事件事故など今年の話題が多すぎ新年の展望が少ない文春「新年号」

◆朝日誤報で本領発揮

 今年も世界中で日々様々な事件が起こり、週刊誌は話題に事欠くことはなかった。国内の事件も多かったが、海外の話題も多く、特に中国、韓国の記事が目立つようになり、報道量も格段に増えた。一部の週刊誌は、芸能人から毛嫌いされるがごとくに外国の政府やメディアから「敵視」されることもあった。

 それだけ日本の週刊誌も“力”を付けてきた証左なのだろうが、まだまだ欧米の週刊誌に比べると質と影響力の点では及びもつかない。もっとも、日本と欧米では週刊誌の成り立ちや位置づけが異なるため、単純比較はできないが……。

 海外の話題が多くなったのは国際化が進んだせいもある。外交・国防問題はもとより、食料・食品の安全から観光、芸能まで、周辺国と日本のつながりは深くなっている。週刊誌が関心を向けるべき話題であり、これからも大いに取り上げてほしい。

 その一方で「大臣の首をとる」など政界を揺るがすスクープや、新聞など他メディアへの建設的批判も週刊誌の“使命”のひとつだ。今年は閣僚を辞任に追い込む報道や、大新聞の「誤報」追及など、週刊誌が本領発揮する場面も多々あった。

 週刊誌の「新年特大号」は既に年末には書店に並ぶ。そのため「新年号」とは銘打つものの、内容はその年の総決算になるのが普通だ。週刊文春(1月1・8日号)は“新春”らしい話題はほぼ一つもなく、「超特大ワイド34本、消えた女・男・事件」や「高倉健に養女がいた」など、新春特大号でなくともいい記事が並んでいる。これでお茶を濁して、年末年始の休みに入ろうというのは、ちょいと虫が良すぎる。

◆政権内部に移る関心

 ただ、来年を見通す記事として一つ取り上げるとすれば、池上彰氏の連載コラムだ。総選挙で「与党3分の2維持」という「大勝」をした安倍政権は、選挙中訴えていた「この道しかない」が支持されたとして、「安倍独裁」で「やりたい放題」してくるだろうと危惧する人が自民党内にもいる、と指摘している。

 そして、安倍政権の一番のアキレス腱(けん)になりそうなのが「沖縄」であると池上氏は診る。普天間飛行場の辺野古移転を進める自民党公認候補がいずれも選挙区では負けた。比例で復活当選したものの、住民は「ノー」を突き付けた結果になった。「移転が予定通り」進むのか。相当な抵抗が予想される。これは「対米関係に暗い影を落とす」ことになる。安倍政権はどう乗り切るのだろうか。

 ところが、その相手アメリカ、オバマ政権の「指導力に陰り」が出てきている。米中関係、中東問題など様々な変数があり、「アメリカとどのような関係を築いていくか。安倍政権が問われている」わけで、この指摘は非常に重要だ。

 週刊朝日(1月2・9日号)も「総力ワイド」として、細かい記事で誌面を埋めているが、一応トップ記事で「安倍自民大勝の死角」を取り上げた。「御厨貴(みくりやたかし)放送大学教授」と「松原隆一郎東大教授」による「国会通信簿」だ。しかし不思議なことに「辺野古」は一つも出てこない。日米関係も出てこない。

 この記事で注目できるのは、安倍晋三首相と菅義偉官房長官との関係に問題が生じてくる可能性に言及した部分。御厨氏は、「解散の決定から消費増税先送りまで(安倍首相が)自分で決めた。(略)今後4年間は自分のしたいことをしたい。そこで、菅義偉官房長官と目指す方向にズレが出てくる。(略)菅さんがどこまで付き合いますか」と見ているというのだ。

 「壊れていくとすれば内側。通常国会では原発再稼働や集団的自衛権が注目されるけど、閉会後の人事が最大のヤマ場だと思う」と御厨氏はいう。「菅さんが離れれば官邸は機能しなくなる」というのだ。確かに、菅長官の存在は安倍政権の要。とはいえ、着任2年になる。後任官房長官に誰がなるかによって、安倍政権の推進力は大きく違ってくるだろう。

◆定番の新年経済予測

 「2015年の日本経済を大胆予測」――。正月号にはこういう記事は必要だ。専門家へのアンケートをまとめたものだが、株価は2万円超え、年始に円高になるも、半ば過ぎには1㌦130円の予想も。賃金は上がるが、全体に波及するには時間がかかる。「アベノミクスが成功するためには、中長期的な課題に根気強く対処しなくてはいけない」と、まあ、当たり前の結論で記事を締める。

 新年も読者を楽しませ、役立つ記事を繰り出してほしい。もちろん、建設的提言も。

(岩崎 哲)