衆院解散後の世論調査でも恣意的質問で反安倍政権に誘導する朝日

◆首相批判の印象作る

 「アベノミクス解散」。安倍晋三首相が自らそう命名した今回の解散劇。12月14日投開票の総選挙で、国民はいかなる選択をするのか。新聞は投票日に向けて世論調査結果を頻繁に報じ、各党・候補者を一喜一憂させるだろう。

 だが、新聞の世論調査が民意を正確にくみとっているとは限らない。質問が誘導的であったり、複数の回答が含まれていたりして民意が取り違えられるからだ。そのうえ新聞側が身勝手に解釈して強引に世論操作したりする。

 例えば、朝日21日付の緊急全国世論調査だ。安倍首相の2年間の経済政策は成功か、失敗か尋ねたところ、「成功だ」は30%で、「失敗だ」の39%の方が多かったとし、見出しでは「アベノミクス『失敗』39% 『成功』は30%」と報じている。

 これを素直に信じていいだろうか。朝日の世論調査の質問と回答を見ると、まず安倍内閣の支持・不支持を聞き、結果は支持39%、不支持40%で拮抗(きっこう)している。次に比例区の投票先で、これは自民党37、民主13、維新6、公明4、共産6%などで自民党が圧倒している(答えない30%)。

 この後、消費税引き上げ延期を理由とする解散の賛否(賛成18、反対62%)、消費税を2017年4月に確実に引き上げるとする評価(評価33、不評価49%)を聞き、そのうえで前記の安倍首相の経済政策へと続く。

 つまり、「経済政策」の関心が消費税問題だけに絞られていく仕掛けだ。少なくとも回答者は消費税を念頭に経済政策を考えるだろう。しかも質問にはアベノミクスのアの字も出てこない。にもかかわらず、見出しは「アベノミクス『失敗』」と強調する。

 どうも胡散(うさん)臭い。これら質問の解釈は多様だ。安倍内閣支持が39%、解散賛成が18%だから、安倍支持の半分以上が消費税引き上げ延期を理由とする解散に反対している。と言っても何も安倍政権に反対しているわけではない。あくまでも消費税をめぐる解散に反対しているのであって、その中にはそのまま安倍路線を突き進めばよい、負けもありうる危険な賭けをしなくても、との心配からの反対もあるだろう。

 だが、朝日の世論調査を伝える紙面は1面で「解散理由『納得せず』65% 内閣不支持40% 支持39%」とし、中面で前記のように「アベノミクス『失敗』」を強調するので、世論が安倍批判、アベノミクス批判で渦巻いているかのような印象を与える。

◆禁じ手使う長い質問

 ことほどさように朝日の世論調査は巧妙で、眉唾が必要となる。それは時に朝日流とも称される。昨秋の特定秘密保護法案論議では、共同通信の世論調査(2013年11月24日配信)で賛成46%・反対41%だったのが、朝日に掛かると賛成21%・反対50%と、賛成が異様なまでに減った(同12月2日付)。

 なぜそうなるかと言うと、禁じ手を使うからだ。ふつう質問は設問文や設問順による回答の誘導(残留効果)や恣意(しい)的な設問をやってはならないことになっている。ところが朝日の質問は法案を朝日的に解釈して長ったらしく解説し(秘密保護法では17字詰めで実に9行だった)、そのうえで賛否を問う。

 集団的自衛権をめぐる世論調査も同様で、「アメリカなど日本と密接な関係にある国が攻撃された時に、日本が攻撃されていなくても、日本への攻撃とみなして一緒に戦う権利のことです」などと、「戦う権利」と表現して戦争イメージを膨らませ、自衛権なのに自衛や防衛といった「守る」イメージを消し去った。

◆きわどい予測報道も

 今回もアベノミクスを問うなら、民主党政権下の円高不況から円安誘導で株価が2倍になったことも挙げるべきだが、それは言わない。消費税を並べ立てて経済政策を問い、おまけに見出しにはアベノミクス失敗を躍らせる。詐欺的手法と言うほかあるまい。

 こんな世論調査が選挙中に各紙の紙面を飾るかもしれない。フランスでは投票行動に影響を及ぼすとして選挙期間中の世論調査の公表を禁じている。わが国の公職選挙法(138条)は人気投票の公表を禁じるが、メディアの事前予測報道はきわどい記述をする。総選挙を控えてメディアの世論調査をどう読むか、リテラシーを高めておきたい。

(増 記代司)