3・5兆円経済対策に「バラマキ」「効果に疑問」示す読売、日経、毎日
◆財政再建視野に置く
2015年が明けた。旧年は、経済面では17年ぶりの消費税増税の影響に明け暮れた一年だったが、今年はどんな年になるのか、また新聞はどう伝えるのか。今後ともご愛読に応えられるようウオッチし小欄執筆に取り組みたい。
さて、新年のスタートも、その消費税絡みである。政府は昨年12月27日に、3・5兆円規模の経済対策を決定した。消費税増税で不振が続く「個人消費のてこ入れと地方経済を底上げする力強い対策」(麻生太郎財務相)と言う通り、消費の喚起と地域活性化の方策が柱になっている。
この対策については、甘利明経済財政担当相も「財政再建をしっかり視野に入れながら対策を打っていく」と語る。経済対策を打つのに、なぜ「財政再建を視野に…」なのかと言えば、対策の裏付けとなる14年度補正予算案の財源が、今年度税収見込みの上振れ分と13年度予算の使い残し、つまり、新規の国債発行に頼らないものだからである。
経済対策に社説で論評したのは翌28日付で読売、産経、日経、29日付で本紙、30日付が毎日である。見出しを並べると、読売「地方バラマキの思惑はないか」、産経「再加速の足がかりとせよ」、日経「経済対策にバラマキの懸念はないか」、本紙「アベノミクス『加速』の意志だ」、毎日「必要性も効果も疑問だ」である。以上の通り、読売と日経、毎日は「バラマキ」の懸念や効果に疑問を呈し、産経と本紙はアベノミクスの「加速」に意味を置いた。
◆再増税に間に合うか
読売は景気の下支えの狙いは理解できるが、それを名目にバラマキ策が紛れ込む懸念が拭えないという。
同紙は、消費の不振が続き、また「アベノミクス」の恩恵が地方へ十分に及んでいない事実を認めながら、だからこそ、景気回復を優先して10%への再増税を先送りしたのであり、「それに加えて、景気対策を打つ以上は、当面の痛みを和らげる実効性の高い対策に絞り込むべきではないか」という指摘である。
今回の対策のポイントの一つ「地域消費喚起型」の交付金について、同紙は、政府が過去に実施した「地域振興券」の配布は「景気刺激効果が限定的だったと指摘される」として「今回も効果の検証が欠かせない」と強調する。もう一つの「地方創生型」交付金も、「中長期的に地域活性化に役立つ事業だけを支給対象にすべき」と手厳しい。
同紙の指摘は尤(もっと)もなのだが、2年余り後の17年4月には10%への消費税再増税が実施される。今度はいわゆる景気条項は付けない方針だから、余程のことが起きない限り再延期はない。中心的課題はそれまでに経済の好循環を形成しデフレ脱却を実現できるか、再増税に耐え得る力を付けられるかということである。
この点で、同紙が指摘するように、「当面の痛みを和らげる実効性の高い対策」――同紙はそれが何であるか明確に指摘していないが――という対症療法的な、別の言い方をすれば、それまでの穴を埋めるような対策だけで十分なのかということである。
もちろん、経済対策だけでなく税制改正を含めた成長戦略も、デフレ脱却への後押しをするわけだが、成長戦略はいわばじっくりと体質を改善していく、短期間では成果の表れにくいものである。平時ならともかく、2年余という限られた期間の中で間に合うかということである。間に合わなければ、4月以降の展開の二の舞い――景気は落ち込み、再度財政資金を使った経済対策の繰り返し――である。
「予算の使い残しは本来、国の借金返済に回し、財政再建に役立てるのが筋だ」との同紙の指摘も同様で、平時ならその通りでも、現状は違うのではないかということ。日経、毎日もほぼ同様である。
◆「再加速」求めた産経
その点で、産経が「脱デフレを確かにするためにも景気の下支え、再加速は急を要す」との指摘は、まさにその通りで、「再増税を延期した安倍首相に足踏みは許されない」(同紙)わけである。経済対策で「アベノミクス『加速』の実を挙げ」(本紙)よ、ということである。
東京は30日付社説で経済対策を含めた「アベノミクス」の一年を論評した。一理あるが、最終的には先の衆院選で自公を大勝させた国民へ「私たちはよく考えたでしょうか」と批判、愚痴をこぼす内容になっている。
(床井明男)