「都議会やじ」で謝罪経緯は追ったがセクハラに関心薄い文春、新潮

◆内幕がなかった文春

 都議会セクハラやじ騒動は、予想通り、韓国や米国にまで拡大している。これは「慰安婦」攻撃に晒されているわが国にとって、もっとも起こしてほしくない問題だった。「性的虐待」「女性の人権を軽視する国」というイメージに繋げられやすいからだ。

 “犯人”がすぐに名乗り出て謝罪し、即座に処分が下されれば、ダメージは最小限で収められた。しかし、事態は逆の最悪の展開をする。“犯人”はしらを切り、詰められて一転白状し、“被害者”は海外に“告げ口”をした。

 後になって“被害者”がある種の「札付き」であることが分かっても、一度ついたイメージは一人歩きをし、修正して原状回復することが不可能になる。「身内の恥を晒して、家名に傷をつける」ことに、犯人も被害者もお構いなしだ。

 この話題、週刊誌にとっては格好の題材だ。週刊文春(7月3日号)は“犯人”の鈴木章浩自民党都議に焦点を当てている。犯人と名指しされながらも、ずっと否定し続けていたが、一転して認め、メディアが取り囲む中、都庁でみんなの党TOKYOの塩村文夏都議に「公開謝罪」した経緯をまとめている。

 だが鈴木氏は「早く結婚した方がいいんじゃないの」とは言ったが、他のやじ「産めないのか」は言っていないと言い張り、スッキリしない。

 同誌は「産めないのか」発言について、実は「自分が産んでから」だった、と関係者の話を伝えている。既に“犯人”は特定されているようだが、同誌の取材に“疑惑”都議は否定する。鈴木氏と同じように、後になって、言い逃れできない証拠を突きつけられてから、「ごめんなさい」をするパターンなのだろうか。

 同誌の記事は経緯をまとめているだけで、どうして鈴木氏が謝罪に転じたのかなど、その内幕がなく、都議会自民党の対応、党本部の対応なども十分には伝わらない。

◆「人権意識」は触れず

 これに対して、週刊新潮(7月3日号)は、鈴木氏謝罪の経緯を書いた。それによると、石破茂幹事長が「早い解決を迫った」という。これを受けて、都議会自民党は、「鈴木都議の意向とは関係なく、塩村議員への謝罪と本人の会派離脱、そして、記者会見を開くという3点セットでの落としどころ」で党本部の了承を受けていたという。

 さらに、都議会自民党の“悪しき伝統”を暴露する。それは議会が始まるとやじを飛ばすように重鎮議員から指示が出て、それを受けてやじる「野次四天王」がいるという話だ。

 彼らは同誌の取材を受けるのだが、いずれも「産めないのか」とは言っていないと否定する。川井重勇都議は、「うちには39歳になっても結婚しない娘がいるんだよ」といい、来代勝彦都議も「今年31歳になる未婚の娘もいるので、あんな発言はできません」と弁解したという。いずれも「未婚の娘」に助けられた格好だ。

 結局、「産めないのか」(あるいは「産んでから」)発言の主は分からずじまいで、今回の件は幕引きされそうなのだが、そうなると、一人無様さを晒した鈴木氏は面白くなかろう。

 鈴木氏は「主流派閥でもなく、なおかつ当選3回に過ぎない中堅」だったため「スケープゴート」にされたそうだが、自暴自棄になって重鎮議員の指示や犯人の暴露に出るかもしれない。それを抑えるために「党籍はそのままにし、次の都議選も自民党候補として出馬できるようにした」(自民党元都議)のだそうだ。

 ここまで書いてこそ、週刊誌というものだろう。ただし、都議会自民党内の「人権意識」については何も触れていない。

◆女性都議の取材進む

 両誌は同じく塩村議員にも焦点を当てている。文春は「華麗なる履歴」とオブラートに包んだが、新潮はズバリ「実は女の敵だった」と露骨だ。「交際相手と分かれて、慰謝料1500万円とった」とか、衆議院議員との不倫疑惑だとか、選挙事務所の家賃滞納訴訟だとか、さらには、交際相手「AERA」元編集部の人物が塩村氏の事務所経費問題の取材を進めていた「週刊朝日」に“圧力”をかけたとか、の話題が両誌ともに載っているのを見ると、塩村氏への取材が相当に進んでいることが分かる。

 外国特派員協会で会見して世界に“告げ口”した塩村氏だったが、注目を浴びれば、その分、自らの過去や行状が暴かれることになる。

 各誌とも共通して関心が薄かったのは「セクハラとは何か」だった。

(岩崎 哲)