質問で世論調査の結果は変わると毎日調査室長に語らせたBS報道21
◆疑問符付く世論調査
新聞やテレビで内閣支持率などの世論調査がよく記事になる。各メディアによって結果が大きく違うこともあり、「本当に世論を反映しているのか」と疑問視する声も多い。
数ポイントの差なら誤差とも言えるが、20ポイント近くも違うと、その手法に疑問を持つのは当然だろう。
当欄ではマスコミの世論調査について何度も言及してきたが、大手メディアが表立って世論調査の手法に疑問を投げ掛けることはほとんどない。
BS11は18日放送の「報道ライブ21 IN side OUT」で、「これでいいのか?世論調査」と題して、新聞社の世論調査の在り方を問うた。
番組サイトでも、内閣支持率の調査だけでなく、「去年の参院選や都知事選でも、調査と結果に大きな差が付いた」「信憑(しんぴょう)性に疑問符が付き始めている」と指摘した。
BS11は地上波キー局のBS番組ではないため、新聞社とのしがらみが少ないからできた企画とも言えるだろう。
◆新聞ごとに大きな差
番組が特に疑問を呈したのは、今月3日の内閣改造直後に行われた各新聞社の結果だった。
番組で扱ったのは全国紙4紙と共同通信の調査。その中で支持率が一番高かったのが読売で64%、続いて日経が60%。一番低かったのが、朝日と毎日の47%だった。
番組ではまず、司会で元フジテレビアナウンサーの露木茂氏が「なぜこんな大きな差が出てきたのか、疑問を感じた」と強調。当然の疑問である。
読売と朝日・毎日には17ポイントの開きがあり、誤差の範疇(はんちゅう)を大きく超えている。
埼玉大学の松本正生教授は「(国民は)どっちが本当なのとなる」と問い掛けた。
これに対し、毎日新聞世論調査室の山田道子室長は「調査方法や質問の仕方まで全部違うので、数字がばらつくのは当たり前。同じほうがおかしい」と反論した。つまり、質問内容で結果が変わることを認めた形だ。
また山田室長は世論調査を行う意義について「集団的自衛権のように、選挙で賛否を問うたほうがいいという人がいる中で、『疑似国民投票』の形で世論調査をやるという位置付けもある」と強調した。
毎日には「国の代わりに自分たちが国民投票をやっている」という意識があるのだろうか。そうだとしたら、おこがましいと言える。
調査方法や聞き方、選択肢の提示の仕方によって結果が変わることを、山田室長は番組内で認めた。
質問者によって結果が変わる調査が「国民投票」にはなり得ない。世論調査はあくまで世論調査で、参考でしかない。それも社の主張に沿う形で質問したり、印象操作に使われることがあると注意した上での参考だ。
松本教授は「(支持率が)下がったからといって鬼の首を取ったようにする必要もない」とし、自社の調査で支持率が30%を切ると「危険水域」だと騒ぎ立てるマスコミに苦言を呈した。
その上で、「世論調査の結果が政治の流れ、その先の世論を決めていく」と批判。「(今は)世論調査政治であり世論調査民主主義である」と切って捨てた。
◆回答率5割切る朝日
番組では、支持率のばらつきのほかに「回答率」についても注目。
内閣改造後の世論調査の回答率は、共同通信が69・4%、日経が63・6%など多くが6割前後なのに対し、朝日だけ飛び抜けて低い44%だった。
朝日の回答率は最近ずっと5割を切っている。松本教授は「言いにくいが、朝日は44%でその前が46%と5割を切っているので、シビアに感じているでしょう」と指摘。その後も何か言いたそうだったが、それ以上は突っ込まなかった。
朝日の回答率の低さと、支持率の結果とがリンクしている可能性もある。朝日の調査には答えたくないという層が、安倍晋三首相を支持する層とかぶるのなら、支持率が低く出ることに合点がいく。
そうだとしたら、特定層の意見がない朝日の世論調査は、民意を正確に反映していないことになる。
番組では、朝日の回答率の低さについてもっと深く議論してほしかった。
(岩城喜之)