野党に追い風を送ろうと「人間やめるか」の脅し文句出た「サンモニ」
◆反自民あの手この手
第47回衆院選は今日、投開票を迎える。今回の選挙では、新聞各紙が公示後に序盤情勢を掲載し、ほとんどが「自民300議席超」と報じた。
一方で、これらの情勢の流れを変えようと、公職選挙法に抵触しない程度に、あの手この手を尽くして必死になっていた番組があった。投開票を1週間後に控えた7日放送のTBS「サンデーモーニング」だ。
テレビの報道は言うまでもなく公正中立でなければならない。単に「投票に行こう」と呼び掛けるなら問題ないが、同番組では脅迫じみた発言が続き、穏やかではなかった。
最初にコメントした聖学院大学の姜尚中学長は「選挙に行くか、人間やめるか」と、まるで脅しのように視聴者に迫った。仮にもキリスト教系の大学の学長を務めている人間だとは思えない発言だ。
選挙で一票を投じるのは民主主義の根幹であり、国民の重要な権利である。ただ、選挙に行かないなら人間やめろとまでするのは言い過ぎだろう。
ちなみに、2012年12月に行われた前回の衆院選の投票率は59・32%だった。姜尚中氏は、前回投票しなかった約4割の人に対して「人間やめろ」と迫るのだろうか。
番組では他のコメンテーターも必死に投票に行こうと呼び掛けていた。それ自体は悪くない。選挙管理委員会も投票に行くよう呼び掛けている。
だが、その呼び掛けが特定の思惑を持っていたら、まったく意味が変わってくる。
◆情勢調査に抗う誘導
姜尚中氏は「人間やめるか」と発言する前に、投票率と自民党の得票数の関係を説明した。09年選挙では自民党が小選挙区で約2700万票を獲得し、12年では約2500万票だった。投票率が約10%も違うのに、というような内容だ。
確かに2000年以降の自民党は05年の「郵政選挙」を除き、小選挙区の得票総数が2400万票から2700万票ほどで推移している。そして、民主党が躍進した選挙は同党に追い風が吹き、自民党の得票総数は大きく変わらなかったため、相対的に自民党の得票率が下がった。
そうしたことから、姜尚中氏は「投票率が1%違うだけでかなり(結果が)変わる」と強調する。前後の言葉の意味から考えると、自民一強状態を崩し、野党に「追い風」を吹かすために選挙に行くよう呼び掛けているに等しい。公職選挙法に抵触しない範囲の巧みな誘導である。
しかし、今回の選挙は投票率が低くて与党有利との見方もある一方、「情勢調査が示すのは、民主党へのアレルギーの強さだ」(毎日新聞8日付)とする分析が多い。投票率が上がると野党の議席が伸びるとは簡単に言えない状況だ。
続いて発言した写真家の浅井慎平氏は、情勢調査の通りになると、「この国の未来が大変なことになり、恐ろしいことになる」と強調。自民党が勝つと「日本に暗黒時代が訪れる」とでも言うのだろうか。
また浅井氏は「少数意見が議論できるだけの人間を確保する選挙だ」とし、投票に行くよう求めた。簡単に言えば「野党に入れろ」ということだ。
浅井氏は「世田谷・九条の会」呼び掛け人の一人である。改憲を目指す自民党に投票してほしいとは思っているはずがない。
揚げ句には、ハリス鈴木絵美さんが「(今回の選挙は)今の選挙制度と今の民主主義の在り方の限界」と述べ、選挙制度の否定に終始。選挙制度を変えるなら国会審議でやることであり、公示後に論議しても今回の選挙結果が変わるはずがない。
◆09年は圧勝情勢歓迎
自民党に勢いがあるからそう発言したのかは分からない。しかし、情勢調査で民主党が300議席を超えそうだと出ても「選挙制度と民主主義の限界だ」と主張するのか疑問だ。
というのも、09年の民主党政権が誕生した際にも情勢調査があり、「民主300議席超」と報じられた。あのときテレビのコメンテーターは「民主主義の限界だ」などと言わず、お祭り状態だったと記憶しているからだ。
このように、同番組は何とか選挙情勢を変えようと必死だったが、中盤以降の調査でも流れは変わっていないどころか、ますます自民の勢いが増したようだ。
毎日新聞は8日付で「自民単独での3分の2超えも視野に入る」と報じ、産経新聞(9日付)も自民党単独で「衆院の3分の2に当たる317議席をうかがう勢い」としている。
どのような結果になるか、今夜中には大勢が判明する。
(岩城喜之)





