米大統領の「尖閣に安保適用」明言にもピントを外して社説書く朝日

◆印象付けた同盟強化

 「米大統領『尖閣に安保適用』」。オバマ大統領の単独書面インタビューが読売23日付1面トップを飾った。スクープと言ってよい。中国が挑発行動を続ける尖閣諸島に対して、歴代大統領として初めて日米安保条約第5条(米国の対日防衛義務)の適用範囲にあると言明したからだ。

 この日にオバマ大統領は訪日した。尖閣をめぐる発言が注目されていただけに他紙は出し抜かれた格好だ。インタビューを申し込んだのは読売だけなのか、それとも米国側が日本で最大部数を誇る読売を選定したのか。いずれにしても他紙の臆測記事を一挙に吹き飛ばした。

 オバマ大統領は読売の記事どおり日米首脳会談後の共同記者会見で「SENKAKU」を2回繰り返し、安保の適用範囲と自らの口で表明した。読売25日付「スキャナー」はオバマ大統領が中国の進出抑止への「弱腰批判」の払拭(ふっしょく)を狙ったと報じている。

 ここがオバマ訪日の安保面での最大の焦点だった。産経25日付主張は、日米同盟強化を最も強く印象付けたのはオバマ大統領の尖閣発言で、「その発言の意味は重い」と評価した。こう捉えるのが常識的だ。

 これに中国は猛反発し、外務省報道局長は「断固反対」を表明している(25日付各紙)。もとより日本の新聞で「断固反対」を叫んだ新聞はないが、ピント外れなことを平然と言ってのけた新聞があった。朝日25日付社説だ。

◆共同声明の焦点外し

 「アジアの礎へ一歩を」と題する朝日社説は、オバマ発言を「首相は、大統領から、ほぼ望みどおりの『お墨付き』をもらったのだろう」と、尖閣防衛をまるで他人事のように書き、「オバマ大統領の発言の主眼は、日本側の期待とは少しずれていた」とし、大統領が強調したのは問題の平和解決、日中間の信頼醸成措置をとることだとしている。

 どうも解せない解釈だ。確かにそんな発言もあるが、それが果たして「主眼」だろうか。首脳会談の翌日に発表がずれ込んだ日米共同声明について、朝日25日付夕刊が「尖閣に安保適用を明記」と報じるように主眼はあくまでも尖閣防衛だったはずだ。

 共同声明は「尖閣諸島に対するいかなる一方的な行動にも反対する」と、軍事だけでなく漁民上陸まで想定した「いかなる一方的な行動」にも言及している。朝日27日付「集団的自衛権 読み解く」はここに注目している。誰が考えても焦点は尖閣だ。

 それだけに社説のピント外れは、少しずれていたどころか、目を覆うばかりと言うほかあるまい。社説は論説室で論議した上で掲載しているとしているから、ピント外れは単なる外れでなく、意図的な「ピント外し」なのだろう。

 こうした手法で朝日はしばしば世論を捻(ね)じ曲げてきた。集団的自衛権行使問題の世論調査がそうだ。朝日22日付の世論調査結果によれば、行使容認に56%が「反対」、今国会での解釈変更に68%が「不要」と報じている。

◆恣意的な質問の仕方

 だが、質問文は(本欄で何度か紹介したが)恣意(しい)的である。集団的自衛権を「(同盟国と)一緒に戦う権利」と、「戦う」といった「ステレオタイプ」(特定の価値やニュアンスが含まれる用語)でイエスかノーを迫っている。それに限定的容認について一切触れない。これでは実際の論議から懸け離れている。

 これに対して読売15日付の世論調査は、行使について「全面的に使えるようにすべきだ」「必要最小限の範囲で使えるようにすべきだ」「使えるようにする必要はない」と、現実の論議を踏まえて質問している。結果は「必要最小限」が最も多く59%、「必要ない」は27%、「全面使用」は9%だった。限定容認を加えれば、容認派は実に68%に達する。

 毎日21日付の世論調査も同様に「限定容認」についても問い、結果は限定容認44%、全面容認12%、反対38%で、容認派が過半数を占めている。いずれも朝日の反対56%とは正反対だ。

 世論調査はこんなふうに質問の仕方ひとつで結果が変わる。これを先刻承知で、わざわざ「限定容認」の質問を作らず、都合よくピントを外した? 主観的な社説も客観的な世論調査も、そろってピント外しとなると、もはや読む必要性がない。朝日の存在理由って、一体なんなのか?

(増 記代司)