「黒田日銀」金融緩和2年、「短観」足踏みで各紙に日銀への注文目立つ
◆論評テーマは3通り
新年度がスタートした。経済面では税制が変更になったり、年金額が変わったり、食料品などの一部ではまた値上がりもした。今年4月は消費税増税から1年、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁による「異次元」金融緩和から2年でもある。その日銀からは1日に、3月の短観が発表され、景気が製造業を中心に足踏み状態であることが示された。
新聞各紙は社説でそれぞれに、こうした節目に当たってのテーマを取り上げ論評している。増税による景気への影響が長引き、政府への注文もさることながら、大胆な金融緩和を続ける日銀の姿勢に対しても、それ以上に厳しい指摘が目立った。
日付順に各紙社説を並べると、2日付で読売「日銀短観足踏み/景気回復の持続力が問われる」、毎日「消費増税1年/低所得者対策が必要だ」、産経「消費税増税1年/経済再生へ消費底上げを」、4日付で朝日「黒田緩和2年/拡大続行よりやめ方を」、東京「異次元緩和2年/目標未達の説明果たせ」、本紙「国内景気/内需振興策の充実で回復図れ」である。
これらからも明らかなように、読売と本紙は短観をテーマに景気の振興を語り、毎日と産経は消費税増税から必要な対策を取り上げ、朝日と東京は「黒田」「異次元」緩和に問題点を投げ掛けた。
各紙の論評テーマは三つに分かれたが、根底で共通していると言えるのは、「増税で減速した景気が回復する歩みは、まだ弱い」(読売など)ということである。
◆消費底上げ説く産経
読売は円安や原油安といった「市場環境に恵まれている間に、民間需要の拡大を図り、自律的な成長につなげていく必要がある」として、政府に「アベノミクス」の着実な推進と、民間活力を引き出す規制緩和など成長戦略の強化を訴えた。本紙は国内需要、特に消費の拡大が不可欠として、賃上げがどこまで波及するかに注目し、またいわゆる「プレミアム商品券」の充実を訴えた。
毎日が必要と訴える「低所得者対策」とは、消費税で食品など生活必需品の税率を低くする軽減税率の導入である。同紙は、日本は財政赤字が先進国で最悪の水準のため消費税は必要だが、所得が低い層ほど負担が重くなる「逆進性」の問題があるので軽減税率が不可欠との指摘である。同時に無駄な歳出の削減も、「増税に対する国民の理解を得る条件」として「怠ってはならない」と強調する。
産経も同様に、「消費底上げ」へ軽減税率の導入など「細やかな目配りが不可欠」と指摘。さらに読売同様、成長戦略の具体化を進め、企業の収益増を後押ししてほしい、とした。尤(もっと)もな指摘である。
同紙の一番の主張は、安定的な社会保障財源の確保と財政再建には再増税が欠かせないが、その2年後の円滑な実施に向け経済環境を整えなければならず、「日本経済を回復軌道に戻すことが急務だ」ということで、そのための「消費底上げを」なのである。
さて、日銀への注文、課題だが、消費増税をテーマにした毎日は、金融緩和政策で国債の金利が低水準で推移しているため、「巨額の借金への危機感が薄くなっているのではないか」と、財政規律を緩ませている点を指摘。
短観を取り上げた本紙は、今以上の円安は輸入原材料価格をさらに引き上げ、実質賃金にもデメリットであるとして、「柔軟な対応を」と一段の金融緩和に走ることにクギを刺した。
そして、2年の異次元緩和そのものをテーマにした朝日、東京。朝日は緩和をやめた場合に予想される金融市場へのショックは不可避として、ショックを和らげる終了に向けた方法、いわゆる出口戦略の検討を促した。
◆まだ論評がない日経
東京は、「2年で2%の物価上昇」の目標を達成できなかったことの説明責任を求めるとともに、「大事なことは、力ずくの金融政策で物価を上げることではない。国民の暮らしに配慮しながら、達成目標時期の柔軟な変更も含め、経済全体を見据えて対応する」ことを求めた。両紙とも、反安倍政権の姿勢から「アベノミクス」の一翼を担う日銀への批判は若干割り引く必要はあるが、一理ある。
経済紙日経に、こうしたテーマでの論評はまだない。どういう理由からか。不思議である。
(床井明男)





