中国の海洋覇権に日・米・ASEANで集団対処を求めた「新報道」

◆中国の問題行為多発

 安倍晋三首相の私的諮問機関が15日に集団的自衛権行使を容認する報告書を提出し、首相が記者会見した。18日の日曜朝の各報道番組はこれと合わせて南シナ海の西沙諸島をめぐる中国とベトナム、南沙諸島をめぐる中国とフィリピンの緊張を取り上げた。

 中国の油田開発装置の敷設に抗議したベトナム船に衝突する中国船、ベトナムでの激しい反中デモ、岩礁を大量の砂で埋め立てる中国に怒ったフィリピンでの反中デモなどだが、中国の海洋覇権が南シナ海で露骨になっている。

 他にも中国のなり振り構わぬ行為として、300隻の虎網漁船による乱獲、それも密漁の現場をフジテレビ「新報道2001」が扱った。水産庁の取り締まりにしぶとく逃走する様子を追ったものだ。

 韓国にも中国漁船は反日蜜月外交への遠慮もないようだ。韓国沖でぴったりと隊列を組んで乱獲する中国漁船団は威圧的で、韓国側の取り締まりに棒で叩く、物を投げるなど凄まじい。現在、セウォル号事故の国民的な不幸の中でも、韓国側の監視が緩んだ隙に入り込み容赦しない。

 テレビ朝日「報道ステーションSUNDAY」は、那須烏山市や地元住民も知らぬ間に上海電力が親会社の中国中央企業の資金力を背景に広大な土地を買い占め、必要な事前協議を済ませず一方的にメガソーラー開発を進めた現場を取り上げた。

 地元住民が「順序がちゃんと手続きを踏んでやっている感じがしないですね」と問題を感じても、「中国の方が来て何が問題なのって話……百何十億をぽんと出せる日本企業はそうない」(渋井由放市会議員)と資金パワーによろめく人も。市当局も知らず、地元市民が不安に感じても市政問題と考えないのか。

◆南シナ海を軍事拠点

 領土・領海問題、油田開発、企業進出、魚の乱獲や密漁…違法合法あらゆることにパワーで押しまくる中国のやり方を各番組は問題視していた。

 特に深刻なのは、やはり軍事が絡む海洋問題だ。「新報道」の討論では作家の黄文雄氏が「日本のメディアは本質を見ていない」として「一番大きな問題は軍事問題と習近平の海洋強国。中国側が一番重視しているのは南シナ海で、軍事拠点として核の反撃能力を保ちたい」と指摘。石破茂自民党幹事長は、旧ソ連がオホーツク海聖域化で原潜による米国への核攻撃能力を保持したように「ソ連が中国、オホーツク海が南シナ海に変わっているのが今の状況ではないか」と応えた。

 日本総研理事長の高橋進氏は、軍事に経済を絡めてくる中国に、アジアの国は一国では軍事でも経済でもかなわないとして、「ASEAN、米国と組んで対抗していくことが必要ではないか。……TPPもそうだが防衛の面でも国際ルールを作って中国に行動を求めていく」ことを訴えた。

 確かに巨大な中国には米国をバックに周辺国が集団で当たる方が効果的だ。アジア版NATOとまでいかなくても、そこに「集団」での自衛権も検討される意味があろう。

◆脅威認識ない河野氏

 南シナ海における中国による西沙諸島、南沙諸島の占拠の経緯について各番組とも触れたが、TBS「サンデーモーニング」は手作りの厚紙の地図ながら解説に趣向を凝らした。西沙諸島も南沙諸島もベトナム、フィリピンから米軍が引くと中国が出てくるのが分かりやすかった。その米国が衰退するなかで首相が集団的自衛権行使容認へ憲法解釈する意向を表明したが、これに同番組は司会の関口宏氏、コメンテーターの寺島実郎氏はじめ批判的で、憲法9条を読み上げた。

 国連憲章に認める集団的自衛権も「反省と自制」から9条で行使を認めない「特殊性こそ価値だ」という寺島氏は、外交力を強調する。しかし、これが通用したら安倍首相の出る幕もなく今も民主党・社民党連立政権の天下だろう。与党大訪中団、日米同盟の旗印だった自衛艦インド洋撤収、普天間基地移設の日米合意白紙化など、離米・中国重視に舵(かじ)を切った鳩山由紀夫政権を経て、中国は尖閣領有を露(あら)わにした。これが“9条の夢”を覚ました側面もある。

 ところが、同番組は「考・憲法」のコーナーで「中国・北朝鮮の脅威?」と疑問視し、ゲストの河野洋平元衆院議長が「総理はわが国を取り巻く環境は厳しいと危機感をしきりに言う。本当の危機があるのかどうなのか」と畳みかけた。今や脅威は論より証拠の段階ではないのか。病膏肓(やまいこうこう)に入るとはこのことだろう。

(窪田伸雄)