欠陥品対応でタカタに安全性優先とトップの説明責任を求めた各紙

◆違いを見せたホンダ

 自動車部品大手「タカタ」製の欠陥エアバッグ問題を巡る米国での動きは、メーカー側の対応の遅れと経営トップが果たすべき説明責任が尽くされないことなどから、消費者の不安を大きく高めてしまった。完成車メーカーのホンダは、運転席用で行ってきた地域限定の調査リコール(回収・無償修理)を地域限定を外し全米に拡大するのに対し「タカタは米当局が要求した全米でのリコールを拒否した。タカタへの非難の声が高まっており、日本ブランドのイメージ悪化は避けられない」(小紙6日付)状況。米国で「日本車たたき」が起きれば、日本の自動車会社全体の業績に大きな影響が及びかねないと懸念されるのである。

 この3日(現地時間)米議会下院の公聴会で、タカタはメーカーが自主的にリコール拡大を決めた場合には「全面協力」を表明したが、自らリコールを呼び掛けることは「支持するデータがない」と必要性を否定した。「もとよりリコールは、完成車メーカーが決めて実施する。タカタが主体的に決めれば、欠陥を認めたことにもなりかねない。最後は、こんな『正論』が、会社の意思となった」(朝日9日)のである。

 このため、公聴会でタカタは議員から非難の集中砲火を浴びる結果となった。その一方で、ホンダは公聴会で、タカタと一線を引く対応に舵(かじ)を切り「ある大手自動車メーカー幹部が『驚いた』というほど異例の対応」(読売5日)を示した。欠陥エアバッグの事故が多発したフロリダ州など高温多湿地域に限って行ってきた調査リコールを、全米に拡大する方針を表明したのである。

◆興味深い助言の存在

 この問題(タカタの対応)についての各紙の論調などは①安全の最優先②最高責任者の説明責任――の2点に集約される。

 毎日は「ここは車に乗る人の安全と安心を最優先してもらいたい」(社説5日)と見解を示し、タカタに対しては「リコールの実施や対象を決めるにあたり、科学的根拠にこだわり続けた。しかし、原因がわからない段階でも、問題が多発していればリコールに踏み切ることが要求される米市場では、後ろ向きの印象を与え、非難を集める結果となった」と諭した。自主的に全米でリコール実施を決めたホンダにも「安全を守る責任を負うのはやはり完成車メーカーだ。一般消費者は部品が信頼できるかどうかで車を選んだりしない。……なぜもっと早く、本腰を入れられなかったのか」を問うのである。

 日経(社説11月24日)も「自動車は乗る人の命を預かる機械」だとし「『安全第一』の姿勢を改めて確認してほしい」と強調。コラム「春秋」(8日)では米製薬会社が自社の解熱鎮痛剤が何者かに毒物を混入された事件(1982年)での対応を教訓に、危機管理に詳しい弁護士・中島茂氏の「判断基準はただ1つ。ユーザーの安全である。鉄則は『迷うならリコール』」を紹介。ホンダがリコール拡大に踏み込んだ経緯について、伊東孝紳社長は社外取締役の畔柳信雄氏(元三菱東京UFJ銀行頭取)の「まずはお客さんの安心を優先するべきでは」という助言で意思を固めたと書く朝日記事(9日)とともに参考になり、興味深い。

 経営トップの姿勢の問題を指摘したのは読売(3日)、日経(前記)、小紙(1日)である。「認識の甘さで対応が後手に回り、日本のもの作りと安全性への信頼を傷つけた責任は重い」とした上で、読売は「にもかかわらず、タカタの経営トップである高田重久会長が、記者会見など公の場での説明責任を果たしていないのは、理解に苦しむ」と批判した。

◆問題左右するトップ

 日経も同様に「理解できない」としたあと「企業が危機に直面したとき、経営者の振る舞いは会社の命運を左右する。厳しい事態から目をそむけるようではリーダーとしての役割を果たしているとはいえない」と責任を追及する。

 小紙も「最も不可解なのは、いまだにタカタの経営トップが記者会見などの場で説明を行っていないことだ。こうした姿勢では、安全性軽視ともとられかねない」ことを憂慮した。

 2009~10年のトヨタの大規模リコールでは、豊田章男社長が米議会の公聴会で説明をし尽くして批判の渦の潮目を変えた。説明責任に対する経営トップの姿勢は問題収拾を大きく左右するのである。

(堀本和博)