オバマ米大統領訪韓先での慰安婦発言に対し検証が欲しかった各誌
◆責められる朴大統領
韓国での痛ましい旅客船沈没事故で朴槿恵(パククネ)政権が窮地に陥っており、週刊新潮(5月8・15日号)が「『朴槿恵』大統領が開く破滅の門」の記事を載せている。
いま、もっとも「謝罪の難しさ」を実感しているのは朴大統領だろう。合同慰霊所で遺族の前では行わなかった謝罪を、閣議の席で口にしたのに対して、野党や国民は「国民の前でなぜ直接謝罪できないか」と批判を強めている。しかし、一度行った謝罪を繰り返すことはできない。難しいところだ。
高止まりだった支持率も急落した。「八方塞がりの感が漂う朴大統領」にとり、「救世主」となるのは「北朝鮮」だと同誌は指摘する。北が核実験を行えば、「朴大統領および政府与党に対北強硬政策実施への期待が集まり、彼女にとって追い風となるでしょう」と、「早稲田大学教授の重村智計氏」が語っているが、それほど簡単に政権浮揚ができるとは思われない。
週刊文春(5月8・15日号)では池上彰氏が「日韓『和解』のシナリオ」を特別講義している。大韓民国「建国」の経緯から説き起こし、なぜ韓国が「反日」なのかを分かりやすく説明したものだが、表面をなでる程度で終わっており、物足りなさが残った。
「理不尽な言いがかりにはきちんと反論・主張する一方、相手に対する敬意は払うこと」という当たり前な結論には拍子抜けさえした。これが通用すれば、既に日韓関係は改善されているはずだ。
重要なのは、日韓を離反させようとする力が働いていることであり、その正体を明らかにすることで、それなくして「和解」のシナリオは書けない。
◆違う報道ニュアンス
ところで、オバマ米大統領がアジア4カ国を訪問した。国賓訪問となった日本では、環太平洋連携協定(TPP)が合意に至らなかったものの、「尖閣諸島も日米安保条約第五条の適用対象だ」と大統領自身が明言し、日本政府はこれを大きな“成果”とした。
それなりに話題を提供したオバマ訪日、そして韓国訪問だったのだが、何故か週刊誌はほとんど取り上げていない。週刊新潮(同)が連載コラムで触れたのみだ。成果からすれば、敢て取り上げないことがオバマ歴訪への評価なのだろうが、一点、見落としていることがある。それは韓国で「慰安婦」に言及したことだ。
時事通信は、「オバマ氏は(朴槿恵大統領との)会談後の共同記者会見で、旧日本軍の従軍慰安婦問題について『歴史を振り返るなら、実に甚だしい人権侵害と考えなければならない』と明言した」と報じた。国内各紙も同じように報じている。
だが、オバマ大統領の発言を子細に見てみると、どうもニュアンスが違うようだ。ネットメディアのBLOGOSで「うさみのりや」氏が訳文を載せている。
それによると、オバマ氏は会見で、「日本の政治家の歴史認識に関してあなたの意見を聞きたい」と質問され、次のように答えている。
「たとえば韓国の慰安婦に何が起きたかに関する歴史を振り返る者はみな、これがおぞましい、言語道断の人権侵害であったと認識せざるを得ないだろう」と。
つまり「歴史を振り返る者」が「人権侵害だった」と「認識せざるを得ないだろう」ということをオバマ氏は言っており、決して自身がことさらに「おぞましい」と言ったわけではない、ということだ。
もっとも、主語が「any of us」(だれであれ)となっており、それにはオバマ氏も含まれる、ということはできる。韓国にも日本にも配慮した「立ち位置」をとっているわけだ。
◆歴史の記録は正確に
当然のことながら、戦争中、軍隊の周辺で本意でなく体を提供していた女性たちの境遇は悲惨なものだっただろう。彼女たちの姿、実態は正確に歴史に記録されるべきである。実態から懸け離れた虚偽(「慰安婦20万人」等)の数字は検証されるべきだし、彼女らが「ある程度の自由があり、高給を取る高級娼婦」だったという米軍の公式記録も無視されてはならない。
さらに女性の歴史ということを考えれば、太平洋戦争に限定されるべきではなく、それ以前、それ以後の戦争で犠牲になった女性たちにも目を向けなければならない。
オバマ大統領の発言が25日だったことを考えれば、締め切りには十分に間に合ったはずで、週刊誌は取り上げるべきだった。
(岩崎 哲)