テレビの公平な選挙報道を要望した自民に批判社説で偏向煽る朝日
◆言論弾圧かの物言い
「公平な報道」。当たり前すぎて、いちゃもんのつけようのない話だが、こと自民党に対しては違うらしい。同党が総選挙報道でテレビ局に公平を求める「お願い」の文書を送ったところ、朝日、毎日、東京の左派系新聞はまるで言論弾圧したかのような物言いで反発している。
朝日11月28日付によると、自民党は在京のテレビキー局各社に対し、総選挙の報道にあたって「公平中立、公平の確保」を求める文書を送った。文書は過去に偏向報道があったと指摘し、出演者の発言や回数、ゲスト出演者などの選定、街頭インタビューなどでの公平を求めている。
テレビ各社は報道機関と言っても新聞とは違って、総務相から放送免許を与えられ、公共の周波数を優先的に割り当てられている。それで放送法は政治的に公平であること、意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを求めている(第4条)。だから自民党の「お願い」はごく当たり前の指摘である。
ところが、29日付で朝日社説は「政権党の言うことか」東京は「TV報道、萎縮させるな」と噛(か)み付き、毎日の与良正男・特別編集委員は「異論を封じる衆院選!?」(12月3日夕刊「熱血! 与良政談」)と批判している。
中でも朝日は文書が指摘した過去の偏向報道について、それが1993年のテレビ朝日事件を指すなら偏向報道とするのは「誤りだ」と断じている。これを読んで、よくも平然とウソがつけるものだと、思わず唸(うな)ってしまった。同事件は当事者の椿貞良報道局長の名を冠して「椿事件」とも呼ばれ、今でもテレビの偏向報道の代名詞だ。
◆93年椿事件を等閑視
椿局長は93年総選挙で「今は自民党政権の存続を絶対に阻止して、なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」と方針を出し、「梶山静六幹事長、佐藤孝行総務会長のツーショットを報道するだけで視聴者に悪代官の印象を与え自民党のイメージダウンになった」と、日本民間放送連盟の放送番組調査会の会合(同年9月21日)で言い放った。
報道番組では視聴者に理性的な判断を狂わせる「サブリミナル」的な手法を使って、「悪代官」の画面を何回も繰り返し流していた。その舞台となった「ニュースステーション」では、報道の最後にキャスターが情緒的なひと言を述べて視聴者を誘導する「捨て台詞(ぜりふ)ジャーナリズム」が跋扈(ばっこ)した。
この椿発言を産経がスクープし(同10月13日付=新聞協会賞を受賞)、社会問題化したため同局は椿氏を解任したが、国会での証人喚問にまで発展した。郵政省(当時)はテレビ朝日の免許取り消し措置を見送ったものの、人事管理などに問題があったとして行政指導した。
ところが、朝日社説は椿発言を「仲間内の場」での「不適切な発言」と矮小(わいしょう)化し、おまけに「放送内容はテレビ朝日が社外有識者を含めて検証し、『不公平または不公正な報道は行われていない』との報告をまとめ、当時の郵政省も『放送法違反はない』と認めた。(自民党の)文書がこの件を指しているとすれば、〈偏向報道は〉誤りだ」と開き直っている。
◆お茶を濁す身内検証
冗談ではない。テレビ朝日の検証は、たとえ社外有識者を加えても所詮は身内の独り善がりな検証にすぎない。それを免罪符に使うのは、何をか言わんやである。原発事故の「吉田調書」、慰安婦問題の「吉田証言」をめぐる虚偽報道でも朝日は社外有識者を含めた検証をやっているが、なるほど椿事件同様、それをもってお茶を濁すつもりなのか。昔も今も朝日の辞書には反省という言葉がないらしい。
当時、郵政省が放送法違反としなかったのは、免許を取り消せば、テレビ朝日をキー局とする地方テレビ局が混乱すると危惧したからだ。郵政省は98年のテレビ朝日への再免許の際には政治的公平性に細心の注意を払うよう条件を付している。
東京社説は「文書を受け取ったテレビ局は萎縮することなく、凜(りん)とした姿勢で報道を続けてほしい」と、偏向報道を煽(あお)っている。反権力なら何でもあり。左派系新聞の正体見えたりだ。
(増 記代司)





