朝日・毎日の反安倍政権キャンペーンの論調に審判が下った総選挙

◆ことごとく反対社説

 総選挙で与党が圧勝した。安倍路線にことごとく反対してきた朝日と毎日にとっては大敗北である。

 両紙は解散に大義はないとし、アベノミクスで格差が広がったと批判、安保問題では集団的自衛権や特定秘密保護法にも猛反対し、異様なまでのキャンペーンを張った。安倍路線にはことごとく異議を唱えたと言ってよい。両紙の論調は明らかに野党を後押ししていた。それにもかかわらず野党は勝てなかった。

 朝日は総選挙期間中に施行された特定秘密保護法について「ちょうど1年前、安倍政権は数を頼みに特定秘密保護法を成立させた。そして衆院選さなかの施行となった。世論を二分したこの法律がいま、改めて問われるべきだ」(10日付社説)と論じた。「数を頼みに」とは野党の常套(じょうとう)句で、横暴との印象操作だ。

 毎日は「歴史に照らせば、政府にうそはつきものだ。この法律がそれを後押しすることを懸念する」と、こちらは安倍政権をうそつき呼ばわりした(10日付社説)。

 安全保障政策では両紙とも「抑止力」にほとんど触れなかった。毎日9日付社説は、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題も争点だとし、先の知事選で移設反対の民意がはっきりしたとして「民意から目をそらすな」と移設に反対した。社説には中国の軍拡や西太平洋への進出など軍事的脅威については一字一句も書かれていない。これには目をそらしてしまっている。

◆共産をバックアップ

 安倍内閣が7月に集団的自衛権の行使を限定容認する閣議決定を行ったが、これにも両紙は猛反対した。共産党の志位和夫委員長は「日本を、殺し、殺される国につくりかえる憲法違反の閣議決定を撤回せよ」と主張したが、朝日や毎日もこれと似たようなことを言い続けてきた。

 例えば毎日11月16日付は、安倍首相が今年3月の防衛大卒業式での訓示で殉職に言及したとし、「政府が来春以降予定する集団的自衛権関連法制の議論の先には、『戦死』を巡る議論が待っている」と、「戦死」の見出しを掲げた。

 毎日12月12日付の「政策を問う」でも、「『犠牲』高まる現実味」「政策変更重ね 自衛隊『他国並み』に」と、「犠牲」を強調した。閣議決定は行使を限定的に容認するだけで、とても「他国並み」とは言えないが、毎日に掛かれば「他国並み」に格上げされ、「殺し、殺される国」に変貌させられる。

 記事には「(行使に)主要政党で明確に反対しているのは共産党と、『憲法9条の理念に反する』と主張する社民党の2党だけ」と書かれている。とすれば、朝日と毎日は共産党と社民党すなわち共産主義政党に与(くみ)したということか。共産党が躍進したのは朝日と毎日のおかげと言ってよいかもしれない。

 ちなみに毎日の世論調査は「集団的自衛権を行使することに賛成ですか、反対ですか」と聞き、限定的な行使容認とは言わない(8日付)。それでも男性は賛成45%、反対43%と賛成が上回ったが、女性は反対が多く全体では賛成35%、反対46%。これをもって毎日は安倍政権の閣議決定(繰り返すが、限定的容認)に国民は反対だとしている。

 エネルギー政策では、自民党は原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、国が前面に立って再稼働を積極的に進めるとしたが、朝日は反原発キャンペーンを張り続け、「原発回帰でいいのか」(11日付社説)と批判した。

 だが、朝日自身が認めるように「有権者に、衆院選で重視する政策を尋ねると、景気・雇用対策が47%。原発再稼働は15%にとどまる」(同)。朝日の反原発論調は(2年前の総選挙もそうだが)、国民に受け入れられなかった。

◆憲法改正批判も敗北

 憲法問題では朝日は「有権者から立てる問い」(11月22日付社説)や「立憲主義には逆らえない」(同30日付社説)などで改憲論を批判、「改憲意欲しのばせる首相」(12月5日付)と警戒感を露(あら)わにした。毎日も「隠れた主役ではないか」(11日付社説)とし、「改憲論議はいずれ戦争放棄を定めた9条に行き着く」と、ここでも「戦争」を持ち出した。

 このように総選挙での朝日と毎日の反安倍論調は際立っていた。それでも与党大勝の構図は崩せず、両紙の敗北も浮き彫りにした。

(増 記代司)