原発廃炉で規制委の40年規制は認めても更新は認めない朝日の矛盾

◆改修採算合わぬ5基

 運転開始から40年前後経過している原発5基の廃炉が決まった。東京電力福島第一原発の事故後、原子力規制委員会が原発の運転期間を原則40年とする新たな規制基準を設けてから、初めての廃炉決定である。

 廃炉が決まったのは関西電力の美浜1、2号(福井県)、九州電力の玄海1号(佐賀県)、中国電力の島根1号(島根県)、日本原子力発電の敦賀1号(福井県)。これにより、日本の原発は48基から43基に減少する。

 原発は1度だけ最長20年の延長が可能だが、期限までに設備状況を調べる特別点検を行い、規制委の新規制基準に基づく適合性審査に合格する必要がある。廃炉の5基はいずれも出力が小さいため、多額の費用をかけて改修しても採算が合わないとの判断からである。

 廃炉決定を社説で論評したのは、朝日、読売など5紙。日付順に並べると、18日付朝日「『脱原発』を見すえてこそ」、19日付産経「40年運転規制は理不尽だ」、20日付読売「円滑な実施へ環境整備を急げ」、22日付日経「課題のりこえ老朽原発の廃炉を着実に」、23日付東京「再稼働の口実にするな」である。

 最も力が入っていたのは、大社説で掲載した朝日。

 廃炉で問題になるのは、使用済み核燃料と放射性廃棄物をどこに置くか決まってないことや、20~30年と長い時間と数百億円かかるという巨額の費用を誰がどう負担するか、また廃炉で交付金が打ち切られる原発立地自治体への支援をどうするか、などといった点。他紙も同様に言及しているが、朝日はより字数を尽くして課題を明らかにしている。

◆安定供給の視点なし

 もっとも、朝日が産経、読売、日経と明らかに違っているのは、その捉え方である。朝日は、これらの山積する課題を克服し「廃炉できる国」にしていくことは、「脱原発を着実に進める前提にもなるはずだ」と強調する。

 確かに、長い目で見ればその通りなのだが、重要なのは太陽光発電など再生・新エネルギーの進展・開発状況をにらみながら、いかに安定した安価なエネルギーを供給し続けられるかという視点であるが、朝日には、いつもながら、これがない。

 さらに、40年原則を是とし、それを決めた規制委に何の疑義も挟まない中で、再稼働などを審査する規制委の合格結果については認めない自己矛盾である。

 朝日も認めるように、廃炉の道筋を整えることは一面で、「原発を更新しやすい環境をつくることにもなる」。その通りである。

 しかし、同紙は「福島第一原発の事故を思えば、脱原発につなげることにこそ、廃炉を進める意味がある」と、理性的ではなく感情論から脱原発に志向してしまう。最新の知見を総動員して客観的に再稼働や更新を審査する規制委の意義を認めないのである。別な表現をすれば、規制委を自分の都合の良いように使っているということである。

◆増設求める読売など

 読売が指摘するように、政府は原発を今後も「重要電源」として活用するとしているから、「老朽化した原発を廃炉にする一方で、新増設も必要」であり、今夏をめどに原発を含めた最適な電源構成を定める中で、「新増設の方針を明確に示すべき」であろう。

 同紙はまた産経とともに、40年を超えて運転する際の審査期間が短すぎる問題を挙げる。今の制度では満40年の15カ月前にならないと規制委に運転延長を申請できないからだ。

 再稼働に向けた安全審査が長引いている現状では、読売や産経が懸念するように、延長の審査も15カ月では終了せず、廃炉に追い込まれるケースが出てくる可能性が否定できない。

 産経はさらに、「延長は最大20年だが、何年認められるかは、見通せない。決定は規制委にゆだねられる。これでは電力会社は、経営計画を立てられない」と指摘する。読売、産経はこうした制度の改善を急ぐ必要があると指摘するが、同感である。

 東京の「再稼働の口実に…」は、朝日と同様、「四十年寿命、廃炉は法が求める当然の措置である」としながら、再稼働に向けた審査を行う規制委の存在意義を認めない、一部都合の良い、矛盾した論旨である。

(床井明男)