集団的自衛権容認の閣議決定へ公明の慎重論を諌め合意求めた読、産
◆捨て台詞を放つ朝日
「いまは拡張主義の中国が尖閣諸島に仕掛ける対日紛争に、米国は『巻き込まれたくない症候群』に陥っている。/安倍政権は紛争を回避するため米国をいかに巻き込むかに腐心する。日本が集団的自衛権の行使にカジを切って同盟を強化する。次に、中国から攻撃を受けた際の日米の役割分担を『日米防衛ガイドライン』に盛り込み、抑止力を強化する」(産経18日付「湯浅博の世界読解」)
積極的平和主義による集団的自衛権行使を容認する新たな憲法解釈を盛り込んだ閣議決定の議論は、いまや小田原評定を繰り返して時間浪費していられる時代状況ではない。
政府は17日に、集団的自衛権の行使容認などをめぐる自民、公明両党の与党協議(安全保障法制整備に関する与党協議会=座長・高村正彦自民党副総裁)で、高村座長が先に示した自衛権発動の3要件を取り入れた閣議決定原案を提示した。原案は「集団的自衛権」の文言についても憲法上の解釈とは区別して「国際法上は集団的自衛権」とすることで調整し、与党協議は大詰めに入った。
しかし、明日20日の与党協議では閣議決定に盛り込む予定の高村私案(新たな「自衛権発動の3要件」)をめぐる修正協議が行われる見通し。公明党の党内調整にはなお時間が必要で、18日の自公両党の幹事長の協議で安倍晋三首相が目指していた今国会会期末(22日)までの閣議決定を見送ることで一致した。
集団的自衛権をめぐる与党協議では、これまで朝日などは報道記事や社説を総動員し、まるでどこかの政党機関紙のように狂奔する紙面を展開して公明党を牽制(けんせい)したり、抵抗勢力となるようけしかけてきたりしてきた。それでもコトが思い通り与党分断に進まない展開となると、捨て台詞を放つ。例えば14日社説「公明党と憲法/自民にただ屈するのか」では、集団的自衛権行使容認について与党協議する公明党に「だが、どんな条件をつけたところで、集団的自衛権を認めることに変わりはない。妥協は将来に禍根を残す。公明党はその重みを肝に銘じるべきだ」。社説の結びは「公明党は、それでもついて行くというのか。自民党の力ずくの憲法改変に」とまるで振られた男の嘆き節である。
◆掃海活動の意義説く
さて、政府が提示した閣議決定原案について、即反応して翌18日付社説(主張)を掲載したのは読売、産経、毎日の3紙。この問題をめぐるこれまでの社説から3紙の論調は、はっきりしている。大局で支持する読売、産経に対して、前述の朝日のように「多くの論点を置き去りにしたまま、政府・自民党は閣議決定に突き進み、連立政権の維持を優先する公明党はこの動きにのみ込まれようとしている」と懐疑的な毎日である。
読売は「自衛権行使の範囲を安易に狭めることは避けるべきだ」と主張。提示された原案通りなら「米艦防護や機雷除去など、政府が示した8事例は、すべて対処可能だとしている。この内容を大きく変更することなく、与党合意の調整を急ぐ」よう求めた。
産経も「自衛隊の活動範囲をめぐる自公両党間の立場の違いがより際立ってきた」として、公明党が海上交通路(シーレーン)に敷設された機雷除去の掃海活動に難色を示していることを指摘。「日米同盟を強化し、日本の国益と安全を守るために何が必要かが与党協議に問われている。真に意味のある合意づくりへ、ぎりぎりまで調整を続けてほしい」との主張を掲げた。
「守るべきシーレーンは中東に限らない。インド洋からマラッカ海峡、南シナ海を経て日本近海まで、日本にとって死活的に重要なシーレーンが通っている。掃海能力を発揮できると示しておくことが抑止力にもなる」(産経)のである。
◆読・産の社論は正論
読売も、湾岸戦争で日本の貢献が国際的に高く評価されたのは130億㌦の巨額の資金援助ではなく、海上自衛隊の掃海活動だったが、それは停戦の成立後に限定されたことに言及。「集団的自衛権の行使を容認することによって、停戦前でも機雷を除去できるようにする意義は大きい」「海自の高い掃海能力を活用する選択肢を持つことが大切」「様々な事態を想定し、適切に対処できる仕組みを構築しておくことが、安全保障の要諦」などと説き、行使容認に条件の縛りをかけようとする公明党の慎重論を諌(いさ)めた。
両紙の社論は正論。結論を先送りした分、与党はさらに協議を重ね、しっかり意味のある合意にしてもらいたい。
(堀本和博)