善意を盾に偏向思想押付けたNHK「ニュース深読み」LGBT特集

◆過激な性概念の番組

 自分に似せた分身を作り、架空の島で生活を楽しむ任天堂のゲームについて、米国の男性同性愛者がゲーム内で同性婚ができないと腹を立て、同性婚ができるようゲームの変更を求める運動を起こした。同社の米国法人は当初は拒否していたが、最終的に謝罪に追い込まれたという 。

 約1カ月前には、宗教上の理由から、同性愛カップルの結婚写真を撮るのを拒否した写真家が有罪判決を受けたとの記事(産経新聞)もあった。同性愛者らの支援者を「アライ」(英語のアライアンスから来ている)と呼ぶそうだが、アライでなければ悪者扱いされかねない空気に、違和感を通り越して空恐ろしさを感じる 。

 日本のテレビで、彼らの支援に力を入れる筆頭はNHKEテレの「ハートネットTV」だ。しかし、今月10日放送の総合テレビ「週刊ニュース深読み」のLGBT特集は視聴者に特定思想を植え付け、NHK全体が“アライ化”していると思わせる内容だった。公共放送がこの調子では、いずれ日本も米国の後を追って、アライでない人間にとっては息苦しい社会になるだろう 。

 同番組中の「深読みコーナー」のテーマは「“20人に1人” LGBTを知っていますか?」。LGBTについて改めて説明すると、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T=性同一性障害者ら)のこと 。

 「知っていますか」というのだから、この言葉はまだ一部の間にしか知られていない特殊用語である。このため、番組冒頭で、アナウンサーがその説明を行ったが、それがまさしく特定思想の押し付けだった 。

 「性別は男女の二つではありません」と断定的に言ったのは徳永圭一アナウンサー。そして「体の性別」「心の性別」「好きになる人の性別」の三つを挙げた。その荒唐無稽さからマスコミから消えたジェンダーフリー思想を連想させるものだが、その性についての新たな概念をあたかも定説であるかのように持ち出したのは、LGBTを社会に認知させようとの意図があったからだ。つまり、性同一性障害については医学的に「障害」と認知されたが、同性愛などに関しては性別の概念を変えることで、社会に受け入れさせようというわけだ。

◆NHKは独自調査を

 一方、“20人に1人”との統計は、電通総研の2012年調査によるものだが、この信憑(しんぴょう)性を実感する視聴者はほとんどいないのではないか。それでも、徳永アナウンサーは表に出ていないだけで「必ず身近にいらっしゃいます」と、こちらも断定調。この数字は、番組で何度も繰り返された 。

 だが、いくらLGBTが隠れた存在であったとしても、数字の信憑性には首をかしげてしまう。この種の調査で本格的なものはほとんどないだけに、番組で紹介するなら独自調査を行い、電通調査の裏付けを取ってから、使うべきだろう。それが公共放送の社会的責任というものだ。それをしないのは多ければ多いほど、「性の多様性」を社会に認知させるのに好都合だからだとしか言いようがない 。

 このほか、「NHKはアライになったのだな」と思わせる内容は多々あった。例えば、同性愛者らに対するセクハラ問題が話題となった。男性同性愛者をゲイではなく「ホモ」と呼ぶことについて、スタジオに集まったLGBT5人のうち4人は「×」を掲げた。そこに侮蔑的な意味合いが込められているからだという 。

 したがって、「セクハラは、言われたほうが不快に感じてやめてほしいと思ったら、それはセクハラになる」(小野文恵アナウンサー)との説明を前提に考えれば、「ホモ」はセクハラになるわけだ。しかし、世の中には「同性が好きだ」「異性が好きだ」と、人に話すことは品性を欠くとして不快感を持つ人もいるのだから、これもりっぱなセクハラだが、こちらの視点は脇に追いやられていた。

◆善意ならぬ不寛容に

 米コラムニストのチャールズ・クラウトハマーは本紙4月15日付で、米国では「これ(同性婚)に反対する人は偏狭以外の何物でもなく、人種差別と変わらない」と見られているとして、「全体主義的な傾向が強まっている」と嘆いたが、日本にとっても他人事ではない。このままNHKが「多様な性」に対する寛容という“善意”を装いながら、LGBT支援番組を放送し続けるなら、遠からずやってくるのは、ゲームにもクレームをつけられるような、実に不寛容な社会であることを覚悟しておく必要がある。

(森田清策)