結婚の意義触れず「LGBTの声聞け」と無責任すぎる「ZERO」

◆甘い認識のコメント

 海外の有名歌手やスポーツマンが同性愛者であることを告白したとのマスコミ報道に接するたびに、当人たちは個人の性的指向を人前で語ることの下品さを考えないのだろうか、と思ってしまう。また、公の場で論ずべきでない話題をわざわざ取り上げるメディアの見識の無さにもうんざりする。

 深夜放送だからと視聴者を軽く見たわけではないだろうが、25日放送の日本テレビ「NEWS ZERO」が同性愛者をはじめとしたLGBT問題を特集した。それを取材した「LIFE」コーナー担当キャスター板谷由夏は「(LGBTが)自分らしく暮らしていけるよう、理解が求められています」と、軽々しくもコメントしていた。テレビの報道番組のキャスターなら、その意味するところを深く考えた上で発言すべきだが、番組内容を見た限りではこの問題への認識の甘さだけが際立っていた。

 LGBTについては、この欄でも過去に何度か取り上げてきたが、いまだになんのことやら理解できない人が多いだろう。改めて説明すると、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T=性同一性障害者ら)のことで、マスコミが「性的少数者」と呼ぶこともある。

 では、この人たちが自分らしく暮らせる社会とはどんな社会なのか。板谷は言及しなかったが、そこらを突き詰めると、当人らが求める同性婚の是非にいきつく。

 現在、日本の法律は、結婚できる条件を設けている。男性、女性それぞれに年齢制限があり、また男女間でしか認められていない。それをLGBTに対する差別だというのなら、結婚制度の意義を問い直し、法律を変える必要があるが、板谷はそんなことにはまったく触れなかった。

 番組では、20人に1人がLGBTだと説明していた。その根拠としているのが、電通総研が2012年に行った調査。LGBTが5・2%存在するという結果になったという。同性愛者の権利擁護に熱心なテレビ番組はこの数字を盛んに紹介しているが、その狙いはそれだけLGBTは多いのだと視聴者に印象づけることにある。

◆“同性婚”女性を取材

 「ZERO」によると、LGBT関連市場は「5兆円規模」という。その例として、同性カップル用の「結婚式プラン」を始めた京都のホテルや、4年前から式を挙げている寺などを取り上げた。

 その一方で、板谷は、昨年6月に東京都庁の展望室で式を挙げたという女性同性愛カップルの家を訪問。式を挙げても「(社会保障で)夫婦だったら受けられるものが受けられない」との不満の声を拾っていた。

 海外では、「同性婚」を法的に認める国がいくら増えたとしても、わが国は認めていないのだから、正式な夫婦に与えられる保障がこのカップルに与えられないのは当然のこと。それなのに、わざわざその声を伝える狙いは、日本も早く同性婚を法的に認めるべきだと言いたかったに違いない。

 板谷の報告の最後に、メーンキャスター村尾信尚が「同性同士が結婚して、幸せになることを制度として保障している国は、世界で18カ国ある」「(日本の)行政はLGBTの人たちの声に真剣に耳を傾けるべきだと、私は思いますけどね」と語った。なんと無責任な発言なのだろう。

 彼は、「外国のように同性婚を認めろ」と言っているのに等しいのだが、ならば男女の結婚制度の意義について自身がどう考えているのか、言及すべきである。

 わが国の憲法は、第24条で「婚姻は、両性のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有する」と明記している。これによって、結婚は男女間に限定されているというのが一般的な解釈だから、同性婚を認めるためには、憲法を改正しなければならない。一部人権派の識者の中には、憲法は同性婚を禁じていないとの主張がある。村尾と板谷は後者の考えに立っているのかもしれないが、誰もそんなことは言わない。

◆価値観の混乱が必至

 いずれにせよ、すでに指摘したようにLGBTの主張を突き詰めると、同性婚を容認するのか、しないのかという問題にいきつくのは間違いない。もし容認するとなると、学校教育の内容も大きく変える必要が出てくる。また、家庭に関する価値観の混乱、そこから社会秩序の崩壊も覚悟しなくてはならないだろう。「LGBTを理解しよう」「彼らの声に耳を傾けよう」などと聞こえのいいことを言って済むような問題ではないのだ。 (敬称略)

(森田清策)