「護憲」を盾に左翼イデオロギー運動への公務員の動員を企てる朝日
◆妨害者と共に苛立つ
憲法改正の入り口となる国民投票法(憲法改正手続法)の改正案が衆議院を通過し、今国会中の成立が確実となった。
なにせ改正案は共産党と社民党を除く与野党7党の共同提案だ。過半数どころか、憲法改正の国会発議に必要な「総議員の3分の2以上」を上回っている。むろん改憲の中身となると7党の違いは大きいが、改正案の発議へ一歩前進したのは間違いない。
そんなこともあってか、護憲派の新聞は苛(いら)立ちを隠さず、なりふり構わぬ反改憲論を展開している。とりわけ朝日1日付社説「護憲後援拒否 霞を払い議論をひらけ」には驚かされた。社説は冒頭、安倍晋三首相が出席したメーデー中央大会のこんな風景を伝える。
「『消費税お前が払え』というプラカードを持った男性4人に警察官が張り付き、『掲げるな』に始まり、高く掲げ過ぎだなどと圧力をかけ続ける。そして首相がマイクの前に立ち、男性らが『「残業代ゼロ」絶対反対!』と声をあげた途端、警察官が一斉に彼らを取り囲み、会場の外に押し出した」 そのうえで社説は「なぜプラカードを掲げてはいけないのか。なぜ警察に会場から出されなければならないのか。何の法的根拠に基づいているのか。男性らは何度も問うたが、確たる返答はなかった。安倍政権下、異論や議論が霞の奥に追いやられていないか」と憤ってみせる。
まさか集会妨害者と打ち合わせて警察を挑発した? そう勘ぐりたくなるような書きっぷりである。
どの国でも一国の指導者の警備は厳しくやるものだ。共産党もそうで、かつて青年組織・民青にはゲバ棒で武装した「あかつき防衛隊」がいて、集会を妨害しようものなら暴力を振るって追い出した。今も志位和夫委員長は防衛隊に守られていると聞く。
それを「警察官が一斉に彼らを取り囲み、会場の外に押し出した」というのは、まことにもって紳士的である。たった4人の排除を「安倍政権下、異論や議論が霞の奥に追いやられていないか」とは恐れ入った物言いだ。
◆千葉市は常識的判断
それはさておき、朝日社説は自治体が「護憲」にまつわる行事の後援を拒否するケースが相次いでいると批判している。例えば、千葉市は1月に「自民党の改憲案で何が変わるか」との講演が予定されていた集会の後援申請を「国民的な議論があるので、主観的な考えを述べる講演会と判断した」として断った。
常識的な判断だ。こうした護憲集会がいかに政治色の強いものか、その多くが共産党機関紙に掲載されてきたことからも知れよう。朝日3日付に「市民違憲広告運動」なる団体が「9条実現」と題する2ページ見開きの意見広告を載せたが、これもその類だ。広告の中身は安倍政権批判のオンパレードで、護憲を隠れ蓑にした左翼イデオロギー運動と断じてよい。
もとより意見広告を載せるのは朝日の勝手だが、自治体が後援するのは行政の中立性を著しく損なう。少なからず自治体はこれまで「憲法集会」というので後援してきたが、そっちのほうが問題だ。
ところが驚くべきことに、朝日社説は憲法99条の「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」を持ち出し、「憲法擁護義務を負う公務員が、憲法を守ろうという趣旨の集会の後援を拒否する。なんとも不可解な現象である」と論じている。
◆党派的な違憲運動だ
呆れた論法だ。憲法を歪曲(わいきょく)する不可解な主張というほかない。公務員に憲法擁護義務を課すのは憲法条項を守れという意味であって、政治的な護憲運動を擁護せよというのではない。そもそも憲法は改正規定(96条)を明記しており、憲法改正を論じるのも憲法擁護にほかならない。公務員イコール護憲はそれこそ違憲のそそのかしだ。
国民投票法改正案は公務員の政治活動を容認しているが、朝日的解釈に従えば、公務員はこぞって護憲運動に動員されてしまう。「全体の奉仕者」(憲法15条)であるはずの公務員がいつの間にか党派的利益に奉仕させられる。
つまり朝日は護憲と言いつつ違憲を奨励しているのだ。この論法は振り込め詐欺とどこか似ている。
(増 記代司)





