共同通信配信の安保・防衛問題社説で左派の論調に染まる地方各紙
◆「地方は反対」と朝日
集団的自衛権の行使容認をめぐって中央紙の賛否は割れている。言うまでもなく反対は朝日と毎日、賛成は読売、日経、産経。冷戦期の左右イデオロギー対立の構図が今も続く。では、地方紙はどうか。
地方紙にはブロック紙と県紙がある。前者は北海道新聞、中日新聞(名古屋)、西日本新聞(福岡)、河北新報(仙台)、中国新聞(広島)。後者は戦時下の「一県一紙」の統制を背景に概ね県庁所在地で1紙が発行されている(福島や沖縄などは2紙並存)。
その地方は一部を除いて長く保守・自民党の基盤だった。民主党政権が登場した一時期、それが崩れたが、自民党が政権を奪還した2012年の総選挙以降、再び取り戻した。だから地方紙も保守? 確かに左派色が強い沖縄の2紙(琉球新報と沖縄タイムス)や一部ブロック紙を除いて、県紙の多くは地元ニュースにイデオロギー色は少なく、その意味で保守的だ。
ところが、安保・防衛問題となると、とたんに左派論調が強く出てくる。朝日は集団的自衛権の行使容認をめぐって中央紙と地方紙の新聞社説を分析し、「在京6紙 賛否割れる 反対目立つ地方紙」(5月23日付)と、地方紙が朝日と同じ論調(左派)だと強調している。
特定秘密保護法もそうだ。同法が成立した昨年12月、毎日は全国の新聞社説を取り上げ、「賛否割れた全国紙 地方紙大半は批判」(同12月16日付)と報じた。そこに「主な新聞各紙の社説の見出し」の一覧表が載っているが、地方紙に“朝日ばり”の見出しが並んでいる。
しかも、同一の見出しもある。例えば茨城新聞「こんな法律はいらない」(同8日付)、下野新聞(栃木)「こんな法律はいらない」(同10日付)、山陰中央新報(島根、鳥取)「こんな法律はいらない」(同8日付)といった具合だ。まるで金太郎飴だ。岐阜新聞の「こんな欠陥法はいらない」(同8日付)も同類だろう。
◆社説がまったく同じ
社説の中身はどうか。茨城新聞には「報道機関や市民団体、日弁連、さらに科学者や憲法学者、歴史学者、映画人とあらゆる分野の人々からどれほど反対や疑問、不安の声が上がろうと政府・与党にとっては、ただの『騒音』でしかなかったようだ」とある。
一方、山陰中央新報にもこうある。「報道機関や市民団体、日弁連、さらに科学者や憲法学者、歴史学者、映画人とあらゆる分野の人々からどれほど反対や疑問、不安の声が上がろうと政府・与党にとっては、ただの『騒音』でしかなかったようだ」
つまり、まったく同じなのである。誰かが社説を提供しているのは明白だ。その正体は共同通信である。共同通信は新聞各社やNHK、民放各社が加盟社として出資する一般社団法人だ。地方紙は海外特派員や中央官庁、全国各地に記者を送る財力に欠く。だから国際ニュースや政治記事の大半は共同の配信記事に依存している。
共同は連載漫画や小説、文化記事のみならず、実は「社説」も配信しているのだ。地元記事を除いて、おんぶに抱っこなのだ。配信社説に手を入れる社もあるが、山陰中央新報のように丸写しで使うところも少なくない。だから金太郎飴となる。つまり地方紙は共同に操られていると言っても過言ではない。
◆朝日以上の左翼論調
それが正論ならまだしも、朝日以上の左翼論調として知られる。今年2月、共同はNHKがキャロライン・ケネディ駐日米大使のインタビューを大使館に申し込んだが、経営委員を務める作家、百田尚樹氏の東京裁判などめぐる発言を理由に難色を示したと配信した(同14日)。だが、そうした事実はなく、百田氏を陥れる謀略報道とされた。
2011年に親日のケビン・メア米国務省日本部長(当時)が更迭に追い込まれた「沖縄はゆすりの名人」発言も共同の配信だ。これも反米活動家と共同編集委員による「歪曲」だった。こうした例は枚挙にいとまがない。
にもかかわらず、地方紙は共同の配信社説を垂れ流している。朝日と毎日はそんなカラクリを隠したまま、地方紙は安倍路線への反対が多いと、左翼世論を煽っている。
わが国には共同というもうひとつの偏向報道の元凶が存在することを知っておきたい。
(増 記代司)