人工授精で生まれる子供の苦悩無視したアエラのLGBT家族特集
◆同性婚の問題点無視
かつてNHKテレビの情報番組「週刊ニュース深読み」(土曜日放送)が“同性婚礼讃特集”と言われても仕方がない内容を放送した時、視聴者から「同性婚を認めないことによる問題点は分かったけれど、認めることによる問題はないのか」という意見が寄せられていた。
昨今のテレビ、新聞を見る時、世界日報を除いて同性婚推進の論調一色と言っても過言ではない風潮の中で、それに惑わされずに見るべき点は見ている視聴者はいるものだなと感心したものだ。だからと言って、一般人の声を反映し、同性婚の合法化の問題点をあぶり出す企画が出るほど日本のマスコミは謙虚ではない。そこで期待されるのが週刊誌によるマスコミ批判だが、朝日新聞系列の「AERA」(アエラ)に限ればそれは望むべくもない。
同誌9月14日号がLGBT特集を組んだ。メディアが盛んにLGBTという言葉を使っていても、同誌のように、いまだに「LGBT(性的マイノリティー)」としなければならないのだから、この言葉は一般に浸透しているとは言い難いのが現実。
特集の中心テーマは同性カップルなどの「結婚」だった。その是非を多角的に検証するならそれなりの意義はあるのだが、NHK同様、性的少数者問題についての一方的報道が多いのをいいことに、同性婚の問題点を無視した偏向特集だった。リベラル左派という思想傾向を見れば想定内ではあるが、もし他の週刊誌までも、同性婚容認一色になってしまったのでは、いずれ日本でも同性婚が合法化される日がやってくるだろう。
◆宿命的な子供の苦悩
アエラの特集で抜け落ちていた同性婚の弊害の第一は同性カップルによって育てられる子供の問題だ。自然の摂理からすれば、同性カップルに子供は生まれないが、同性カップルの結婚を容認するということは、養子を育てるばかりか、人工授精によって子供を生む権利も認めることにつながるのである。
特集は4組の「新しい家族のかたち」を紹介したが、そのうちの2組は出産をしていた。一組は日米のレズビアンカップル。同性婚が認められている米国マサチューセッツ州で籍を入れたあと、米国人のいとこから精子提供を受けて人工授精した日本人が東京都内で出産したケース。
もう一組は性同一性障害者で、戸籍も性別も変更した男性と女性のカップル。夫は卵巣摘出前に、米国で精子バンクを利用し、自身の卵子を受精卵にして凍結保存していたという。それを結婚後に、妻の子宮に移植して妊娠を試みたが失敗。結局、妻は第三者の精子を使って人工授精し、昨年出産した。
この二組のように、第三者の精子を使う人工授精はAID(非配偶者間人工授精)と呼ばれるが、普通の夫婦間でさえもAIDで生まれた人たちの中には、自己のアイデンティティーについて苦悩を抱えて成長する人が少なからず存在している。成長してから自分の出生の経緯を知れば、自分の血のつながった父親は誰なのか、また自分は人間の自然な営みで生まれたのではなく、子供が欲しかった親によって人工的に作られたのではないか、という精神的な葛藤が生じることは当然だろう。
◆大人の側からの語り
「血のつながりは『関係ない』と思った」「人工授精に決めたことを誇りに感じる」
特集には、AIDでの出産を肯定するこんな言葉が並んでいたが、それはあくまでも大人の側からの気持ちでしかない。確かに、AIDで生まれても幸せになっている子供はいるだろうが、普通の男女の営みで生まれたかったと苦しむ子供がいるのも事実だ。
性同一性障害者は、幼少のころから「女」であることに違和感を持ち、「自分が何者なのかわからず」に悩みぬいたという。AIDで生まれた子供も将来、自分が何者かわからずに苦しむかもしれないのである。
アエラは、「新しい家族のかたち」が作り出す、この“落とし穴”にはまったく触れなかった。性的少数者は、自分たちにも子供を生む権利があると主張するが、子供には自然の摂理に従い父親と母親を持つ権利があるとの考えのほうが理に適(かな)っているのではないか。
(森田清策)










