中1遺体遺棄容疑者の同性小児愛示唆しミーガン法唱えた「新報道」

◆面識ない再犯者逮捕

 夏休みの悪夢である。大阪府寝屋川市で12日夜に家を出た中学生男女2人が、少年目当ての犯罪歴を持つ45歳の男に殺害されたとみられる事件は、すべての学校関係者、親子にとって他人事(ひとごと)ではない。

 8~15歳の女性遺体が高槻市内の運送会社駐車場で発見されたのは13日深夜。18日に寝屋川市立中木田中1年の平田奈津美さん(13)と断定されると、大阪府警は平田さんと共に行方不明になった同じ中学1年の星野凌斗君(12)の公開捜査に踏み切った。

 防犯カメラや、無料通信アプリLINE(ライン)から足跡を追い、報道過程では2月の川崎市中1男子生徒殺害事件のような同世代トラブルの臆測もあった。しかし、21日夜に2人と面識のない山田浩二容疑者が平田さんの遺体遺棄で逮捕され、23日の報道番組はトップで扱った。

 逮捕に結び付いたのは、平田さんが遺棄された現場近くの防犯カメラから割り出した車両を捜査員が尾行し、柏原市の山中に立ち寄った場所を確認、星野君の遺体が見つかったからだ。捜査当局は単独犯行とみて調べている。

 各報道の容疑者の人物像は非行、いじめ、暴走族、前科と奇行癖のある変質者だが、フジテレビ「新報道2001」は服役中の2009年に出した手紙で几帳面(きちょうめん)な横顔を捉え、20年来の知人女性の取材から、昨年10月に出所し、「罪滅ぼし」に福島の除染作業をする人間的姿を示して事件とのコントラストを強めた。

◆専門家が再発を診断

 手紙はしっかりした文体で獄中結婚した相手の連れ子の娘への愛情や社会復帰への決意が綴(つづ)られていた。が、スタジオ出演した法医学専門家の佐藤喜宣杏林大学客員教授が分析を加え、「一番奇異に思ったことは、どうも自分が捕まったことが失敗であって、自分が行った行動に対する反省は読み取れない。ということは再発する可能性のある人だと思う」と診断。

 番組で知人女性は、山田容疑者は「若い男の子に興味がある」「若い中学生くらいの子が好き」と証言し、同性小児性愛を示唆した。つまり男子生徒が目当てで、女子生徒には無数の刺し傷からサディズム、犯罪性愛など性的倒錯が浮かび上がる。

 昨年までの服役も男子生徒を車に乗せ粘着テープなどで縛る犯行だった。この時の姓は「寝屋川市香里新町、無職渡利浩二容疑者(32)」(本紙02年4月5日付)で「渡利」だが、その後、1歳年上の養父(服役中)によって山田姓になった(読売8月25日付)。素性隠しである。

 顔を粘着テープで巻く犯行について佐藤氏は、「大変残忍だ。つまり自分のコントロール下に置いて相手が死のうと生きようとかまわない。それから、見られるのが嫌なんでしょうね」と推定した。実に恐ろしいもので、出所後1年も経(た)たぬ盆休みの間隙を縫い、倒錯した性犯罪の矯正しがたい宿痾(しゅくあ)が露呈した。

 スタジオ出演した歌手で香港バプテスト大学教授のアグネス・チャンさんは「米国では性犯罪者がどこにいるか地域に知らせる」と指摘、平井文夫フジテレビ解説副委員長は「性犯罪は社会で守らないといけない」と述べ、米国のミーガン法の例を挙げた。同法は児童への性犯罪歴のある人物の情報公開で地域ぐるみで監視するもの。投薬や全地球測位システム(GPS)を取り付ける場合もあるという。

 同法により万事解決とはならないが、これほど危険な男が車で徘徊(はいかい)していたのが現実の事件だ。危険を知らせて地域社会が対策を取る警戒心には資するだろう。

◆子の守りは家と教育

 TBS「サンデーモーニング」で、大阪の事件のためコメントを求められた大阪国際大学准教授の谷口真由美氏は、「私は小さいころ夜に外出すると人さらいが来ると言われた」と述べ、子供の夜の外出の危険を説いていた。そのような常識が緩んだ原因の一つはスマホなど通信端末への過信だろうか。被害者家族の悲痛の故に夜通しの外出や家庭環境を咎(とが)める声はかすむが、家こそ子を守る基本だ。

 谷口氏はまた、「周りの大人たちのお節介」のなさを嘆いた。ただ、「新報道」で紹介された山田容疑者の獄中手紙には小学生の見守りボランティアをしたいと書かれていた。ならば“お節介な大人”を装い13日午前5時すぎに家出の2人を車に“保護”した可能性はないか。前科では「警察」を名乗ってもいる。仮面の裏の闇は深いと思われる。

 「人さらい」は悪人らしく子供に近づいたりしない。過去の犯行ケース、具体的な手口や身の守り方など防犯教育を強化しなければならない。

(窪田伸雄)