先進国の軍隊は導入しており、役に立たない兵をいくら集めても仕方ないですから、各国、事実上の志願兵制にしているのです」と説明する。

 次、「戦争になる」というデマについて。「外交評論家の田久保忠衛氏」は、「今はむしろ、アメリカが日本の戦争に巻き込まれたくない、と考えている」と明かす。「日本が中国や北朝鮮との間で小競り合いを起こすと、アメリカも一緒にアジアでドンパチしなければならなくなる。アメリカはそれを避けたいのです」というのである。安保法案を安倍晋三首相が、「平和のための…」というのはこの辺のことも指しているわけだ。

 さらに、「個別的自衛権だけで防衛は事足りる」という説について、田久保氏は、「自分たちだけで国を守るとなると、どれだけの防備、費用が必要なのか理解しているのでしょうか」と問う。かといって、「個別自衛権だけで」との言説を日本独自で真面目に行い防衛費を増やせば、国内外から「軍事大国化」と猛烈な非難を受けるだろう。個別的自衛権を掲げて反対する野党側の論者は防衛費増額にも反対する。平和はタダで得られると思っているようだ。

 ちなみに、不思議なことに、9月3日に「反ファシスト・抗日戦争勝利70周年記念の軍事パレード」で最新兵器を惜しげもなく披露し、一糸乱れぬ統制された軍隊の示威行動を見せた中国に対して批判の声が出てこないのも不思議なところだが……。

◆能力整備説く中西氏

 「中国の南シナ海での横暴は止まるのか?」について、同誌は「止まらない」と結論付ける。ただし、「日本の意志と覚悟」すなわち「法案に見合った能力整備ができるか」が問われると「京都大学名誉教授の中西輝政氏」は言う。能力整備とは、「自衛隊や海保の予算を画期的に上げて、能力を高めること」だ。意思と能力を見せなければ、「抑止」にはならない。

 こうした説明は法案が審議されている最中に出してほしかった。反対派が「子供を戦場にやるのか」と情緒に訴え、「嘘も百回言えば本当になる」式で国民を洗脳している時には、往々にして冷静な意見はかき消されてしまうものだが、それでも、地道に国民に訴え掛けてほしかった。

 法案成立後に予想される「違憲訴訟が乱発される」という懸念がある。同誌は、「法案成立以降に起こされる、あたかも雨後の筍のような違憲訴訟は、短期間では片付きそうにないのだ」と見通している。

 さらに自衛隊派遣などに対して、「『差し止め訴訟』が全国に拡がるかもしれません」と「日本大学法学部の百地章教授」が注意を喚起する。これは「どんなに荒唐無稽な訴状でも裁判所はいったん受理する」ことになっているため、「提訴乱発は必至」だと予想される。

◆成立後の焦点を追え

 反対派も法案成立後の運動については、既に考えてあるだろう。だから、週刊誌はむしろ「成立後」に焦点を当てて特集を組むべきだった。「論功行賞を授ける人」「冷や飯を食わす人」の記事が1本あるだけだが、これは与党内の話だ。次には、日本が「普通の国」に1歩近づいたことへの周辺国の反応などを特集してほしい。

(岩崎 哲)