秘密保護法や共謀罪に反対の朝日と毎日にテロ対策を語る資格なし

◆邦人殺害で両紙社説

 過激組織「イスラム国」によって日本人2人が殺害された。「痛恨の極み」(安倍晋三首相)の最悪の結末だ。テロリストは今後も容赦なく日本人に矛先を向けてくる。2020年には世界の耳目を集める東京オリンピックを控えている。わが国のテロ対策は今のままでよいのか。根本的に問い直すべき時だろう。

 今回の事件は国際連携の重要性を浮き彫りにした。朝日1月26日付社説は「暴挙に立ち向かう連携を」と言う。テロ集団がヨルダンに収監中の死刑囚の釈放を要求したためヨルダン政府との連携が欠かせなくなったからだ。

 朝日は「ヨルダンに限らず、トルコやイラク、サウジアラビアを含む湾岸諸国など周辺の国々との連携を深める努力も欠かせない。…過激思想に触発された者たちによるテロの脅威に直面した欧米社会にとっても、『イスラム国』への対処は喫緊の難題だ」とし、「多くの国を巻き込んだ協力態勢」の構築を促した。

 確かにその通りだが、ではそのために何をすべきか。このことについて朝日は述べない。毎日社説「許せない冷血の所業だ」(26日付)は「世界中がテロ防止に知恵を絞る時だ」と強調する。が、具体論は語らず、自ら知恵を出すことはなかった。

 この朝毎の論調には今さら何を言っているのか、と思わざるを得ない。テロに立ち向かう国際連携や知恵はすでに提示されてきたはずだ。よもや忘れたとは言わせない。

◆支離滅裂な反対論調

 それは1996年7月に開催されたリヨン・サミットの「テロリズム撲滅宣言」だ。中東パレスチナでテロが相次ぎ、前年にはわが国で無差別テロ(地下鉄サリン事件)が起こった。悲劇を繰り返さないために宣言が出され、国際社会はテロ撲滅を誓った。

 9・11事件後にもテロ対策は幾度も提起された。国際テロはネットワーク化しており、それを防ぐには国際連携とりわけテロ情報の共有が重要とされた。例えば、テロ関与などが疑われる人物の入国を防ぐため、犯罪者の指紋データベース情報を互いに即時提供する協定(PCSC協定)を結ぶ。同協定は日米間で2013年に締結された。

 ここで各国の当局が懸念したのは情報流出だった。他国に流したテロ情報が洩(も)れれば、そこを突かれて逆にテロを呼び込みかねない。だから情報共有には万全の保全体制が前提となる。ところが、わが国はそれが脆弱(ぜいじゃく)だ。実際、懸念が現実となった。警視庁は10年秋に国際テロに関する極秘書類100点以上をネット上に流失させた。

 これでは他国の情報提供は望めず、わが国はテロ情報の真空地帯に陥り、国際連携を崩す「弱い輪」になってしまう。だから特定秘密保護法が必要だったのである。

 ところが、朝日と毎日は常軌を逸した反対キャンペーンを今も張り続けている。それでいて今回の人質事件では対テロの国際連携を叫ぶ。支離滅裂と言うほかあるまい。

 またテロ対策は、犠牲者を出す前に封じ込めるのが鉄則とされた。マフィアなどの国際犯罪もそうで、国連は2000年、「国際組織犯罪防止条約」を採択し、テロなどの重大犯罪を計画・準備した段階で罪に問える「共謀罪」を設けることを義務付けた。03年に発効し、現在179カ国が批准している。

 わが国は2000年に同条約に署名し、03年の通常国会で承認されたので、政府は共謀罪を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を国会に提出した。だが、朝日と毎日が猛反対し改正案は潰(つぶ)された。未締結国は北朝鮮やイランなど国際社会と軋轢(あつれき)のある一部国家だけで、日本の未締結は国際社会の不信を買っている。

◆「弱い輪」産経が指摘

 ここでもわが国はテロ対策の「弱い輪」だ。これに対して本紙は何度も共謀罪の必要性を訴えてきた(14年8月25日付社説など)。産経は仏週刊紙襲撃事件を受けて1月18日付主張で「創設遅れが『弱い輪』生む」と論じた。

 ところが朝日は沈黙し、毎日は26日付メディア面で「自由を脅かす懸念」と相変わらず「表現の自由」を持ち出して異議を唱えている。共謀罪を設けるのは国際社会のテロ対策の知恵だが、毎日は事もなげに否定した。

 朝日と毎日にテロ対策を語る資格なし、だ。

(増 記代司)