集団的自衛権に賛否2択、「限定容認」加えた3択で変わる各紙調査

読売調査結果の衝撃

 新聞の世論調査で衝撃を与えたのは、何といっても6月2日付の読売だろう。集団的自衛権行使の憲法解釈の見直しについて政府が与党協議で示した15事例のうち、5事例をそのまま世論調査で問うたからだ。他紙にはない。

 結果は、紛争中の外国から避難する邦人を乗せた米輸送艦を自衛隊が守れるようにすることに「賛成」との回答が75%、国際的な機雷掃海活動への参加に「賛成」が74%もあった。米艦護衛については公明党の支持層でも8割弱が賛成していた。

 読売によれば、この世論調査を起点に公明党も容認に傾くようになったという。我田引水の感がしないでもないが、インパクトを与えたのは間違いない。なにせ朝日などは行使反対が多数派と声高に叫んできた。それを読売は見事にひっくり返した。

 5月の世論調査で「行使反対が多数派」と報じたのは、毎日と日経、朝日の3社である。毎日は賛成39%、反対54%(19日付)、日経は賛成29%、反対51%(26日付)、朝日は賛成29%、反対55%(26日付)。いずれも集団的自衛権の行使を「賛成」「反対」の2択で聞いている(ちなみに本紙も時事通信社の2択の世論調査で、賛成37%、反対50%と報じた=17日付)。

 これに対して読売と産経は2択ではなく「限定容認」を加えた3択で聞いている。読売では全面行使賛成8%、必要最小限の容認賛成63%、行使反対25%で、容認派が70%を超えた。産経も同様に10・5%、59・4%、28・1%で、ほぼ70%が容認派だった(29日付=いずれも5月)。

3択で毎日賛成多数

 こうした世論調査(4、5月分)について毎日の世論調査室の大隈慎吾氏は、各社結果の矛盾は政府の説明不足を反映しているもので「国民は決めかねている」としている(集団的自衛権と世論調査=「記者の目」6月26日付)。

 その中で、毎日は4月の世論調査では3択で質問し(結果は全面容認12%、限定容認44%、反対38%で容認派が過半数=4月21日付)、5月調査では2択に戻したことに触れ、「『限定的』の内容が政府・自民党内でさえ固まっておらず、国民が確固たる意見形成をできていないにもかかわらず、『行使容認多数』が独り歩きして『限定的』の内容の議論が深まらないことを懸念したからだ」と弁明している。

 が、これは詭弁(きべん)と言うほかあるまい。安倍晋三首相が記者会見で「限定容認」の15事例をパネルで示したのは5月15日のことだ。毎日の世論調査はその直後の同17、18日に行っており、前掲の読売のように「限定的」の中身の賛否を問うこともできたはずだ。

 それにもかかわらず、毎日はなぜか2択で聞いている。おそらく、「限定容認」が多数派を占めるのを恐れ(現に4月の調査がそうだった)、あえて2択にしたのだろう。まさに世論誘導である。

 つまり各社結果の矛盾は当初は政府の説明不足もあったであろうが、安倍首相の会見後の矛盾は2択で質問する毎日の説明不足のたまものなのである。この姿勢を毎日は変えようとせず、29日付の世論調査でも2択で問い、「反対58%」と報じている。

反対多いと世論誘導

 さすがに限定容認を問わざるを得なかったようで、2択で聞いた後、政府の限定容認について「全面的に行使」「限定内容にとどめる」「行使すべきでない」の3択で聞き、その結果は7%、41%、43%だった。つまり行使容認派が合わせて48%と反対派を上回っている。

 ところが、毎日は行使すべきではないが43%で「最も多く」と記し、あたかも反対派が多いかのように報じ、ここでも詭弁を弄している。大隈氏は「国民は決めかねている」と言うが、そうではなく毎日が決めかねているかのように装っているにすぎない。

 事ほどさように毎日の世論誘導はずる賢い。が、朝日はそれに輪を掛け、3択で聞くことは一度もなく、2択を続け、24日付の世論調査では行使容認に賛成28%、反対56%としている。集団的自衛権の定義も相変わらず「一緒に戦う」と、「戦う」を強調し「自衛」を葬っている。

 「戦争のできる国」といったプロパガンダに余念のない朝日はもはや一般紙とは呼べない。むろん、こういう新聞の世論調査は読むに値しない。

(増 記代司)