総選挙後新内閣の防災対策を示唆する新潮の「直下型地震」への警鐘
◆飯島氏予測は如何に
週刊誌は投票日を控えて、焦点選挙区やら話題の候補を取り上げて、お茶を濁すだけで、はっきりと当落予想は立てない。それよりも結果を踏まえた次の「総選挙総特集」に力を注いでいる。
そんな中、数字をはっきりと書いた記事がある。週刊文春に連載している小泉純一郎元首相の政務担当秘書官を務めた飯島勲内閣参与の「激辛インテリジェンス」(12月18日号)だ。政治記者でも必ず目を通すという同コラムで飯島氏はズバリ「自民党313議席、公明党32議席、与党で345議席」と予想した。
与党圧勝予測の要因として、「投票率過去最低」と「無党派層の棄権」「野党協力のまずさ」を挙げている。組織政党に有利な選挙戦だといっているのだ。同氏は公示前から「自民単独で三百議席も夢じゃない」と予測、「全メディアがその流れで追随」した。
さて、結果はどうなったのだろうか? 本稿掲載日には飯島氏の予測に“審判”が下る。
長野県北部を強震が襲ったのは11月22日だった。その後余震が続き、福島や茨城県でも地震が続いていたが、同25日には九州の阿蘇山が噴火した。9月の御嶽山噴火といい、日本列島の地下で何かが起こっているのではないかという不安がむっくりと頭をもたげる。
週刊新潮(12月18日号)で「京都大学の鎌田浩毅教授」が「日本列島の『地下』は今どうなっているのか?」を書いている。鎌田教授は、一連の地震や噴火は東日本大震災(以下、3・11)以降、直下型地震の起きる可能性が高まっており、その一環だと指摘する。
◆教訓生かす備え必要
小笠原諸島西之島での海底火山噴火も3・11と深いつながりがある。ともに太平洋プレートの活動によるもの、というのだ。「3・11で日本列島は東西に5㍍以上も引き延ばされてしまった。これによって生じた地盤の緩みを引き戻そうとして、活断層が活発化し、直下型地震が頻発するようになった」と説明する。
3・11以降、地下深部で地震が増えた活火山は「箱根山、浅間山、草津白根山、白山、焼岳、乗鞍岳など20ほど」あるといい、「次にどの山が噴火するのか、火山学者は固唾を呑んで見守っている」状況だと言う。
ほかに鎌田教授が注目しているのは「南海トラフ」だ。ここには「地震の巣、すなわち『震源域』が3つ」あり、東海、東南海、南海の地震域で、静岡県から四国沖まで連なっている。ここでの巨大地震は「90~150年周期」で発生しているといい、さらに超弩級(ちょうどきゅう)の地震が発生する可能性が高いというのだ。いわゆる「南海トラフ巨大地震」である。
その発生時期を正確に予測することは今の技術ではできないらしいが、「過去の経験則やシミュレーション結果を総合的に判断して、我々は西暦2030年代に起きると予測している」と述べる。穏やかな話ではない。
さらに首都圏にちらばる「活断層」にも注目する。その多くが「満期を迎えている」というのである。つまり、活発化するサイクルを1回りしているということで、直下型地震の原因になる可能性がある。
鎌田教授はこうして読者を散々脅かしながら、最後に「これらを想定しながら、インフラを整備し、あわせて防災意識を高めていく必要に迫られているのである」と記事を結んでいる。
東京直下型地震で中央防災会議は「2万3000人の死者と95兆円の経済被害が出る」と想定している、という。人的物的被害を減らす「防災」と同時に、被災後の生きている者の生活、負傷者の手当て、流通やエネルギーの確保、スムーズな救援・救済体制など、3・11で明確になった教訓を生かす備えが絶対に必要だ。
◆「自助」に痛い高齢化
総選挙で安倍自民党が「圧勝」した暁には、その盤石な基盤の上で、10年、20年、100年後を見据えた国造りを進めてほしいものだ。学者のできることは分析と予測だが、政治家はその上で対策を立てねばならない。
「自助、共助、公助」というが、年初の大雪でも明らかになった「自助」の部分が過疎や高齢化で難しくなっているところが全国には多くある。こうした所に満遍なく目を向けるのも政治家の役割だ。「経済」の他に「防災」にもしっかりと取り組んでほしいと思わされる選挙と地震の記事だ。
(岩崎 哲)





