コロナ禍での財政圧迫を理由に防衛費にケチをつける朝日・東京
◆威嚇に背向ける社説
防衛省は先月31日、2022年度予算の概算要求で、過去最大だった21年度(5兆4898億円)と同水準の5兆4797億円を計上することを公表した。急速に軍拡を進め、南シナ海の人工島要塞(ようさい)化のみならず、台湾への軍事的威嚇を強める中国に対処するため防衛省は、南西諸島の防衛力強化を図る意向だ。
早速、朝日・東京がこれにかみついた。そのかみつき方も相似形を示した。
朝日は3日付社説「防衛概算要求 費用対効果 検証十分か」で、東京は2日付社説「防衛費増額要求 際限なき膨張止めねば」で、新型コロナ対策で財政事情が逼迫(ひっぱく)する中、「防衛費を聖域化するな」との論を展開した。
朝日がずるいのは、一見、誰も反論できない正論を掲げながら、途中ですり替えを行っている点だ。
同社説で「東アジア情勢は厳しさを増しており、着実な防衛力整備の必要性は理解できる。特に中国の国防費の伸びは著しく、その内実の不透明さもあって、周辺国の不安と警戒を高めているのは事実だ」とまともなことを述べながら、結論は「日本一国で対応できるものではないし、力に力で対峙(たいじ)することは、不毛な軍拡競争を招きかねない。中国の台頭に対しては、外交や経済を含めた総合的な戦略と重層的なアプローチで臨むしかない」とミスリードしている点にある。
無論「日本一国で対応できるものではない」というのは間違ってはいない。だが、「軍事的威嚇に背を向ける」ことは国家主権の放棄につながる。朝日社説の結論は、わが国の安全保障の後ろ盾となっている日米安全保障条約が機能するためにも、日本自身が自力で脅威に対応できる態勢をつくり上げることが肝要となる自覚が欠落しているし、あえて見て見ぬふりをしている。
◆日米の隙間狙う中国
それは尖閣諸島の防衛一つとっても明確だ。
米国歴代政権は尖閣にコミットすると表明し続けているが、あくまでも日本の「施政下」にある場合という意味であって、「主権下」とは一言も言っていない。つまり、日本自身が、尖閣が日本の施政下にあることを証明しないといけない。すなわち警察権、軍事権も含めた司法、行政、立法の三権が及んでいることを実力で示さないといけないのだ。
それができなければ、日米安保条約第5条の対象である日本の施政下にないことになるから、米国が軍事介入する条約上の義務はなくなってしまう。
虎視眈々(たんたん)の中国も、そうした安全保障の隙間を突いてくる可能性が高い。
要するに日米同盟を機能させて国を守るためにも、国防力増強は必須条件なのだ。
朝日は「力に力で対峙することは、不毛な軍拡競争を招きかねない」というが、侵略意図を持ち、力で押してくる膨張志向の国家に対して、断固、最前線でこれをブロックする意思と力を持たなければ、圧倒的な戦力の前に膝を屈し、軍門に下るしかなくなるのだ。
ここでは「不毛な軍拡競争」どころか「侵略を防ぐ有効な手だて」そのものなのだ。
さらに朝日は「外交や経済を含めた総合的な戦略と重層的なアプローチで臨むしかない」というが、語るに落ちるとはこのことを言う。
外交は圧倒的な物理的軍事力の前に無力であるし、国家の安全保障は一国の経済より優先されるべきものであるからだ。
◆自衛隊の強化が急務
防衛力整備は、一朝一夕にできるものではない。
防衛白書が指摘する危機認識は、中国、北朝鮮を「安全保障上の強い懸念」「重大かつ差し迫った脅威」とするものだ。
そうした大局的危機に対処できる自衛隊の態勢強化に本格的に着手する時を迎えている。
(池永達夫)










