人生100年時代の資産形成や年金・仕事を特集したエコノミスト

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繰り下げ受給の利点
 未曽有の高齢化社会、人生100年時代が到来する。厚生労働省の発表ではわが国で100歳を超える高齢者は2021年9月時点で8万6510人となり、51年連続で最多を更新している。さらに、国立社会保障・人口問題研究所の試算によれば25年には100歳を超える高齢者は13万3000人、35年には25万6000人、50年には53万2000人に上ると予測。

 総人口は減少していくものの、超高齢者の数は級数的に上昇していくもよう。もちろん、長生きすることは喜ばしいことで実に歓迎すべきことであるが、問題は高齢者にとって喜ばしい環境をいかにつくっていくかが重要になってくる。

 そうした中で週刊エコノミスト(3月1日号)が高齢社会の下での資産形成について特集を組んだ。「損しない!資産形成&年金・仕事」と題する企画には、定年後にもらえる年金や高齢になっても満足な生き方ができる環境づくりのポイントについて紹介する。

 例えば、年金については22年度から実施される年金法改正を説明。受給開始年齢を遅らせる「繰り下げ受給」を選択することで年金の受取額が増えるケースを紹介。同誌に登場するフィナンシャルプランナーの横谷聡氏によれば、繰り下げ受給は「今回の改正により75歳が最大で受取額は84%もの増額となる」と述べる。具体例としては65歳で年金予定額が20万円だとすると、それを75歳まで繰り下げれば36万8000円になるというのである。

 もちろん、横谷氏も「年金とは損得だけで考えるものではなく、ますます伸びる平均余命を考慮して老後の生活が安心して暮らせるか否かで考えることが大事だ」と説く。エコノミストは、人生100年時代を考えれば年金の受給開始年齢の決断は重要な人生の選択になり得るという。その他に生前贈与や確定拠出年金、金融株連動ETF(上場投資信託)などに焦点を当てて資産形成を紹介する。

シニアは意識改革を

 一方、近年は終身雇用制や定年制などが崩れ、働き方が多様化していく中で、新型コロナウイルスによる感染拡大も加わり個人のライフスタイルが変化してきている。以前にこの欄で週刊東洋経済(1月15日号)の特集「ライフシフト超入門」を紹介したが、今回のエコノミストでは資産形成という観点から100年時代を見据えた働き方を考慮すべきだと提唱するが、生活様式を変えるという視点では同じ方向を示している。

 「70歳までの雇用を努力義務とした改正高齢者雇用安定法の施行から1年、企業は雇用制度見直し、シニア社員は意識改革が求められる」(池口武志・定年後研究所所長)とする。人口減少が続く中で今後70歳まで働く人は確実に増えてくる。すでに80歳定年を打ち上げる企業もあるほどだ。

 そうなると「シニア社員も自分で自分のキャリアを切り開いていく姿勢を持つことが重要になる」(同)と指摘した上で、「65歳から転職活動する人は非常に苦労している。もっと早い時期から、自分の能力を可視化、言語化し、自分は何ができるのか端的に表現できる訓練はしておいたほうがいい」と助言する。その中でポイントになるのが常に社会への関心、社会との接点を持つことが鍵になるという。

自己表現する生き方

 東洋経済(同号)では、英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が、「自己認識や『ありうる自己像』について考えること、自分がどうあるべきか想像することが重要だ。また、多様な種類の人々とつながりを持てば、ほかの人々の生き方からヒントを得られる」と語っていたが、池口氏のそれと通じるものがある。

 これまでの“サラリーマン”と呼ばれる人の人生は、教育を受け、就職し、定年して引退という大きなレールの上に乗ってきたが、人生100年時代は年齢に関係なく求められる社会の中で自己を表現していくライフスタイルに向かわざるを得ない。そういう意味ではより実存的な生き方が求められる。

(湯朝 肇)