ネット時代に流出する個人情報のビジネスを特集したダイヤモンド

◆気味悪さ感じる電話

 今や日常茶飯事になった感があるが、ある日突然知らない企業や団体から電話がかかってくることがある。聞いてみると生命保険の勧誘から不動産、投資会社の売り込み、選挙の投票依頼など、「なんで私の電話番号を知っているの」と思いたくもなるが、気味の悪さを感じさせることしきり。聞くところによれば、世間ではそうした個人情報なるものが本人の知らないところで行き交い、しかもそれが頻繁に売買の対象になっているという。例えば、昨年7月ベネッセコーポレーションの進研ゼミのサービス顧客情報が流出し、それらの名簿が売買されていたという事件があったのは記憶に新しい。

 こうした「個人情報」をテーマに週刊ダイヤモンドが4月25日号で、ビジネスという側面から特集を組んだ。題して、「あなたの情報いくら?」。「個人データに群がるビジネスの裏側」とサブ見出しがついている。

 確かに、同誌の特集を見ると世間でいうところの「情報はカネになる」という意味が理解できる。とにかく我々の身の回りには情報がいっぱい。無数のアドレスやメールを取り込んだ携帯電話・スマートフォン。コンビニ・スーパーのポイントカード、銀行・クレジットカードから病院の診察カードなど、すべてが情報化されて詰まっているという状態だ。ただ、それらの個人情報は持っている本人に対してカネになるのではなく、無数の個人情報を様々な手段を通じて取得した企業が、IT(情報技術)を駆使し、「商品の提供」あるいは「広告関連の収入」としてカネを生み、業績を伸ばしていくというのである。その代表格はフェイスブックであり、グーグルであろう。

◆個人情報保護に不安

 同誌は次のように語る。「もともとネット広告は新聞やテレビと同じように『広告枠』を売るというビジネスモデル(バナー広告)から始まった。それが、グーグルが検索ワードに連動した『検索連動型広告』を始め、…すると今度は、さらに興味や関心を探るため、ウェブ観覧履歴やサービス利用履歴などの要素を加味、…ネット企業は広告の精度を上げていった」とインターネットに使った広告ビジネスの広がりを説明し、さらに最近ではフェイスブックやツイッターといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の登場によって「より個人の行動に合わせたターゲティング広告」を実現していると説く。

 すなわち、「SNSの会社は無料をうたい文句に利用者を呼び込み、これまで取得が難しかった実名のプロフィールや友人とのつながりといったプライバシー色の強い情報をユーザー自らに登録させ吸い上げることに成功、併せてユーザーの投稿内容を蓄積。個人の関心や当時の感情など、より個人の欲求が分かるデータを集める仕組みを整えたのである」と分析し、その精度の高い個人データを使って効率的な広告ビジネスを展開することができたと語る。現在、業界では「個人データを制する者がビジネスを制す」といった言葉が蔓延(まんえん)するほど個人データの争奪戦が激化しているとも。

 問題は、膨大な情報が行き交う中で私たちの個人情報をどのように守ることができるのか、ということ。すでに2005年4月に個人情報保護法が施行され、個人の情報は法律で守られることになっているが、それでも不安が付きまとう。

◆お手上げのダイヤ誌

 週刊ダイヤモンドは、「情報を取られたくなかったら、インターネットを利用しないこと」と結論付け、その上で「インターネットやスマホを“捨てる”のではなく、むしろスマホなどの無料アプリケーションを利用して、「個人データを活用するのが現実的な付き合い方かもしれない」というのだった。

 便利なアプリが次々と開発され、個人のデータがほとんどスマホで管理できるようになった昨今、個人情報がすべて抜き取られていると感じざるを得ない状況になっている。そうであれば、なおさら個人の情報は保護されなければならず、情報流出などという事態は決して起こってはならず、法律でオプトアウト(個人情報の第三者提供に関し、本人の求めに応じて提供を停止すること)を厳格化することも必要となろう。

(湯朝 肇)