内閣府世論調査が示した朝日長年の反自衛隊反日米安保論調の敗北
◆初報は黙殺した朝日
内閣府が「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」を発表した。それによると、自衛隊について「良い印象」と答えた人は92・2%、日米安全保障条約が日本の平和と安全に「役立っている」と考えている人は82・9%で、いずれも過去最高を更新した。
これを産経と本紙は8日付の1面トップで、「島嶼防衛など74%期待」(産経)、「『中国の軍事力に関心』60%超に」(本紙)、読売、毎日、日経は中面で「『自衛隊増強を』29・9% 5ポイント増 過去最高」(毎日)などと、今回調査の特徴を捉えて報じている。
自衛隊と日米安保は戦後、長く論争の的となってきた。共産党や旧社会党などの左翼勢力は自衛隊を違憲と断じ解散せよと声高に叫んだ。日米安保破棄は今なお、彼らのお決まりのスローガンだ。だが、自衛隊も日米安保も国民から圧倒的支持を受けている。このことを内閣府の世論調査は改めて示した。
では、左翼のオピニオンリーダーを自負する朝日はこの調査結果をどう報じるのか。興味深く8日付の紙面を繰ってみたが、驚いたことにどこにも記事が見当たらない。長年、自衛隊違憲論に与(くみ)し、日米安保に否定的論調を張ってきた朝日にとっては報じたくない調査結果だったかも知れないが、いくら何でも黙殺はひどすぎる。
こう思っていると、1日遅れの9日付中面で「自衛隊の海外活動 『現状維持で』65%」との見出しで報じた。どうやら1日がかりで、“朝日らしい”調査結果を拾い出してきたようだ。
◆苦し紛れの結果選び
記事は国連平和維持活動(PKO)や国際緊急援助活動について「現状の取り組みを維持すべきだ」との回答が前回調査(2012年)より4・1%増え65・4%となったことを強調し、国際貢献の拡大を目指す安倍内閣を暗に牽制(けんせい)している。
とは言え、この「現状維持」の調査結果も長年の朝日の主張を覆すものと言ってよい。1992年にPKO協力法が国会で論議された際、朝日は「自衛隊の海外派遣に道を開く」として共産党や旧社会党と歩調を合わせて猛反対し、それ以降も異を唱え続けた。
自衛隊のイラク派遣に際しては「声欄」に「兵士の墓標」を連想させるイラストを掲載し、自衛官と家族を愚弄(ぐろう)したこともあった(2004年2月1~4日付)。
だが、こういう朝日の反自衛隊論調に国民は与しなかった。今回の調査結果では国際平和協力活動に「取り組むべきでない」はたったの1%にすぎない。「これまでの取り組みから縮小すべき」も4・6%という少なさだ。朝日の従来の主張に反して国民の圧倒的多数は自衛隊の海外派遣の維持を望んでいるのだ。
また、調査結果では自衛隊への期待でトップだったのは「災害派遣」(72・3%)だが、その災害派遣の足を引っ張ったのも朝日だ。革新自治体には災害訓練から自衛隊を排除したところもあった。神戸市は、自衛隊との共同訓練を一度も行わず、阪神大震災(1995年)で被害を広げた。
◆浮いた災害派遣批判
三宅島噴火(2000年6月)では自衛隊は全島民の避難を速やかに行うため大型輸送艦『おおすみ』を派遣した。ところが、朝日は「『おおすみ』は、形が空母や強襲揚陸艦に似ていることから、就航当初、批判を受けた。救助活動で批判がかわせるとの思惑もちらつく」(同6月28日付)と筋違いなことを書き、島民を呆れさせた。
この島民避難を教訓に自衛隊は同年9月の東京都総合防災訓練に初めて本格参加したが、朝日は「自衛隊が前面に出たものものしい訓練には『防災に名を借りた軍事演習』との批判の声も上がった」と、左翼の声を代弁し、「備えは自衛隊 憂いあり」と、自衛隊を「憂い」と言い放った(同9月4日付)。
東日本大震災では海上自衛隊の大型ヘリ搭載艦「ひゅうが」が救援活動に活躍したが、「ひゅうが」導入に際して朝日は「軽空母とどこが違うのか」(2000年12月14日付)、「『買い物』は何のため」(同26日付社説)とクレームをつけていた。
こんなふうに朝日の反自衛隊記事は枚挙に暇がない。それでも大半の国民は自衛隊に好印象を抱いている。朝日の敗北は明白だ。
(増 記代司)