日本の「性交同意年齢13歳」は人権侵害問題だと厳しく指摘する李美淑氏

動画サイトでもVtuberといったジャンルの人気が高い。


刑法改正にも問題点
 2017年、性犯罪に関する刑法改正が110年ぶりに行われ、強姦(ごうかん)罪から強制性交等罪と名称を変え、親告罪ではなくなるなど総体的に厳罰化された。しかしその中で、性交同意年齢(性的な行為をするか否かを自ら判断できると認められる年齢)が13歳と低い上、被害者が暴行・脅迫があったと証明しなければならない暴行・脅迫要件のハードルはかなり高い。

 立教大学グローバル・リベラルアーツ・プログラム運営センター助教の李美淑氏は、「先進諸国では性的搾取から子どもを守るため性交同意年齢は引き上げられており、13歳との性交は性犯罪となるが、日本ではなぜ維持されているのか」という疑問を呈し、「『性交同意年齢13歳』維持の背景」と題し、週刊金曜日11月5日号で持論を展開している。

 日本と同じく性交同意年齢が13歳だった韓国では昨年、16歳に引き上げられた。米国では16~18歳、カナダ、英国は16歳、フランス、スウェーデンは15歳、ドイツ、イタリアが14歳だ。にもかかわらず、わが国で「13歳」のまま。

 李氏は、若年者の性が軽んじられる背景の一つとして「美少女キャラクターがメディアに溢れている日本の環境」を挙げる。マンガやアニメ、ゲーム、広告などに頻繁に見られる「性的対象化された美少女キャラクター」は度を越し蔓延(まんえん)している。そのキャラは「多くの場合、スリムな体つきだが胸は豊満で幼い顔つきの女の子として描かれる。身体の一部が露出しているか誇張・強調され、胸元やスカートの下が覗き見られるように描かれることが多い」。

美少女キャラ溢れる

 さらに「18年以後ブームになったVtuber(バーチャルYouTuber)でも見られる。ネットでニュースをチェックすると、制服をきた少女が性的対象化された広告動画が表示されるし、地下鉄のつり広告や町の掲示板などでも美少女キャラクターが使用されている」として「性的対象化された美少女キャラクターがメディアに溢れる日本は世界でも特殊」(リード)と指弾する。

 李氏は主要紙の記事を検索。「日本で美少女が注目されたのは1980年代半ばからである」とし、それは「アダルト・ビデオ産業を含め、女性の性的対象化がビジネスとして一層進んだ時期」と符合するという。

 その一例に「美少女はスポーツ界でも求められた」「マメにもマケズ 美少女、プロゴルファーへ特訓」という85年10月18日付朝日新聞の記事を掲げる。それによると「力のほうでは外国勢にやられっぱなしの昨今、せめてビューティフルの方だけでも、と今春、大王製紙が女子プロの卵を募集した。第1条件は『容姿端麗』」と、選ばれた16歳程度の6人の少女たちを「やはりすらりとした美少女だ」と描写していく。

 ほか、エンターテインメント界で13~18歳を対象に第1回「全日本国民的美少女コンテスト」(87年)が開かれ、少女たちは水着やレオタード姿を披露した。またテレビでは「美少女学園」というドラマ・バラエティーが放映され、美少女ブームはアニメ、ゲームへと続き、コンピューター・グラフィックスや音声合成システム技術による登場などを促したとしている。

 「女性を幼くかつ性的な対象として描くことは諸外国で女性や女児に対する人権侵害問題と認定されている。海外ではR指定がつく漫画やアニメが、日本では子どもにも公開されており、幼少期から人権侵害的メディア環境に慣らされてしまっている」と断じ、「人権基準を世界レベルにするためには、メディアにも意識の転換が要請される」と締めくくっている。

元衆院議員に失言も

 立憲民主党の衆院議員だった本多平直氏が、今夏、「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と発言し辞職に追い込まれた。李氏の論文は、若年者の性を軽視する風潮が瀰漫(びまん)しているわが国の現状に対する厳しい批判である。

(片上晴彦)