遂に「慰安婦」報道の誤報は認めても動機を語らず謝罪もしない朝日
◆韓国の反日誘う捏造
「この度し難き鉄面皮 朝日新聞の頬被り」。西岡力・東京基督教大学教授は昨年、こう朝日を批判した(『正論』13年8月号)。いわゆる慰安婦問題についてだ。「慰安婦=性奴隷」という不名誉な評論のルーツをたどると朝日の誤報に行き着くのになぜ朝日は訂正しないのかと問うた。
西岡氏だけではない。読売は昨年5月、朝日が90年代初頭、戦時勤労動員だった『女子挺身隊』について日本政府による“慰安婦狩り”だったと全く事実に反する報道をしたことが慰安婦問題の発端となったと名指しで批判した(同5月14日付など)。
1980年代に共産党系の吉田清治という人物が、済州島で強制連行し慰安婦にしたとの著作を著し、朝日がこれを大々的に報じたからだ。これに対して89年に済州島の地元記者が嘘(うそ)を看破し、その後、吉田自身が偽証を認めた。
ところが、朝日は90年代に入っても執拗(しつよう)に取り上げ、これを韓国側が尾ひれをつけて報道、91年には元慰安婦の「初証言」なるものを報じ、韓国側とのマッチポンプで「日韓分断」に利用した。
その影響で93年の河野洋平官房長官談話では日本政府が関与したとして「謝罪」し、「アジア女性基金」を設けて元慰安婦に「償い金」を送ったが、逆に強制連行された慰安婦が存在したかのような印象を国際社会に与えた。
と言うわけで朝日は20年以上も前から批判を受けてきたが、鉄面皮、頬被りを続けてきた。ところが最近、元朝日ソウル特派員まで“参戦”し、朝日の誤報を厳しく追及するようになった。サスペンスドラマ風に言えば、証拠を次々と突きつけられ、ついに自供といった体で、朝日は5日付で慰安婦問題を特集し、誤報を認めた。
◆責任転嫁と開き直り
ただし全面自供でなく、吉田の著作を「裏付け得られず虚偽と判断」として取り消しただけの話である。強制連行については「軍などが組織的に人さらいのように連行した資料は見つかっていません」としつつも、見出しでは「自由を奪われた強制性あった」と自己正当化した。
挺身隊についても「当時は研究が乏しく同一視」と、社会全体が研究不足のように書くが、当時も同一視されることはなく、研究が乏しく同一視したのは朝日だけだ。
また「初証言」を報じたのは韓国の慰安婦支援団体幹部の娘を妻とする朝日記者(植村隆氏)で、「証言」したのはキーセン出身者だったが、記事では触れず、証言そのものが怪しまれた。だが、「意図的な事実の捻じ曲げはありません」「義母との縁戚関係を利用して特別な情報を得たことはありません」とし、肝心の証言の中身については一切、検証しようとしない。
おまけに「一部の論壇やネット上には、『慰安婦問題は朝日新聞の捏造(ねつぞう)だ』という、いわれなき批判が起きています」(杉浦信之・編集担当)と開き直る始末だ。冗談ではない、いわれがあるから批判されているのだ。それも一部でなく、多くの識者からだ。
何よりも朝日の不誠実さは2ページ見開きの特集の見出しに浮き彫りだ。「慰安婦問題 どう伝えたか 読者の疑問に答えます」とある。ふつう「疑問に答える」というのは間違いがなかったときに使う表現で、疑問どおりならこうは言わず率直に謝罪するものだ。それを朝日はしない。つまり捏造・誤報を謝罪する気などつゆほどもないのだ。
杉浦氏はこうも開き直る。「被害者を『売春婦』などとおとしめることで自国の名誉を守ろうとする一部の論壇が、日韓両国のナショナリズムを刺激し、問題をこじらせる原因を作っている」。こじらせた張本人の呆れた責任転嫁。盗っ人猛々(たけだけ)しいとはこのことだ。
◆変わらぬ左翼的偏向
結局、朝日は慰安婦問題特集(5、6日付で計4ページ)で多弁に記事を並べ立てたが、捏造・誤報の「動機」について完全黙秘を貫いた。隠し通そうとしているのは、真実の報道よりも政治イデオロギーを優先させる左翼的偏向体質である。動機を語らず、謝罪もしない。こんな犯人は必ず再犯を仕出かす。
現に朝日は集団的自衛権問題でも政治的イデオロギーを優先させ、事実報道よりも「戦争ができる国」といった虚偽報道にうつつを抜かしている。正体見えたり、である。
(増 記代司)