部数競争が最優先か?女性読者をターゲットに誌面作りに励む文春
◆「週刊文春」は45万部
月刊「THEMIS」4月号の記事「『文藝春秋』激減が示す出版不況止まず」によると、「出版業界の落ち込み、とりわけ雑誌部門の落ち込みが一段と加速」「総合月刊誌として唯一、健闘してきた『文藝春秋』は2004年3月号で実売部数100万部の大台を超えたが、それ以後減り続け、14年上期には30万部を割り込み、27万部にまで落ち込んでいる」という。出版業界の現状は想像以上に厳しく驚きが先に立つ。
当欄は週刊誌批評なので、月刊誌の話題はこれ以上出さないが、片や週刊誌では「各誌とも部数減にあえぐなか」、ABC公査によると「(14年上期)は、1位の『週刊文春』が45万部、2位の『週刊現代』が35万部、3位の『週刊新潮』が32万部、4位の『週刊ポスト』が27万部。ここで注目すべきは、(中略)文春の独走による『一強多弱』が定着しつつある点だ」とし、その理由として「週刊誌編集長経験者が語る。『文春の場合、早くから女性読者を新規開拓したことが奏功した(後略)』」(以上THEMIS)ことを挙げている。
女性読者をターゲットに誌面作りに励む文春―を念頭に、昨今の記事内容を見ていくと、この“編集方針”にいじらしいほど忠実であることがよく分かる。
今回、再び国民の注目の的になったなでしこジャパン。特に女性ファンが多いと言われる。7月16日号の写真記事「大和撫子 美しき完全燃焼」「日本中が沸いた!!なでしこ名ゴールシーン2015」「2019フランスW杯で主役の座を狙うヤングなでしこたち」は5㌻にわたり、W杯での活躍を伝えている。
さらに「なでしこ奮戦記」と題した「澤穂希“国民栄誉賞女子会”で告白 最後のW杯への決意と結婚」「キャプテン宮間あや 悲壮な覚悟『澤さんをメンバーに入れて』」「選手、大阿闍梨、妻が明かした佐々木則夫監督“笑撃”の統率力」のほか「海外組VS.国内組 チーム内紛を救った安藤梢とクマのぬいぐるみ」など8本の関連記事。あくまで美談仕立ての、女性読者を見据えた誌面作りで、女性週刊誌の記事トーンと変わらない。
◆主婦投書でフォロー
確かに今回のなでしこジャパンのチームワークのよさはさすが。女性が得意とするところで、男性ではこううまくはいかないだろう。一戦ごとに強くなって評価が変わった。しかし決勝で惨敗。実際はどれほどの実力だったのか? そんな調子の記事をものすのかと思いきや、多くのなでしこファンのご機嫌を損なうのはご法度ということなのだろう。毒もなし。
翌7月23日号では巻末の「読者より」の投書欄の先頭に、45歳主婦の「次は母娘でW杯へ」と題し以下のような文が載った。「『なでしこ奮戦記』を読んで奮闘の裏側がよく分かった。W杯のために結婚目前の彼と別れた澤穂希さん。是非、結婚、女の子を産んで、なでしこ二世と七度目のW杯へ。私のバイト先の店長はかたぶつ……。佐々木則夫監督のオヤジギャグの記事を読み、こういう上司なら私も職場でもっと活躍できると思った」。前週の特集記事を丁寧にフォローしていた。
筆者が文春の編集方針をとやかく言っても始まらないのだが、読者の皆さま、こういう内輪の事情が色濃くあるのを踏まえて週刊誌をご覧あそばせと言い添えておきたい。
◆健康記事も主婦用?
一方、最近、健康関連記事が多くなったのも主婦、高齢者を意識してか?
同16日号では「健康に『いい油』『悪い油』正しい摂り方教えます 最新ランキング付 いい1位エゴマ、2位アマニ油、悪い代表はマーガリン」の記事で、見出しは「年配の方ほど動物性脂肪を」「毎日納豆に入れて食べる」。
また同9日号では「心臓病や脳卒中のリスクを上げる トランス脂肪酸の恐怖 米では使用禁止へ 危険食品リスト付」を載せている。米国の当局が、トランス脂肪酸を多く含む油脂について近々原則禁止すると発表。「対象となるのは植物油に水素を添加して加工した『硬化油』(または部分水素添加油)と呼ばれているもので、おもにマーガリンなどの原料に使われている」とマーガリンをやり玉に挙げている。
週刊誌の販売は文春の独走による「一強多弱」と言われ、他誌も文春に追随して今後、女性読者をターゲットにした方向に進んでいくのだろうか。
(片上晴彦)





