新聞の不公正性を指摘された韓国の新聞にそっくりな沖縄の地元紙

◆左傾化のお先棒担ぐ

 韓国の趙昌鉉(チョチャンヒョン)・漢陽大大学院教授のこんなメディア評が本紙10月31日付に載っている。

 「いつからか、一部メディアはメディアの生命である正確性、真実性、迅速性などを守るよりは、特定政治理念の伝播(でんぱ)に没頭するようになった。特に新聞は社説で報道機関の主観的意見を陳述することが原則であるのに、最近では社説欄だけでなく全ての紙面を使って自己主張を展開していることに驚かざるを得ない。この報道傾向は新聞の不公正性を如実に示すものだ」

 むろん論じているのは韓国の新聞のことである。いったい不公正性を招く「特定政治理念」とは何なのか、ここでは触れられていない。

 だが、評論家の洪(ホン)ヒョン氏(元駐日韓国大使館公使)は産経11月2日付「自由人の思索」で、その内容に言及している。洪氏によると、韓国の国会議員の1割以上が平壌と直接つながった革命闘争の“前歴者”で、韓国社会は親北や従北(北朝鮮に何も分からずに従う勢力)に無感覚、ないし寛大な「左傾化」が顕著なのだという。どうやら新聞はそのお先棒を担いでいるようだ。

 こういう報道姿勢とそっくりなのが、沖縄の地元紙だ。正確性や真実性をないがしろにし、「特定政治理念」を紙面に埋め尽くすことがしばしば起こるからだ。最近、際立っているのは特定秘密保護法案をめぐる反対論調だ。

 同法案が国会に提出されると、朝日に輪をかけた大特集を組んだ。琉球新報26日付は「秘密『乱造』を危惧」や「知る権利危うく」「不都合真実 闇に」「表現の自由奪う」といった大見出しを、1面から社会面にまでずらりと並べた。沖縄タイムス同日付も「『戦前へ逆行』危惧 基地反対の声封じ 戦争体験者、阻止訴え」などと絶叫調だ。

◆為にする報道に終始

 両紙がことさら描こうとするのは同法案を「戦前の暗黒社会」とダブらせることだ。琉球新報社説は「廃案にすべき『悪法』だ

 暗黒社会を招きかねない」(26日付)と、暗黒社会を強調してみせた。

 沖縄タイムスも負けていない。大田昌秀元知事に「戦前、戦中にあった軍機保護法や治安維持法と一緒で、言論統制、弾圧につながる。暗黒社会時代を思わせる非常に怖い法だ」と語らせ、この主張を軸に反対論を繰り広げている。

 さすがに朝日はここまでは書かない。それはそうだろう、現在の日本は戦前とは憲法も政治体制もまったく違っているからだ。

 戦前の憲法では法律の範囲内でしか言論の自由はなく、それに基づき出版法や新聞紙法、治安維持法などが作られ、検閲もあった。これに対して現在は憲法で表現の自由が保障されている。

 また戦前の刑事訴訟法は被告人を取り調べる際、警察・検察側の方法や手段は問われず、令状なしの捜査も認められていたため、多くの人権侵害があった。これも現在では、捜査は令状主義が原則で、捜査に違法性があれば、たとえ被告人の有罪を決定付ける証拠があっても採用されない。

 そもそも現行憲法にはこと細かく国民の権利が明記されている(第11~40条)。秘密保護法案の論議では護憲を唱える人物に限って、憲法条項に目をつぶり、平然と「暗黒社会に陥る」と主張するから不可解千万である。

 確かに戦時下に国防保安法などがあったが、どの国も戦時統制法は存在し、米国は第2次大戦中には徹底的な検閲を行った。戦前の日本で国防保安法が適用され、司法処分に至ったのはコミンテルン(国際共産党)による国際スパイ事件として名高いゾルゲ事件(1941年9月)だけだ。琉球新報も沖縄タイムスもこういう事実は言わず、為にする報道に終始している。

◆中国艦隊演習は沈黙

 ところで中国海軍は10月に北海、東海、南海の3艦隊を動員して西太平洋で初の合同演習を行ったが、両紙はこれに沈黙した。ところが、自衛隊が沖縄県の沖大東島などで離島奪還訓練を行おうとすると、すかさず「危機あおる訓練は迷惑だ」(琉球新報)、「地域の緊張を高めるな」(沖縄タイムス、いずれも25日付社説)と猛反対した。

 韓国の場合、新聞偏向は親北・従北に由来するようだが、沖縄の新聞はどう見ても親中・従中が背景にある。

(増 記代司)