北陸新幹線に観光など前向きの視点と延伸前倒しに懸念を示す各紙

◆日経が魅力発信期待

 東京―金沢が乗り換えありの3時間50分から乗り換えなしで最短2時間28分に、東京―富山が2時間8分と大幅に時間を短縮して結ばれた。長野―金沢間が14日に延伸した北陸新幹線の開業で、首都圏と北陸がぐっと近くなったのである。

 北陸新幹線の開業は、観光やビジネスでの人の流れを大きく変える。各紙はこのテーマを中心に、開業で沸き上がる北陸ブームを一過性のものに終わらせない工夫を求める論調を展開した。

 石川、富山、福井の北陸3県はもともと有数の観光資源に恵まれており、観光振興への言及には力が入るが、海外まで視野を広げ具体的に外国人観光客誘致に地元の努力を求めたのは日経(社説14日)、読売(同)、小紙(同)の3紙だった。

 日経は「開業効果を北陸の持続的な成長につなげる取り組みが欠かせない」として、観光と経済の2本柱を論点に論じた。その中で「海外からみた場合、北陸の存在感は小さい」として3県への外国人の延べ宿泊者数が「50万人弱と全国の1・5%程度にすぎない」ことを指摘。まだ伸びシロは十分で「官民が協力して様々な広域観光ルートを整え、国内外から繰り返し訪れてもらえる地域に生まれ変わる」ことを求めたのである。海外から人が押し寄せる2020年東京五輪を控え、日本で最も暮らしやすい地域と折り紙の付いた北陸の魅力発信は、日本の魅力をパワーアップさせる。

 それだけに、前向きのよい視点を示したことを評価されていい。同様の視点は読売も「地元自治体が協力し、県境を越えた広域観光ルートなどを開発してはどうか。海外への情報発信を充実させ、外国人客の取り込みにも力を注ぎたい」と論じた。

◆観光誘客で地方創生

 小紙は、開業を観光立国と地方創生につなげることが大切と説いた。2020年に訪日外国人2000万人を掲げる政府目標の実現には、外国人観光客らの地方誘客が不可欠となる。開業で「東京を訪れた外国人観光客が北陸に容易に足を伸ばせるようになれば、これまで京都・大阪などが主だった地方観光の選択肢が広がり、新たな魅力発見につなが」るとその意義を強調。「開業を観光立国を一層推進するきっかけにすべきである。地元は外国人観光客の受け入れ態勢整備に、さらに力を入れ」るよう求めたのである。

 一方で、北陸新幹線開業に沸き高揚する中で、金沢から先への建設計画前倒しについて懸念を表明したのは産経(14日主張)と読売、朝日(15日社説)である。

 もっとも朝日は「金沢―福井間は20年度に先行開業することが検討されている。ただ、列車の折り返し施設が必要で、新たに250億円かかるという」と解説するだけで、はっきり懸念を示したわけではない。

 産経は「地元の期待は大きいが、費用対効果を精査しなければ国民の理解は得られないことを忘れてはなるまい」。読売も「敦賀延伸後は使わなくなる恐れのある施設を作ってまで、開業を前倒しするのか。/厳しい財政事情を踏まえ、費用対効果を慎重に検討すべきだ」と、費用対効果の検討を求めることで懸念を示したのである。

◆三セク在来に提言を

 華やかな開業の光があれば、その影も出る。第三セクターの問題を指摘したのは読売、朝日、毎日(13日社説)である。今回の開業で、北陸線など長野―金沢間の並行する在来線はJRから第三セクター4社に分割・移管となる。読売は「追加の財政支出を抑えながら、大切な『地域の足』をどう存続していくか。過疎化を食い止めるためにも、知恵の絞り所である」と問題提起した。

 朝日も「(第三セクター)3社が運賃を値上げし、富山―金沢間は1・25倍の1220円になった。東京が近くなっても日常の移動手段が細っては何にもならない。地域全体で三セクを支える努力が欠かせない」と指摘。毎日も「赤字が続けば地元自治体の財政を圧迫する。運賃の引き上げや利便性の低下は、人口流出を加速させることにもなりかねない」とした上で「(新幹線と)表裏の関係にある並行在来線の問題も含め、今後、公共交通網をどうしていくのか、総合的な議論が急務だ」と結んでいる。

 地方創生とも関連する重要な問題提起だが、地域の努力を言うだけではとても展望が開けまい。新聞も、もっと踏み込んだ分析を行い、具体的な提言をすべきである。

(堀本和博)