民主代表選で「原点回帰」と党の再生を中心に多彩な主張をした各紙

◆信頼回復に読売注文

 細野豪志元幹事長(43)との決選投票になり、逆転で辛勝した岡田克也代表代行(61)が選出された18日の民主党代表選挙。代表となった岡田氏は「オール民主党ということを考えて、しっかりした人事をやる」と語り、政調会長に細野氏、幹事長に枝野幸男幹事長の再任などを骨格とする挙党態勢を構築する。

 民主党新代表に岡田克也氏選出――について各紙は、19日付で一斉に社説を掲載した。

 その論点は「原点回帰」と党の再生、についてを中心に多彩な主張を展開した。

 党代表選で「細野氏が『過去との決別』を訴え、より大胆な改革や世代交代を主張したのに対し、岡田氏は『原点回帰』を唱え、民主党の基本路線を踏襲する考えを示した」(読売)からである。

 だが、各紙が民主党に突きつけたのは、政権を担える政党としての綱領もなく、基本政策の明示もなく、寄せ集め集団のようにまとまらない、これまでの実態を前に、改革も目指さず「原点回帰」だけで党の再生ができるのか、という疑問である。

 そして、その前提に、まともな党としての文化を持つことを指摘したのが読売と朝日。読売は岡田氏の代表選出を「党の再生へ、急進的ではなく、穏健な改革路線を選択したのだろう」と分析。挙党態勢の構成も「保守系の岡田氏がリベラル勢力に配慮しすぎれば、党の政策や体質の改革が停滞する」ことを危惧した。その上で「論議を経た党決定に全議員が従う文化を」定着させることが必要で、集団的自衛権の行使など外交・安保政策の統一見解の策定や「アベノミクス」への現実的な対案提示を行うことなどの「改革なしには、失墜した民主党に対する国民の信頼を回復することはできまい」と結んだ。妥当な主張である。

◆朝日の穏健中道は左

 朝日も、まずは党再建への注力を求め「熟議を経て最後はリーダーの決定に従う。そんな政党文化をつくらなければ信頼回復は望めない」と、まともな責任政党の在り方から説く。その上で、党の骨である「個々の政策の土台となる明確な理念を示す必要」があるとした。

 だが、ここから先の主張は読売とは違う方向に巧妙に誘導する。民主党が昨年、報告書にまとめた理念「穏健中道」をタテにとり、原発稼働ゼロの道筋の提示や集団的自衛権の閣議決定撤回などについて「議論を深め、穏健な安保政策を追求してほしい」と期待を込めるのだ。タテにとった「穏健中道」に惑わされてはならない。その立ち位置は真ん中ではなく左寄りだから。

 毎日は「基本政策の集約が政権奪還に名乗りを上げる最低限の条件」だとして党としての「政策の統一を怠ってきた」ことを批判。これも朝日同様の立場から、集団的自衛権行使に対する姿勢などで見解の明確化を求めた。「演説で岡田氏が安倍晋三首相の憲法観や歴史認識と対峙(たいじ)し、対立軸を構築しようとする姿勢は評価できる」とエールを送るのだから、基本政策をどう集約し何を期待しているのかは言わなくても分かろう。

 これらの主張に対して、民主党の「政権を担える政党」への脱皮を国家の大局観から求めたのが産経と小紙である。

 産経は「岡田氏のいう『原点回帰』では説得力を持たない」と明確に批判した。代表選での3候補の時間をかけた論争は評価しつつも「この国をどうするという肝心のビジョンについて、十分に語られたとは言い難い」と注文をつけた。

◆国家像を求めた産経

 その上で、代表選の学生との対話集会で「民主党が安保政策を確立しなければ『与党をお願いしますとは言いにくい』と指摘」されたことを挙げ、「政権の受け皿に向けて新たな国家像作りに取り組み、安全保障など主要政策の方向性を早急に定める」ことを求めた。野党再編についても、与党のすることは何でも反対の共闘の在り方を批判し「野党第一党としての理念、政策の確立が先決だ」と説いた。「身を切る改革や政治資金規正で維新とともに具体案を出し」て与党に実現を迫ることの方が野党の重要な役割の一つだとし、現実的な政策への転換を求めたのである。

 小紙は政権交代には与野党間に「共通の価値観」が必要だが、代表選では「自民党との『違い』ばかりを競い合い、確固たる国家像はついぞ示されなかった」ことを批判。「政策を明示しなければ民主党に明日はない」と忠告したのである。

(堀本和博)