スポイト“妊活”公言するレズ活動家の異様を曝すTBSバラエティ
◆人権には生命の尊厳
同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めて証明書を発行する東京都渋谷区のパートナーシップ条例が4月に施行した。同条例の基本理念は「人権尊重」である。
この理念に反対する人はいない。「人権が大切だ」と声高に叫ぶ人も多い。しかし、その人権意識が本物かどうかは別問題。生命尊厳に対する感性を持たない人間の人権意識はまがい物だ、と筆者は思っている。
いわゆる「性的少数者」の生命倫理の底の浅さを露呈させたバラエティ番組があった。性的少数者とは、同性愛をはじめとした、渋谷の条例の恩恵を受ける人たちのことだ。
TBSのバラエティ番組「私の何がイケないの?」は5月25日、「LGBT問題第2弾!!」と銘打つ特集を組み、レズの「同性婚」カップルが出演した。元タカラジェンヌのカップルと、芸能人カップルの2組だ。同性婚と言っても、日本では法律で認められているわけではないから、式を挙げて同棲しているだけだが、2組ともしばしばメディアに登場しており、同性カップルの“広告塔”のような存在になっている。
1年前に放送された第1弾にも、元タカラジェンヌ・カップルが出演しており、この夜の放送はその続きである。2人は前回、「知人のゲイから精子の提供を受けて自分で人工授精する形を考えている」と公言し、ゲイカップルと一緒に子育てする計画だと語っていた。これだけでも親子関係を混乱させる無謀な願望だが、さらに戦慄(せんりつ)を覚えたのは、スポイトを使って自分で授精させると平然と言ってのけた時だ。わが国では未婚女性は第三者の精子を使った生殖補助医療は受けることができない。
◆授精計画に甘い認識
これまで2組のゲイに精子提供を断られ、現在3組目のゲイに「オファー」を出している最中だとか。この異様な“妊活”について、スタジオの芸能人から「『ほかのお父さんとお母さんは男と女なのに、どうしてうちは女と女なの?』と、子供が疑問を持ち始めた時に、どう説明しますか」と、生まれてくる子供のことを心配する声が出た。
これに対して、カップルは「レズビアンが子供を生んだらかわいそう、いじめられたらどうするんですかという声自体が、その子たちがかわいそうだと思う」、あるいは「マイノリティーが子供を生んではいけないというのはおかしいと思います」と反論する。
第1弾の放送のあと、番組には「子供を愛する全ての人に生む権利はある」「子供がほしいというのは二人のエゴじゃないか」という賛否両方の声が寄せられたというが、スポイトを使って自分で授精させようという計画に、スタジオから疑問を呈する声が出なかったのは不思議だった。
外国には、ゲイやレズに育てられている子供がいるから、もし子供が生まれても人工授精について、子供の心を傷つけないように説明できると考えているようだが、現実はそう甘くはない。彼女らの計画を聞いて、筆者は1年前に出版された本を思いだした。『AIDで生まれるということ』(萬書房)がそれだ。
◆苦悩を証言する子ら
AIDとは夫以外の第三者から提供された精子を用いた人工授精のことで、本はAIDで生まれた人たちの体験集。その中に次のような苦悩の声がある。
「私は未だに自分が生まれたことを仕方ないと思えていません。よくも人の手で勝手につくったなと思っています。生物の命の営みは自然の中で行われるべきだと思っています」「人の尊厳を大切にしていない技術で生まれたことをよかったとは思えません」(40代女性)
「それでも子どもは、自分が他の人とは違って、人工的につくられた、特殊な人間だということを背負って生きていかねばなりません。私は自分を、人と人との関係の中で生まれてきたのではなく、人と提供されたモノからつくられた、人造物のように感じています」(50代女性)
「つくって可愛がる、愛するという状態が、ペットを飼うのと同じ状態に感じるんですよ」(40代女性)という胸を突き刺す訴えもあった。
AIDで生まれた人は、その事実を知らされないまま成長する場合が多い。前述の女性カップルは、ゲイから精子提供を受けたことを子供に伝えるから心配ないと反論するかもしれないが、生命倫理の観点からは、常軌を逸した考えである。
自分たちを弱者の立場に置いて人権尊重を主張する前に、スポイトを使って“つくられる”子供が抱えるであろう苦悩に思いを馳(は)せるべきではないか。
(森田清策)