戦後70年談話へ朝日を除き視野、視点が幅広く多彩、多角的な各紙
◆反日宣伝に拠る朝日
「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」(21世紀構想懇談会)という何とも長ったらしい名称の会議が先月25日に初会合を開き、注目を集めている。安倍晋三首相が今夏発表する戦後70年談話に、懇談会の活発な議論がその素材となるからである。
懇談会のメンバーは学識経験者や経済人、外務省OB、メディア関係者など16人。座長に西室泰三・日本郵政社長、座長代理に北岡伸一・国際大学学長が就任した。メンバーには保守の論客である中西輝政・京大名誉教授が入り、「新日中友好21世紀委員会」日本側座長を務めた西室氏が座長となるなどなかなかバランスをとった構成である。
先月の会合で安倍首相は論点の柱として、次の5点を挙げた。①20世紀の経験からくむべき教訓②戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献の評価③米中韓などとの間で歩んだ和解の道④21世紀のビジョン⑤戦後70年に当たって取るべき具体的施策――である。その上で「未来への土台は過去と断絶したものではあり得ない」と語り、先の大戦の反省を踏まえ、過去・現在・未来とつながる日本が目指す将来像の検討を要請したのである。
さっそくこれに反応して論調を掲げた各紙をウォッチしてみた。
「国内外から評価される談話づくりに向け、バランスのとれた議論を期待したい」と当たり障りなく書きだした朝日(社説2月26日)だが、戦後70年談話では「(村山談話を)全体として引き継ぐと掲げながら、植民地支配や侵略といったキーワードを村山談話もろとも棚上げにしてしまうのが談話の目的ならば、出すべきではない」と、村山談話キーワード原理主義を突きつけた。その論拠を問題の普遍的、本質的基準に求めるのではなく、先の国連安保理の討論会で行った王毅外相(中国)の日本牽制(けんせい)発言(プロパガンダ)に拠(よ)っているところがいかにも朝日らしい。
◆中国に啖呵切る毎日
毎日(社説同27日)も70年談話については、村山談話にこだわりを示した。「もしも、村山談話の核心的な表現を薄めるために、20世紀の教訓が語られるとしたら、70年談話は日本の国際的な立場を強めるどころか、無用な反発を招き寄せてしまう」と危惧。その上で「未来への土台は、過去と断絶したものではあり得ない」と語った安倍首相の「その言葉通りに過去に対する認識を揺るぎないものにすべき」と主張している。
一方で毎日は、朝日が活用した王毅演説にも言及。こちらは朝日とは逆に「国連で中国の王毅外相は『いまだに過去の侵略の罪をごまかそうとする者がいる』と演説した。中国が歴史を過度に政治利用し、自国の利益に結びつけようとするならば、日中関係を傷つけるだけだ」と啖呵(たんか)を切った。そして「日本は中国の挑発に乗ることなく、欧米や東南アジアの各国を味方につけるような国際世論の形成に努めるべきだろう」と70年談話の役割を説くのである。
日経(社説同26日)は村山談話を「過去の日本の行為を考えれば、これらの表現が行き過ぎとはいえない」とし、小泉談話が国連平和維持活動(PKO)などで世界平和などに積極的に貢献したと強調していることを指摘し「過去の反省を巡りあつれきを生まなかったから、こうした姿勢が評価されたのだろう」と解説。「積極的平和主義だけが突出した安倍談話にしないようにすべきだ」と結んだ。
◆冷静な対応説く読売
産経(主張同27日)は今回の70年談話構想にあたり、有識者会議を設けた安倍首相の手法を評価し「示唆に富んだ論点が提示されること」に期待を示す一方で、村山談話が「終戦の日」に唐突に閣議に出されたことに言及し「内容、手順ともに問題があった」と批判。「歴史にはさまざまな見方があることを無視する態度はおかしい」「若い世代を含め、自虐的な歴史観を迫られ、国民が萎縮するような内容の談話が、いつまでも受け継がれるべきではない」と明快な主張を展開した。
戦後50年(村山談話)や60年(小泉談話)当時に比べ、日本周辺の国際環境が大きく変化したことを指摘したのは読売(社説同26日)。「戦後70年の今年、中国は反日宣伝を本格化させており、首相談話も歴史をめぐる宣伝戦に組み込まれようとしている。こうした国際情勢も踏まえ、冷静で戦略的な対応が安倍首相には求められる」と説き、懇談会には「多角的な議論の展開」を求めたのである。
朝日を除く各紙の視野、視点は幅広く多彩、かつ多角的で示唆に富んでいる。
(堀本和博)










