アエラの安倍政権の原発政策は「具体的な道筋示せず」は偏った見方

◆国内48基稼働はゼロ

 アエラ2月2日号で「絵に描いた餅も描けない混沌/原発再稼働後に広がる不安」と題し、リード文で「再稼働したとしても、原発政策は八方ふさがり。原発維持に方針転換した安倍政権だが、具体的な道筋は示せずにいる」と決め付けている。

 「そもそも、国内にある48基のうち、動いている原子炉はゼロだという現実にまず向き合う必要がある。このうち、再稼働に向けて、新しい規制基準に合うような安全対策を盛り込んだ申請をしているのは21基。半数以上が再稼働に向けた申請をできていない状況だ」「そのうえ、発足から2年しか経っていない原子力規制委員会や、電力会社側のマンパワー、経験不足などが重なる」と厳しい現状を突き付ける。

 さらに原子炉の耐用年数が来ている廃炉問題、電力自由化による大手電力会社の経営形態の変化の可能性なども挙げる。原発本体の問題として「使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムは国内外に47㌧もある。国際的な疑惑を招かないためにも今後どうするか、施策を示さなければならない。再処理で出てきた高レベル放射性廃棄物の処分問題も解決のめどは立っていない。廃炉廃棄物の処分方法や基準も決まっていない」として、「原発政策は八方ふさがり」と断じている。

 その上で「(政府の)エネルギー基本計画では、原発依存度については可能な限り低減させるとしつつ、原発を重要なベースロード電源と位置づけた。ただし(中略)安倍政権も世論を気にして具体的な方針に踏み込むことができずにいる」と加えている。

◆日仏で廃棄物減研究

 果たしてそうか。民主党前政権が2012年9月に「2030年代に原発稼働ゼロが可能となるよう政策資源を総動員する」との方針を掲げたが、同計画では「燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、優れた安定供給性と効率性を有している」と、原発を4年前の事故以前と同様に活用していくことを明言している。

 また核燃料サイクルを従来通り推進する方針も明記し、原発から出る使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを加工して既存の原発で再利用(プルサーマル発電)することについて、「再処理やプルサーマル等を推進する」とした。

 高速増殖炉もんじゅについても「廃棄物の減容、有害度の低減、核不拡散関連技術の向上のための国際的な研究拠点と位置づける」とし、もんじゅの発電利用は断念しないとしている。実際、昨年5月の日仏首脳会談で両首脳は、民生用原子力分野での協力強化を確認。仏はナトリウムを冷却材に使った高速炉「ASTRID」の開発を進めており、両政府は日本の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)を活用し、放射性廃棄物を減らす研究を進めることをうたった。「具体的な方針に乏しい」というのは当たらない。

 記事でも指摘されたように、軽水炉に続いて高速増殖炉もすぐにでも成功するだろうというのは、今から思えば原子力関係者の間の少し甘い発想だったのだろう。しかし高速炉は軽水炉より能力は非常に高く、それだけに独特の難しさがあり、独自の技術体系を作っていかなければならない。

 原子核技術など先端技術の開発について、開発途上国ならば、出来合いの技術をそのまま導入したり、その国に合った技術に作り替えるというやり方も可能だ。しかし、高速増殖炉なり核燃料サイクルはまったく新しい科学技術に対するチャレンジ。しかも研究をいったん途絶してしまうと、その技術水準に復することすらままならない。また研究開発の進捗(しんちょく)状況に照らして計画を修正していく柔軟性は当然必要だ。にもかかわらず、記事で「(これらの)原子力政策はいまや『絵に描いた餅』さえ描けなくなっている」とするのはいかにも偏頗(へんぱ)だ。

◆国民合意必要な開発

 戦後、築いてきたわが国を世界の一流国に導いてきたエネルギー政策、環境政策に対し、原子力技術の開発なしに、その連続性を維持することは可能なのか、国民の関心はそこにある。

 まして今日の国家的規模の技術開発には巨額の投資が必要で、国民世論の合意、支援なくしては一歩も進まない状況だ。ハナから原子力技術の開発の無力を言い募るのは、国民をミスリードしているとしか思えない。

(片上晴彦)