子供のスマホ依存の被害と脱却策の限界を浮き彫りにした「クロ現」

◆スマホ絡み犯罪急増

 スマートフォン(スマホ)を使った子供が犯罪に巻き込まれたり、いじめに遭うケースが急増している。警察庁の調べでは、昨年、コミュニティーサイトを使って性犯罪などに巻き込まれた子供は1293人いた。そのうち、約57%の741人がスマホからサイトにアクセスして被害に遭ったものだった。一昨年はスマホを使った被害が160人だから、1年で4・6倍以上になっている。

 スマホの利用で犯罪に巻き込まれないためには、単純にスマホを持たなければいいのだが、子供のスマホ所有率は年々増加傾向にある。

 内閣府が今年2月に発表した平成25年度の調査では、携帯電話端末を所持している小中高生のうち、スマホを利用している割合は56・8%だった。平成24年度は36%、平成23年度では5・7%なので、まさにスマホ所有率が急増していることが分かる。

 スマホを持つ友達が増えれば増えるほど、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などで密接なやり取りをする子供たちはスマホから抜け出せなくなり、依存度が増すという悪循環に陥っている。

◆自治体がルール作り

 そんな中、スマホによるトラブルから子供を守るために、地方自治体が独自にスマホ規制を定める動きが出ている。

 NHK「クローズアップ現代」は、15日に放送した「小中学校スマホ“追放”騒動~トラブル低年齢化の波紋~」の中で、そうした自治体や学校などによる子供のスマホ依存脱却の取り組みを紹介した。

 同番組はスマホ依存の影響として、「朝起きられない、勉強に集中できないなど、生活の乱れに繋(つな)がっている」と指摘。また「無料アプリを使って、子供たちは友達同士で密接にやり取りをすることが当たり前になっているが、仲間内で批判的な書き込みをしたり、仲間外れにしたりするなどのいじめが起きている」と解説した。

 そして、スマホの使用ルールを定めた自治体の例として、小中学生に不要なスマホや携帯電話を持たせないことを条例で定めた石川県や、スマホ使用時間を一日1時間以内と制限した仙台市など、各地で対応が進んでいることを紹介。その中でも、21時以降の小中学生スマホ使用制限を打ち出して話題を呼んだ愛知県刈谷市の取り組みを詳しく報じた。

 同市が独自のルールを定めたのは、子供がスマホを持ったことで、夜更かしが続いて遅刻が多くなったことや、特定の友人をネット上で攻撃することが多くなったり、性犯罪に巻き込まれるケースが増えたことなどの背景がある。

 刈谷市がスマホ規制開始から2カ月後に行ったアンケート調査では、規制に賛成の子供が48・6%で、反対が10・3%と、意外にも賛成の声が半数近くあった。

 番組では、規制に賛成する声が多い理由として「子供たちはグループを作って、その中でメッセージをやり取りしている。仮に一人が一方的に通信をやめてしまうとグループから疎外される可能性もある。仲間たちから外れないように常に緊張を強いられている子もいる」と解説する。

 つまり、スマホから離れたいが離れられない状態に陥っているから、21時以降に全員がやめれば、仲間外れにされる心配がなくなると考える子供が多くいるということだ。

 しかし、刈谷市のルールは強制力がないために、友達から21時以降もメールや「LINE」のメッセージなどが届き、それに答えるという状況が今も続いていることが、同番組によって明らかにされた。親はルールを徹底させたいが、子供は返事をしなければ疎外やいじめに遭うのではと思い、つい返事をしてしまうのだ。

◆限界ある自治体規制

 また、刈谷市の子供たちが21時以降にスマホをやめても、他の市ではそうしたルールがないため、刈谷市以外の友達から夜中にメールやメッセージが届き、それに返事したくなる子供がいるという課題も出てきた。

 一つの自治体だけが規制しても、スマホ依存を脱却させることは難しく、番組は自治体による規制の限界を浮き彫りにした。

 ただ、番組内で有効なスマホ依存対策を提示できなかったのは残念だった。文明の利器である以上、解決方法を簡単に見つけられない現状を痛感させられる。やはり、トラブルに巻き込まれないための知識・常識が育つまで子供にスマホを持たせないことが一番の対策だ。

(岩城喜之)