小保方博士を捕まえた新潮、日韓“冷戦”の文春とも内容は今ひとつ
◆大きい吉田会長手記
新型万能細胞「STAP細胞」問題で理化学研究所が1日、最終報告書を発表した。これに対して研究チームリーダーで「責任のすべてを被せられた」小保方晴子氏が「捏造(ねつぞう)ではない。悪意のない単純ミスであり、承服できない」と猛反発。近日中に会見を開くというから、本稿が掲載される7日までに事態は展開を見せているかもしれない。
この問題に“正面から”取り組んでいる週刊新潮(4月10日号)は理研の報告書が出たタイミングで、小保方氏への「直撃の一問一答」を載せている。「全メディアが追う」中で、よく小保方氏を捕まえたと思うが、特段「これは!」という内容がないのが残念だ。
メディアでは依然として小保方氏へのバッシングが続いている。だが、同誌は末尾に「仮に将来、STAP細胞の存在が確認されれば……。“第一発見者”として復権の大逆転もあり得るのだが」と含みを持たせた。これは各誌とも同じで、再現実験が成功し、細胞の存在が証明されれば、評価は大逆転する可能性があるわけで、白黒どちらかに決めての報道は難しいところだ。
同誌は前週号で渡辺喜美みんなの党代表へ「選挙資金提供」したDHCの吉田嘉明会長の「独占手記」を載せた。政界に“激震”が走った。今週はさらに二の矢を放つ。渡辺氏が「釈明(反論?)会見」をした後だけに、吉田会長の“暴露”のインパクトは強い。
選挙資金として使った状況が明らかなのに、「個人的に使った」と言い張るには無理がある。「元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏」は「形式詐欺に問われる可能性がある」といい、金額が大きいため「事件になれば、起訴されるどころか実刑もあり得ます」と同誌に語っている。吉田会長は「詐欺罪での刑事告訴も辞さない覚悟です」というから、渡辺代表も進退窮まったようだ。
「問題の陰に女あり」は事件報道の鉄則の一つ。同誌は渡辺代表のまゆみ夫人も俎上(そじょう)に載せた。党の人事や運営にも口を出す「女帝」だといい、渡辺代表は「尻に敷かれている」状態だという。
まゆみ夫人に党籍があるかどうか分からないが、公党が代表夫人に振り回される状況というのはあってはならないことだ。ただ、今回の吉田会長からの借金に夫人がどれだけ関与していたかは、記事をみる限り明らかでない。
◆韓国政府の内情不明
週刊文春(4月10日号)はオランダ・ハーグで行われた日米韓首脳会談を取り上げた。安倍晋三首相が韓国語で、「朴槿恵(パククネ)大統領にお会いできてうれしいです」と呼びかけ、これを朴大統領が完全無視した様子は全世界に中継された。
安倍首相の韓国語は韓国人にも十分聞き取れるもので、朴大統領が聞こえなかったということはない。だから、この無視には強烈な朴氏の意思が込められているわけだ。
同誌は4㌻にわたる巻頭特集で「日韓オランダ冷戦全内幕」を報じているが、現場の雰囲気や小さなエピソードを集めたものにすぎず、朝食会場で韓国外相がいやいや握手をしたとか、韓国側SPがピリピリしていたとか、現場の雰囲気は伝わるものの、両首脳、特に朴大統領の言動についての分析は物足りなかった。
「韓国政府関係者」は、「習近平主席の反日に巻き込まれれば、中国や北朝鮮を喜ばせるだけだと懸念する人間も韓国政府の中には多いんです」とコメントしている。その懸念が朴氏に伝わらない韓国政府の内情の方をもっと知りたいのだが。
◆「慰安婦」で重要証言
同誌はつづけて、「慰安婦『調査担当』韓国人教授が全面自供!」の記事を載せた。安秉直(アンビョンジク)ソウル大学名誉教授への「5時間」にわたるインタビューである。
予想通り、「慰安婦」への聞き取りはかなりいい加減なものであったことが、調査担当者の口から明らかになった。安教授は「最初に聞き取り調査をした際、日本軍を悪く言う慰安婦は、実は一人としていませんでした。むしろ日本への憧れの気持ちを感じた」と述べた。重要な証言である。だが、これは韓国の記録から消されてしまった。
そして安教授は連日、慰安婦で日本を攻撃する「挺身隊対策協議会」と袂を分かったと述べる。「挺対協」についての報道は過去にもあったが、もう一度しっかりと正体を見極める報道を期待したい。「正しい歴史」を記録することが両国にとってよいことなのだから。
(岩崎 哲)